加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究

文献情報

文献番号
201032017A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究
課題番号
H21-労働・指定-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆宏(関西大学 社会安全学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 元也(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 大西 明宏(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 東郷 史治(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 石松 一真(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 篠原 一光(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 権藤 恭之(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 臼井 伸之介(大阪大学大学院 人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度の結果を踏まえ、高年齢労働者が関与しがちな「転倒」「つまづき」等の災害について重点的に検討する。
研究方法
高年齢労働者の転倒リスク評価のため、最大一歩幅(MSL)、急ぎステッピング動作、基礎体力に関して転倒経験等の関連から検討した。また、心理・認知的特性と転倒、認知的課題中の歩行と転倒、歩行特性と転倒との関係等について、実験および調査を通じて検討した。道路横断行動と横断所要時間の予測に関する実験では、意識と行動のずれ、およびその背後にある心理的特性の変化に着目した。展望的記憶の失敗に関しては、メモの利用によって、課題実行に必要な要因がより補われる構造化したメモを開発し、その効果について検討した。
結果と考察
転倒経験・転倒恐怖の有無からの検討では、転倒リスクを身体機能のみで評価することには限界がある一方で、閉眼片足立ちは転倒リスク評価の指標となり得る可能性があった。うつおよび注意機能と転倒との関係からは、抑うつと注意機能は加齢と関連するとともに、転倒経験・転倒恐怖とも関連が認められた。注意・遂行機能と転倒との関係からは、転倒リスク評価には身体機能に加え、注意・遂行機能の測定・評価を含めることが望ましいことが示唆された。
道路横断行動と所要時間の予測に関しては、若年者と高齢者の間に違いが見られており、日常生活における時間経過に対する注意配分の年齢による違いが結果に影響していると考えられる。
展望的記憶に影響を及ぼす内的・外的要因の検討においては、展望的記憶の失敗に影響する基礎的な認知機能の個人差と、失敗を補償する機能としてのメモの利用の関係から、機械的側面の低下に対して機能する応用的側面の有効性と限界について検証した。
結論
高年齢労働者の転倒リスクを身体機能のみで評価することには限界があるが、閉眼片足立ちはリスク評価の指標となり得る可能がある。抑うつと注意機能(反応時間)は加齢と関連するとともに、転倒経験あるいは転倒恐怖とも関連する。転倒リスク評価には身体機能に加えて、注意・遂行機能の測定・評価を含めることが望ましい。高齢者の場合、周囲への注意配分の不足から、潜在的危険に対する予測に失敗するといった認知・判断のエラーの問題が懸念される。認知的負荷を増大させずに次の動作に関する情報を先行して提示するために構造化したメモを活用することによって、災害リスクの低減につながる可能性が示唆される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201032017B
報告書区分
総合
研究課題名
加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究
課題番号
H21-労働・指定-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆宏(関西大学 社会安全学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 元也(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 大西 明宏(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 東郷 史治(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 石松 一真(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 篠原 一光(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 権藤 恭之(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 臼井 伸之介(大阪大学大学院 人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢に伴う心身機能の変化とその程度や範囲について、生理的・身体的機能特性と認知的・心理的機能特性の両面から調査・実験等を通じて把握し、労働災害リスク低減につながる安全対策の在り方について検討する。
研究方法
災害事例の分析を通じ、高年齢労働者の特徴について検討した。生理的・身体的機能特性に関しては、加齢とバランス機能低下の関係、動的バランス機能に係る耐久力・反応力に注目し、転倒リスク評価法について検討した。心理・認知的機能特性に関しては、歩行行動に関する時間評価の主観的及び客観的評価の違いのほか、展望的記憶(…し忘れ)、反応抑制機能、視覚的注意機能、視聴覚機能とパフォーマンスの関係等の諸課題と、労働災害リスクとの関係について検討を行った。
結果と考察
被災労働者の年齢と休業日数からは、類似災害でも、高年齢になるほど休業日数が増加する傾向があった。転倒経験・転倒恐怖の有無からの検討では、閉眼片足立ちは転倒リスク評価の指標となり得る可能性があった。抑うつと注意機能は加齢と関連するとともに、転倒経験・転倒恐怖とも関連が認められた。転倒リスク評価には、身体機能に加え、注意・遂行機能の測定・評価を含めることが望ましい。道路横断行動と所要時間の予測に関しては、若年者と高齢者の間に違いがあり、時間経過に対する注意配分の年齢による違いが結果に影響していると考えられる。展望的記憶に影響を及ぼす内的・外的要因の検討においては、展望的記憶の失敗に影響する基礎的な認知機能の個人差と、失敗を補償する機能としてのメモの利用の関係から、機械的側面の低下に対して機能する応用的側面の有効性と限界について検証した。
結論
労働者の年齢が上がるほど休業日数は長くなる傾向があり、類似の災害であっても重篤度が高まる傾向がある。高年齢労働者の転倒リスクを身体機能のみで評価することには限界があるが、閉眼片足立ちはリスク評価の指標となり得る可能がある。抑うつと注意機能(反応時間)は加齢と関連するとともに、転倒経験あるいは転倒恐怖とも関連する。転倒リスク評価には身体機能に加えて、注意・遂行機能の測定・評価を含めることが望ましい。高齢者の場合、周囲への注意配分の不足から、潜在的危険に対する予測に失敗するといった認知・判断のエラーの問題が懸念される。次の動作に関する情報を先行して提示するための構造化したメモの活用は、災害リスク低減につながる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201032017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来、「高年齢労働者は災害に遭いやすい」と漠然と認識されることが多かったが、本研究において専門的観点から高年齢労働者を取り囲む具体的リスクについてアプローチすることが可能となった。得られた成果については、順次、学会発表等での公表を図っている。
臨床的観点からの成果
転倒リスクを身体機能のみで評価することには限界がある一方で閉眼片足立ちには転倒リスク評価の指標となり得る可能性が見出されたこと、転倒リスク評価には身体機能に加え、注意・遂行機能の測定・評価を含めることが望ましいことなど、高年齢労働者の災害リスク低減に関して具体的事項を見出すことができた。
ガイドライン等の開発
平成21年度 中央労働災害防止協会「高年齢労働者の身体的特性の変化による災害リスクの低減推進の手法等検討委員会」に参画し、研究成果の社会的還元を図るとともに、セルフチェック手法の検討・開発に貢献した。
その他行政的観点からの成果
中央労働災害防止協会全国産業安全衛生大会(2010年10月7日)健康づくり分科会特別報告「高年齢労働者の災害リスク低減のための労働衛生対策」において、本研究の関連内容について報告を行った。
その他のインパクト
本研究の活動による成果、ならびに関連する委員会活動等における成果については、中央労働災害防止協会発行「安全と健康」誌の「ミドルエイジのためのライフプランニング-労働者の健康確保は社会的課題」2011年1月号pp.80-81、および「ミドルエイジのためのライフプランニング-災害リスク低減のための健康づくり」2011年6月号pp.80-81に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
メモの利用が高齢者の展望的記憶に及ぼす補償効果の検証と効果的なメモの検討, , 応用老年学, 6(1), 2013, pp.50-58
原著論文(英文等)
1件
Changes in Labor Accidents Risk with Aging, Jounal of Disaster Research Vol,6 No.2 Apr.2011
その他論文(和文)
1件
高年齢労働者の転倒災害防止に有効な手段とは
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
第30回バイオメカニズム学術講演会、関西心理学会122回大会 ワーキングメモリの個人差が高齢者の転倒回避動作に及ぼす影響. 日本心理学会「注意と認知」研究会第10回合宿研究会 (名古屋).
学会発表(国際学会等)
4件
The Gerontological Society of America 65th Annual Scientific Meeting、等
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
「取得」計0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
中央労働災害防止協会全国産業安全衛生大会(2010年10月7日)健康づくり分科会特別報告 ‘教員による医療安全の提言シリーズ'No.08 医療安全における認知心理学的アプローチ、等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahiro Nakamura,Motoya Takagi, Shinnosuke Usui
Changes in Labor Accidents Risk with Aging
Jounal of Disaster Research Vol,6 No.2 Apr.2011 , 6 (2) , 253-257  (2011)
原著論文2
山根 裕樹, 権藤 恭之, 蓮花 のぞみ 他
メモの利用が高齢者の展望的記憶に及ぼす補償効果の検証と効果的なメモの検討
応用老年学 , 6 (1) , 50-58  (2013)
原著論文3
大西明宏
高年齢労働者の転倒災害防止に有効な手段とは
産業衛生学雑誌 , 55 (臨時増刊号) , 293-293  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2023-05-25

収支報告書

文献番号
201032017Z