事業場における過重労働による健康障害防止対策を促進させるための研究

文献情報

文献番号
201032006A
報告書区分
総括
研究課題名
事業場における過重労働による健康障害防止対策を促進させるための研究
課題番号
H20-労働・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 隆夫(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 堤 明純(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 川波 祥子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成22年度は、次の事項を目的とした。
1)韓国における過重労働による脳心臓疾患に関する労災補償と労働衛生の政策の調査
2)開業医の過重労働に関する調査結果の分析
3)法令が規定する長時間労働者に対する医師による面接指導等の有効性の調査
4)小規模事業場が利用できるマニュアルの作成
研究方法
1)韓国の産業安全保健法等や韓国産業安全保健院の行政資料を和訳し、対応する日本の制度と比較した。
2)福岡県医師会会員を対象に実施した調査で自由意見を記載していた開業医298人の意見をテキストマイニングの手法を用いて定量化し、ストレス要因の特徴と過重労働対策を整理した。また、職業性ストレス対策を目的とした組織への介入の意義や努力-報酬不均衡モデルの有用性等を考察した。
3)ある自治体の長時間労働者で医師による面接指導を受けた370人の職員を対象に、面接指導の前後における時間外労働時間数や疲労の蓄積度調査の結果を比較した。
4)3年間の研究成果に基づいて小規模事業場においても実践可能な過重労働対策をとりまとめた。
結果と考察
1)韓国では、労災認定に高血圧性脳症、狭心症、心停止が含まれず、過重業務の評価期間は3カ月間であり、医師による面接指導制度はなく、個人の健康リスク評価法が行政指針で示されていた。
2)開業医の過重感の主な要因は、診療報酬等の経済的要因、拘束時間の長さ、診療以外の事務作業であった。精神的負担が身体的負担の2倍以上で、若年で開業年数の少ない医師や無床の診療所で高かった。努力-報酬不均衡状態は長時間労働とよく相関した。
3)面接指導を受けた自治体職員の所定時間外労働は平均126時間で、時間数が多くなるほど疲労蓄積度が高かった。面接指導後に、時間外労働が平均49時間に減少し、疲労蓄積度も改善した。特に、所属長による具体的改善策の呈示や就業上の措置があると改善度が大きかった。
4)長時間労働や過重感が循環器疾患や抑うつ状態を生じる機序を図にまとめた。小規模事業場でも実践可能な過重労働対策として、労働時間短縮の具体的方策、事業場の類型別の相談先、有用なウェブサイトの情報等をとりまとめたマニュアルを作成した。
結論
1)日本の過重労働政策の特徴が明確となった。
2)開業医の過重感の特徴を明らかにした。
3)法令に規定された医師による面接指導の有効性を明らかにした。
4)小規模事業所を含めて過重労働対策を適切に推進するためのマニュアルを作成した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201032006B
報告書区分
総合
研究課題名
事業場における過重労働による健康障害防止対策を促進させるための研究
課題番号
H20-労働・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 隆夫(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 堤 明純(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 寶珠山 務(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 川波 祥子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)企業等の過重労働による健康影響の実態及び予防策の調査
2)労働者の長時間労働と睡眠・生活時間・過重感・疲労の関係の調査
3)過重労働による健康障害に関する文献及び判例の調査
4)法令に基づく過重労働対策の有効性の評価
5)過重労働対策のマニュアルの開発
研究方法
1)小規模事業場1799社における過重労働対策、先進的企業15社の社内制度、大企業1,482社の「本人の申出」の有無と面接指導の実施体制、韓国の過重労働政策を調査した。
2)労働者804人の6カ月間の労働時間と生活時間の追跡、県医師会会員4286人の労働時間と過重感等の調査を実施した。
3)過重労働に関する健康障害の文献と判例を検索した。
4)長時間労働に従事した自治体職員370人の面接指導後の時間外労働と疲労蓄積度を調査した。
5)過重労働による健康障害の機序を整理し予防策をとりまとめた。
結果と考察
1)先進的企業は残業削減による生産性向上や社員の継続雇用を図っていた。大企業の85%は「本人の申出」なしでも面接指導を実施していた。韓国は労働者個人のリスク評価の通達を示していた。
2)長時間労働は生活時間と睡眠時間を短縮させた。睡眠5時間未満は、残業3時間以上、通勤2時間以上、女性、未婚と相関した。開業医の18%が抑うつ状態で50%以上が努力-報酬不均衡状態(ERI)であった。抑うつ状態は、週60時間以上の労働、睡眠5時間未満、過重感、ERIと相関した。過重感は、経済的要因、拘束時間の長さ、事務作業等が主原因で、開業年数の少ない医師等で強かった。
3)過重労働の文献11編、判例38件を体系的に整理して、データベースを開発した。
4)面接指導により時間外労働が126時間から49時間に短縮し疲労蓄積度も改善した。労働時間が長いほど過重感が強く、所属長による改善策の呈示があると改善度が大きかった。
5)長時間労働と過重感が、交感神経の緊張と精神的な疲労を介して、脳・心臓疾患及び抑うつ状態との関係することを示す図を作成した。小規模事業場を支社支店型・請負、資本関係型・構内協力型・地域集積型・系列型・独立型の類型に分けて過重労働対策をまとめたマニュアルを作成した。これらの知見をウェブサイト(過重労働対策ナビ、http://www.oshdb.jp)に掲載した。
結論
長時間労働が、生活時間や睡眠時間の短縮、過重感、疲労、抑うつ状態の発生等と関係し、面接指導が対策として有効であることを明らかにした。文献、判例、事例に基づくデータベースを作成した。過重労働対策をまとめたマニュアルを作成した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201032006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)労働者の睡眠が5時間未満となる独立因子には、「残業3時間以上」「通勤2時間以上」「女性」「未婚」があることを明らかにした。
2)開業医の抑うつ状態は、「週60時間以上の労働」、「睡眠5時間未満」、「過重感」、「努力-報酬不均衡状態(ERI)」と有意に相関することを明らかにした。
3)開業医の過重感は、「経済的要因」、「拘束時間の長さ」、「事務作業の多さ」等が主原因となり、開業年数の少ない医師等で強いことが示された。
臨床的観点からの成果
1)民間企業の労働者804人を6カ月間追跡調査し、労働時間が長くなるほど、まず趣味や会話等の生活時間が短縮し、次に睡眠時間が短縮することを明らかにした。
2)開業医1646人を調査し、18%がCES-Dにより抑うつ状態で、50%以上が努力-報酬不均衡状態(ERI)であることを明らかにした。
3)独自の長時間労働対策を実施する先進的企業は、生産性向上や社員の継続雇用を図っていることを示した。
ガイドライン等の開発
1)長時間労働と過重感が、生活時間や睡眠時間の短縮、交感神経の緊張、精神的な疲労を介して、脳・心臓疾患及び抑うつ状態のリスクになるという関係を示す図を作成した。
2)過重労働の文献及び判例を体系的に整理し、考察を追加したデータベースを開発した
3)小規模事業場を支社支店型・請負、資本関係型・構内協力型・地域集積型・系列型・独立型の類型に分けて、過重労働対策をまとめたマニュアルを作成した。
その他行政的観点からの成果
1)長時間労働に従事した職員370人の調査により、法令が規定する面接指導が、時間外労働の削減と職員の疲労蓄積度の改善に有効であることを明らかにした。
2)大企業の85%は、法令が面接指導の実施条件とする「本人の申出」がなくても独自の社内基準で面接指導を実施していることを明らかにした。
3)韓国の過重労働政策は日本と異なり、高血圧性脳症・狭心症・心停止を労災認定しないこと、過重業務の評価を3カ月間とすること、面接指導制度がないこと、個人の健康リスク評価法を行政指針で示していることを示した。
その他のインパクト
1)研究成果をウェブサイト(過重労働対策ナビ、http://www.oshdb.jp)に掲載した。
2)都道府県産業保健推進センターや民間医療機関のホームページが、本研究を公表しているウェブサイトをリンク先として登録した。
3)労働安全衛生広報誌が、本研究の個別の研究成果を10回にわたる連載で紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakata Y, Wada K, Tsutsumi A, et al.
Effort-Reward Imbalance and depression in Japanese medical residents
Journal of Occupational Health , 50 (6) , 498-504  (2008)
原著論文2
Tsutsumi A, Kawanami S, Horie S.
Effort-reward imbalance and depression among private practice physicians
International Archives of Occupational and Environmental Health ,  (85) , 153-161  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201032006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,065,000円
(2)補助金確定額
12,065,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-06-14
更新日
-