静電気リスクアセスメント手法の確立

文献情報

文献番号
201032003A
報告書区分
総括
研究課題名
静電気リスクアセスメント手法の確立
課題番号
H20-労働・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 敦(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 行恭(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,705,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働安全衛生の行政施策として平成18年4月の改正労働安全衛生法によりリスクアセスメント(RA)の(努力)義務が明示されるようになったが,本研究は,静電気において的確にRAが実施されるための支援技術として,静電気RA手法を確立することを目的としている。
研究方法
(1) 開発手法の試験運用
これまでは,開発中のリスク分析手法を項目ごとに試験運用(たとえば,静電気着火ハザード同定の可燃性雰囲気のハザード同定法の液体タンク充てんへの適用など)を実施して,項目ごとの妥当性を検討してきた。今年度は,本格的な現場試験運用により総合的に開発手法を評価した。この試験運用により,開発手法の妥当性を検討する。
(2) 手法の文書化
静電気RA実施の支援および手法の普及に必須となる文書化されたガイドラインを作成する。
結果と考察
(1) 開発手法の試験運用
現場試験運用は比較的に事故が多い,液体への粉体投入,バルブを開放しての液体のサンプリング,粉体充てん,粉体排出(FIBC),タンク洗浄について実施し,手法の妥当性を調査し,適宜に必要な修正がなされた。現場試験運用では,想定したハザードの抜けもなく,安全側に問題なくリスク分析が実施されることを確認した。
(2) 手法の文書化
国際規格に示されているRAの流れおよび事故事例統計分析で判明した着火過程とその傾向をベースとして,静電気リスク分析手法を構築している。開発手法の妥当性を現場試験運用により検討し,これを文書化した。このガイドラインに沿って静電気RAを的確に実施できることも試験運用により確認された。ガイドラインにはRA実施の支援ツールとなるチェック項目,同定・見積シート,静電気安全の基礎を学習できる機能なども設けている。
結論
本格的な試験運用を積み重ねて総合的に開発手法を評価し,より現実的に活用される手法とすることができた。現場試験運用と同時にガイドラインを作成し,これに沿って実施すれば,的確に静電気着火のRAが実施できることを確認した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201032003B
報告書区分
総合
研究課題名
静電気リスクアセスメント手法の確立
課題番号
H20-労働・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 敦(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 行恭(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年4月の改正労働安全衛生法の施行により努力義務が明示されるようになったリスクアセスメント(RA)が静電気において的確に実施されるための支援技術として,静電気RA手法を確立することを目的とする。
研究方法
静電気RAの現状調査(アンケート調査,事故統計分析,現場実態調査および海外調査)により,その実態を把握して,確立しようするRA手法を検討する材料とする。この調査結果を踏まえて,国際規格で示されるRAの流れをベースとする科学的・系統的・網羅的静電気着RA手法を検討・開発する。開発手法の妥当性は現場試験運用により検討する。
結果と考察
現状では,静電気RAを実施している事業場は多くなく,実施しているところでも,管理者のレベルに依存しており,RAといえるような状況にないことから,開発手法を文書化したガイドラインでは静電気安全の基礎を学習できる機能を含めた。RAが本格的に実施されるためには,海外のように将来的に法的義務が不可欠であり,そのためには,支援となる基盤技術の充実が必要である。
 国際規格に示されているRAの流れをベースとして静電気リスク分析手法を構築した。静電気着火ハザードは,事故統計分析により得られた静電気着火のフローに沿って,可燃性雰囲気形成,帯電,静電誘導,静電気放電ハザードを順に検討する方法を用いている。このハザード同定法では科学的・系統的・網羅的に静電気着火ハザードを抽出できるようにチェック項目を選定している。このハザード同定の段階で静電気着火リスク見積に必要なハザードレベルを導出して,危害のひどさを加味し総合的に静電気着火リスクを見積もれるようにしている。さらに,対応する静電気対策を示した。開発手法の妥当性は,現場試験運用を積み重ねることによって検討している。ガイドライン「静電気リスクアセスメント」として開発手法の文書化が完成している。
結論
静電気RAの現状の実態をアンケート調査,現場調査および海外調査により把握し,さらに,50年にわたる事故を分析し,過去の事故傾向を調査し,事故にみる静電気ハザードの傾向も把握し,これらをもとに,国際規格のISO/IEC Guide 51の流れに沿った科学的・系統的・網羅的なRA実施の支援となる静電気RA手法を,試験運用を積み重ねることによって開発した。今後は,さらなる運用による手法のポリッシュアップおよびセミナー等により手法の普及に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201032003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
静電気リスクアセスメント(RA)の現状実態をアンケート調査,現場調査及び海外調査により把握し,さらに,50年にわたる事故を分析し,事故傾向を調査し,静電気ハザードの傾向も把握し,この調査結果を踏まえて,国際規格のISO/IEC Guide 51の流れに沿った科学的・系統的・網羅的なRA実施の支援となる実践的な静電気RA手法を,現場での試験運用を積み重ねることによって開発している。また,諸外国においてもこのような手法が確立されていないため,日本発信の新しい安全技術を創出できたと確信している。
臨床的観点からの成果
該当無し
ガイドライン等の開発
静電気RA実施の支援および普及に必須となる,開発手法を文書化したガイドラインを作成している。このガイドラインに沿ってRAを順に的確に実施すれば,ハザード同定,リスク見積・評価およびリスク低減策ができているようにした。本ガイドラインは,現場での試験運用で妥当性も確認され,300名超の安全管理者に配布した。現在は普及・運用に努めている。
その他行政的観点からの成果
平成18年4月の改正労働安全衛生法の施行により努力義務が明示されるようになったリRA実施の支援となる基盤技術を開発した。2013年から静電気学会静電気RA研究委員会およびワーキンググループ(安全管理者がメンバー)を立ち上げ,本格的な普及・運用を開始した。
その他のインパクト
研究成果の評価は高く,国内学会[1,2]及び国際会議[3]で招待講演。論文,発表スライド,ガイドラインの送付依頼がいまだ多い。講習会講師[4]及びシンポジウム企画・講演2件[5]を手法普及のため実施した。[1] 静電気学会障災害研究会 2009, [2] 静電気学会研究会 2010, 2013 [3] Int.Nat.Conf. Electrostatics 2011, [4] 産業安全技術協会安全技術講習会 2011, 2012, [5] 静電気学会災害防止シンポジウム-静電気RA 2013

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
招待講演3
学会発表(国際学会等)
2件
Invited talk 1
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
講習会講師,シンポジウム企画・講演および委員会・WGでの開発手法の普及・運用

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
A. Ohsawa
Statistical analysis of fires and explosions attributed to static electricity over the last 50 years in Japanese industry (Invited)
Journal of Physics: Conference Series , 301 , 012303-6pp  (2011)
doi:10.1088/1742-6596/301/1/012033
原著論文2
A. Ohsawa
Prevention criteria of electrostatic ignition by a charged cloud in grounded tanks
Journal of Electrostatics , 67 , 280-284  (2009)
doi:10.1016/j.elstat.2008.12.007

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201032003Z