女性医師のキャリア継続に必要な医師の勤務環境とそれをとりまく医療体制・医学教育・医療文化に関する研究

文献情報

文献番号
201031074A
報告書区分
総括
研究課題名
女性医師のキャリア継続に必要な医師の勤務環境とそれをとりまく医療体制・医学教育・医療文化に関する研究
課題番号
H22-医療・若手-054
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大越 香江(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性医師の増加が予想される一方で、卒後10年頃の離職により就業率はM字カーブを描く。さらに女性医師は男性医師よりも早くに病院勤務から診療所勤務へシフトするため、勤務医不足に拍車がかかると思われる。現在女性医師支援として行われている育児支援や復職時の仕事の斡旋や研修は「育児は女性が行うもの」という性別分業に固執し、女性医師が第一線から一度離脱することを前提としている。また単に勤務継続を目標にするだけでは女性医師は補助的役割にとどまってしまう。本研究においては女性医師が主体的・指導的立場で活躍できる環境整備を目的としている。
研究方法
第一に女性医師の実情を明らかにするため、平成20年度に京大病院女性医師を対象とした調査を実施した。さらに平成21年度には京大病院の全医師を対象とした調査を行い、その集計結果からさらに因子分析を進めた。第二に医学教育に着目し、医学教育において男女共同参画に関する理解を深めたり、医師のライフスタイルについて考えたりする機会がないことが問題であるという示唆を得た。特に女性医師のキャリアプランに役立てられるディスカッションの場、学びの場を提供する。第三に医師をとりまく環境として医師患者関係の構築は重要である。すなわち医師と患者の科学コミュニケーションの成立についても調査、考察を試みる。
結果と考察
京大病院医師調査では配偶者なしの群でキャリア意識が高い、配偶者が専業主婦(夫)であるとワーク・ライフ・バランスが悪くなる、患者の要求に圧倒されると医師不適性の度合いが高いなどという興味深い示唆が得られた。女性医師のキャリアに関しては、出産や育児を経験した女性医師のインタビューを撮影しつつある。またランチタイムカンファランス「女性医師のキャリアプランを考える」を京大病院臨床教育・研修センターに提案し、女性医師と医学生や研修医のディスカッションの場を設けた。
さらに医師と患者の科学コミュニケーションのためにメディカルカフェ@町家を実施した。
なお、これらの結果については平成23年1月28日に開催したシンポジウム「医療人のワーク・ライフ・バランスと病院のホスピタリティ」で発表し、本研究用ホームページにおいて公開している(URL: http://www.kumwa.kuhp.kyoto-u.ac.jp/index.html)。
結論
女性医師問題は女性医師の問題のみならず、日本の男女共同参画の遅れ、医師患者関係の悪化、医学教育の不備などが顕在化したものである。女性医師に対する個別のアプローチのみでは不十分で、今後も様々な観点から女性医師の活躍できる環境を目指して研究を継続していく。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201031074Z