医療の質・安全向上を目的としてシナリオをベースとしたフルスケールシミュレーターを用いた教育の有用性と遠隔教育の可能性

文献情報

文献番号
201031036A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質・安全向上を目的としてシナリオをベースとしたフルスケールシミュレーターを用いた教育の有用性と遠隔教育の可能性
課題番号
H22-医療・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
井田 雅祥(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 成元(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 川畑 雅照(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 呼吸器科)
  • 池上 敬一(獨協医科大学越谷病院救命救急センター 救急医療科)
  • 武田 聡(東京慈恵医科大学 救急科・循環器内科)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 石川 雅巳(国家公務員共済組合連合会呉共済病院 麻酔・救急治療科)
  • 松本 みどり(国家公務員共済組合連合会立川病院 麻酔科)
  • 香取 秀幸(国家公務員共済組合連合会横浜栄病院 腎・膠原病科  )
  • 大森 正樹(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 荒井 直美(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の質・安全を確立するためには、人手に頼らないシステムの構築や医療従事者の技術向上とともに、標準化やチーム医療の教育も必須である。こうした背景の中でシミュレーション教育が注目されている。本邦ではシミュレーターは主にタスクトレーニングや1次心肺蘇生術の訓練に利用されている。これらは個人の技術向上には有用だが、システム化されたチーム医療の質と安全を高める役割を果たせていない。本研究ではシミュレーション教育の有効性を評価し、地域医療も視野に入れた医学教育のあり方を提言する。
研究方法
国内外のシミュレーション教育の現状調査を行うとともに、シナリオをベースとしたフルスケールシミュレーターを用いた教育(フルスケールシミュレーター教育と略す)の有用性を検討する。さらに遠隔シミュレーション教育を実現する。
結果と考察
本邦の医療施設には多彩なシミュレーターが購入されたが、患者安全トレーニングプログラムが乏しいため、現場の行動変容に生かし切れていない。欧米ではフルスケールシミュレーター教育が主流となっており、医学部生の授業から専門医のトレーニングまで広く活用されている。
フルスケールシミュレーター教育研修を行い、その効果を検証した。その結果、1次心肺蘇生術のトレーニングのみではシナリオシミュレーションで発生した心肺停止患者への迅速対応が困難であることが明らかとなった。しかし、この研修によって臨床に即した場面でも適切な対応が可能となった。研修後のアンケートでは受講者の満足度が高かった。アウトカム評価には臨床における教育効果の検証が必要である。
この教育法ではシナリオの内容と指導者の技量が重要である。実習後のデブリーフィングの質を高める目的で、指導者を支援するシステムモデルを構築した。一方で、本邦では指導者の数が十分ではないことが明らかになった。
インターネット回線を活用したシミュレーション教育を実行し、遠隔教育が可能であることを実証した。これは受講のみならず、指導者養成にも活用できる。今後は、指導者養成と遠隔教育に適切なシミュレーションプログラムを作成する必要がある。
結論
フルスケールシミュレーター教育の有用性が示唆された。今後、この教育法が医療の質と安全を高めることをさらに検証する。これを全国に適応するための指導者養成と遠隔教育を実現することによって、地域医療の向上にも役立つことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201031036Z