緩和ケアにおける鍼灸治療の有用性、適応の評価とチーム医療のためのシステム化に関する調査研究

文献情報

文献番号
201031026A
報告書区分
総括
研究課題名
緩和ケアにおける鍼灸治療の有用性、適応の評価とチーム医療のためのシステム化に関する調査研究
課題番号
H22-医療・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
篠原 昭二(明治国際医療大学 鍼灸学部 伝統鍼灸学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 糸井啓純(明治国際医療大学・ 外科(本学附属病院) )
  • 神山順(明治国際医療大学・ 外科(本学附属病院) )
  • 和辻直(明治国際医療大学 鍼灸学部 伝統鍼灸学教室 )
  • 斉藤宗則(明治国際医療大学 鍼灸学部 伝統鍼灸学教室 )
  • 関真亮(明治国際医療大学 鍼灸学部 伝統鍼灸学教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
終末期患者に対して2010年7月1日から2011年3月31日までの期間、某病院緩和ケア病棟の患者を対象に微鍼を中心とした日本式の鍼灸治療介入を行い、鍼灸治療の臨床的有用性について調査した。あわせて、がん患者の客観的評価法として、循環動態に注目したCAVIの応用可能性について調査した。
研究方法
緩和ケア病棟において主治医からインフォームドコンセント行い、同意の得られた患者を対象とし、日本式の微鍼を用いて、愁訴部位の末梢の要穴に刺鍼、テイ鍼、バンシン、温灸(e-Q)刺激を患者の状態に応じて適宜行い、種々の評価法を用いて愁訴の変化について観察した。CAVIについては、健常成人を対象としてオ血との関連性について調査した。
結果と考察
22症例(男15名、女7名)にて行った。今回、主治医からの依頼に対して鍼灸治療を介入した結果、著効11名、有効5名、やや有効4名、判定不明2名であった。
 従来行われていたルーチンな服薬に鍼灸治療を併用する事で、癌性疼痛、倦怠感、腸管・蠕動不全等の愁訴に対する患者の満足度を改善することができた。
 特に癌性疼痛には著効が得られており、治療直後に疼痛の消失したケースまたは治療前より明らかに緩和されたケースが多く、即効性が認められた。
 患者の殆どが今回初めて鍼灸を経験したが、一般的イメージから「痛みがとれる」ということは考えていたようである。実際に鍼灸治療を受け、軽微な刺激により疼痛緩和、あるいは愁訴が改善しただけでなく、不安で眠れない日々が続くなど、ストレスから口論になりがちであった場合も緩和あるいは改善がされたことで鍼灸治療を待たれる患者が多く、状態が悪くても鍼灸治療を希望されることが11例中7例(63.6%)に見られた。
結論
従来の西洋医学的な緩和ケア治療に鍼灸治療を介入させることで、麻薬を増量することなくがん性疼痛の鎮痛・緩和を期待することが可能であり、またがん性疼痛以外でも浮腫、しびれ感、倦怠感をはじめ、精神・情緒的安定にも貢献しうる可能性のあることが示唆された。末期担がん患者に対して、無薬物療法で、ほとんど治療上の疼痛を与えることなく行われる日本式の鍼灸治療は、緩和ケア領域における症状の緩和において一定の介入効果が期待されることが示唆された。
 また、一部ではあるが、CAVIは従来の方法だけでは十分ではなく、オ血状態を一定反映するものの、新たなデータ解析を導入する必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201031026Z