病院情報システム導入に掛かる経済効果に関する研究

文献情報

文献番号
201031018A
報告書区分
総括
研究課題名
病院情報システム導入に掛かる経済効果に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部社会医学講座)
  • 北澤 健文(東邦大学 医学部社会医学講座)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今世紀に入り、病院情報システムは世界的に著しく普及してきた。ICT技術の進歩により多くの医療機関で電子カルテが導入され、病院における情報の管理や運営の姿を大きく変えてきた。日本においても、多くの医療施設で病院情報システムが導入されている。しかしこのような病院情報システムの効果についての実証分析は少なく、また効果の経済評価を行った研究はほとんど見られない。
本研究の目的は、電子カルテの導入による各医療施設の効率の改善とその経済効果を明らかにすることにある。
研究方法
本年度は以下の方法で研究をすすめた。①医療施設静態調査および患者調査をリンクし、電子カルテの導入有無別に予後や在院日数を比較するとともに、Cox比例ハザードモデルを用いて電子カルテの効率への影響を分析した。②電子カルテ、オーダリングシステム導入病院1,567施設に対し、2010年12月から2011年1月に郵送法による自記式アンケート調査を実施し、病院システムの導入状況、導入成果などを尋ねた。
結果と考察
①については、両調査のリンクが可能であった6,429病院を分析対象とした。電子カルテ導入済みの病院(導入施設)は932施設(14.5%)、電子カルテが導入されていない病院(非導入施設)は5,497病院(85.5%)であった。胃がんをはじめとする症例数の多い15疾患の手術を受けた患者に関して、電子カルテ導入施設と電子カルテ未導入施設のいずれに入院したかで二群に分類して比較した。Cox比例ハザードモデルを用いた分析では、13の疾患でいずれも電子カルテ導入施設で在院確率が低くかった。
②については、488施設から回答があり有効回答率は31.1%であった。病院情報システムの現況では、41.9%の施設で診療情報が電子化されペーパーレスとなっており、2008年に実施した我々の先行調査結果の31.1%と比較して増加していた。電子カルテの既存システムに対しては、満足(満足・やや満足)しているとの回答が45.3%と2008年の36.8%と比較して満足度が向上していた。
結論
電子カルテ導入の影響を施設レベルで論じた研究は多いが、本研究のように大規模データを用いた実証研究は国内国外ともに少ない。官庁統計を用いた研究においては、電子カルテが平均在院日数を短縮することに有効であることが示されており、今後医療のICT化政策を進める根拠となりうる。
また、アンケート調査においては、同様の調査を時系列的で行うことによって、医療ICT化の深度を見ることができる。今後の行政指針の一助となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201031018Z