歯科疾患等の需要予測および患者等の需要に基づく適正な歯科医師数に関する研究

文献情報

文献番号
201031014A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科疾患等の需要予測および患者等の需要に基づく適正な歯科医師数に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 雄一(国立保健医療科学院 口腔保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 大内 章嗣(新潟大学歯学部・口腔生命福祉学科・福祉学講座)
  • 深井 穫博(深井保健科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班では官庁統計など種々のデータを幅広く活用し、現状を分析し、それを踏まえ歯科医療の需要面について将来予測を行うこと等を目的とした。
研究方法
 研究2年目の本年度は、政府統計など様々なデータ用いて、受診行動と経済要因の関連などの分析し、患者数の将来予測を行った。また定期受診について住民アンケート調査を行った。供給面においても、近年の歯科開業の動向、女性歯科医の労働の実態、歯科医院における不就業時間の実態等々、実態不明な点を中心に分析を行った。
結果と考察
 需要に関する分析では、2035年の推計患者数は現状値より8%減で高齢者層の割合が2倍近く増えることが予測された。治療充足についての現状分析では、う蝕治療の充足度は全体的にみて比較的高いことが確認されたが、障害を持つ高齢者に対する訪問診療の充足状況は低かった。口腔状態および受診行動を含む口腔保健行動と経済要因の関連を分析したところ、経済的に恵まれていない層の受診率は低く、この受診抑制による悪影響が未処置う蝕や補綴治療の放置につながっていることが示唆された。歯科受診は、現在歯数との関連が強いことがわかり、現在歯数15歯前後がピークであることがわかった。また、歯科医院のスタッフ・設備・診療内容は定期受診者のほうが非定期受診者より好印象を持っていた。Expressed Needの定期受診シフトは敏感に反応しやすいと思われる層から既に動きが生じていることを示唆する複数の知見が得られた。そして、これらを全体的に捉えると、Expressed Needの新たなタイプである定期受診や訪問診療は、供給側の姿勢によって決まる部分が大きいことが示唆された。
 一方、供給面では、女性歯科医の就労率が男性より低く、30歳代で低下すること、また歯科医師の年齢構成が大きく変化していることがわかった。歯科衛生士はExpressed Needの増加と強い関連を持ち、歯科衛生士を求人している歯科医院数は1?1.3万と推計された。このほか、歯科医院の約7割が平均約1時間の不就業時間を有すること、また、近年の開業地は都市部が多くなってきていることなどが明らかになった。
結論
 2035年における歯科診療所の推計患者総数は現状値より減少するが人口の減少よりも減少幅は小さく、高齢者層の割合が2倍近く増えることが予測された。
 このほか歯科医療の需要と供給について有用な結果が多数得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201031014B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科疾患等の需要予測および患者等の需要に基づく適正な歯科医師数に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 雄一(国立保健医療科学院 口腔保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 大内 章嗣(新潟大学歯学部・口腔生命福祉学科・福祉学講座)
  • 深井 穫博(深井保健科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では官庁統計など種々のデータを幅広く活用し、現状を分析し、それを踏まえ歯科医療の需要面について将来予測を行うこと等を目的とした。
研究方法
 政府統計など様々なデータ用いて、受診行動と経済要因の関連などの分析し、患者数の将来予測を行った。また定期受診について住民アンケート調査を行った。供給面においても、近年の歯科開業の動向、女性歯科医の労働の実態、歯科医院における不就業時間の実態等々、実態不明な点を中心に分析を行った。
結果と考察
 需要に関する分析では、2035年の推計患者数は現状値より8%減で高齢者層の割合が2倍近く増えることが予測された。治療充足についての現状分析では、う蝕治療の充足度は全体的にみて比較的高いことが確認されたが、障害を持つ高齢者に対する訪問診療の充足状況は低かった。口腔状態および受診行動を含む口腔保健行動と経済要因の関連を分析したところ、経済的に恵まれていない層の受診率は低く、この受診抑制による悪影響が未処置う蝕や補綴治療の放置につながっていることが示唆された。歯科受診は、現在歯数との関連が強いことがわかり、現在歯数15歯前後がピークであることがわかった。また、歯科医院のスタッフ・設備・診療内容は定期受診者のほうが非定期受診者より好印象を持っていた。Expressed Needの定期受診シフトは敏感に反応しやすいと思われる層から既に動きが生じていることを示唆する複数の知見が得られた。そして、これらを全体的に捉えると、Expressed Needの新たなタイプである定期受診や訪問診療は、供給側の姿勢によって決まる部分が大きいことが示唆された。
 一方、供給面では、女性歯科医の就労率が男性より低く、30歳代で低下すること、また歯科医師の年齢構成が大きく変化していることがわかった。歯科衛生士はExpressed Needの増加と強い関連を持ち、歯科衛生士を求人している歯科医院数は1~1.3万と推計された。このほか、歯科医院の約7割が平均約1時間の不就業時間を有すること、また、近年の開業地は都市部が多くなってきていることなどが明らかになった。
結論
 2035年における歯科診療所の推計患者総数は現状値より減少するが人口の減少よりも減少幅は小さく、高齢者層の割合が2倍近く増えることが予測された。
 このほか歯科医療の需要と供給について有用な結果が多数得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201031014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 歯科疾患の過去の推移をみると現在歯数の増加とう蝕の減少が顕著であり、歯科診療所の患者数がこの影響を受けて変化してきたことを確認した。さらに、この推移の定量的関係から2035年の推計患者数は現状より少なくなるものの人口の減少程度よりは少なく、また高齢者層の割合が大きく増えることが予測された。
 供給面では、女性歯科医の就労率、歯科衛生士が診療内容に与える影響とその不足状況、歯科医院における不就業時間などを明らかにした。
臨床的観点からの成果
 歯科医療の需給問題に関する議論が盛んに行われており、地域医療を担う歯科医師からも様々な声が発信されている。本研究班で行った一連の研究成果は、これらの声と整合する面が多く、個々の歯科医療機関の持つ実感を全国的な数値として示し得たものと考えられ、歯科保健医療の将来像を議論するうえでの利用価値の高い基礎資料を得ることができた。また、政府統計やWeb調査を積極的に活用した調査手法は従来にはなかったものなので、今後の参考になると思われる。
ガイドライン等の開発
 なし
その他行政的観点からの成果
 厚労省医政局歯科保健課が平成26~27年度に実施する「歯科医師の資質向上等に関する検討会」における「歯科医師の需給問題に関するワーキンググループ」において、本研究成果を踏まえた検討が行われる見通しである。
その他のインパクト
研究班のウェブサイトを開設し、報告書の全文および用いたデータを公開した(http://www.niph.go.jp/soshiki/koku/oralhealth/juq)。これにより、内容の周知がすすむとともに、歯科医療の需給問題についてデータに基づく議論が進む方向に機能することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
(1) ホームページ作成  (2) 学会(第59回日本口腔衛生学会総会)において自由集会を行った (3) 学会(第60回日本口腔衛生学会総会)において自由集会を行った

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大山篤、柳澤智仁、安藤雄一
歯科関連の厚生労働統計調査間のデータリンケージの留意点
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 9 (2) , 75-80  (2009)
原著論文2
安藤雄一、深井穫博、青山旬
患者調査にみる歯科患者の推移と疾患量との関連
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 9 (2) , 91-98  (2009)
原著論文3
安藤雄一、深井穫博、青山旬
わが国における歯科診療所の受療率と現在歯数の推移の関連 患者調査と歯科疾患実態調査の公表データを用いた分析
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 10 (2) , 85-90  (2010)
原著論文4
恒石美登里、深井穫博、安藤雄一
高齢者・要介護者の歯科医療ニーズ 平成20年統計データ分析結果より
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 10 (2) , 70-77  (2010)
原著論文5
安藤雄一、石田智洋、深井穫博、大山篤
Web調査による定期歯科受診の全国的概況
口腔衛生学会雑誌 , 62 (1) , 41-52  (2012)
原著論文6
小原由紀、古川清香、安藤雄一、木下淳博、他
求人状況からみた歯科診療所における歯科衛生士不足に関する研究 ―日本歯科医師会会員を対象とした全国調査による分析―
口腔衛生学会雑誌 , 62 (2) , 282-288  (2012)
原著論文7
Takiguchi1 T, Aoyama H, Fukai K, Yamamoto T, et al.
Before-after (1998 and 2008) trend analyses on regional clustering of clinical dentist-to-population ratio in all 1,976 municipalities of Japan.
The Niigata Journal of Health and Welfare , 11 (1) , 78-93  (2012)
原著論文8
石田智洋、安藤雄一、深井穫博、大山 篤
Web調査による定期歯科受診の要因 ~受診者と歯科医院の特性~
口腔衛生学会雑誌 , 62 (3) , 365-375  (2012)

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201031014Z