高齢社会の医療提供体制における必要医師数の推計に関する研究

文献情報

文献番号
201031012A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢社会の医療提供体制における必要医師数の推計に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部)
  • 清水 佐知子(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 吉川 徹(財団法人労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会における医療のあり方や医療需要を検討し、単に定量的な医師数を推計するだけでなく、求められる医療の転換に応える医療提供体制の質的転換への方向性も併せて検討した。
研究方法
医師需給の再推計、診療科・地域格差についての現状把握とシミュレーション、女性医師の労働実態把握、国際比較研究を行った。
結果と考察
医療需要について、2030年には、退院が15%増(固定法)、外来は増減なし、死亡が34%増で、その後は減少する。診療科・地域格差については、産科・小児科・外科で増加傾向が見られる。女性医師の平均労働時間では、女性(40.1時間/週)は、男性(51.1/週)の約8割の労働時間であった。子供無しの女性では、男性と差がない。医師必要数の推計に関しては、需要に基づいて推計を行っているのは、米だけであり、他の国は、供給側から推計を行っており、独は、地域毎に各診療科の定員が決まっている。

医師需給の課題はマンパワーにとどまらず医療システム全体と大きく関連していることが明らかとなった。また、国際的には、需要推計モデルは米国だけで、米国モデルも主として市場経済を想定した購買モデルを中心としている。今回研究班としては供給推計モデルでは女性医師、若年医師の活動量を勘案し、さらにキャリアパスを想定するモデルを、一方、需要は超高齢社会に必要な5つのケアに分けて、それぞれについての医師の役割を想定したるモデルを構築した。その基礎データとして、退院・外来・有病・要介護・死亡数の将来推計を行い、5つのケアの必要度の変化を深堀することができた。これらを誰がどのように意思決定するかは政治的なプロセスである。
結論
日本は、世界一の高齢社会であり、これからの社会と医療の在り方のモデルを世界に提示する役割を担っている。今回の研究で医師の必要数を算出する考え方については、一定の整理がついたと思われるが、医師は医療資源のなかでも最も主要な資源であり、超高齢社会における必要な医師とは何かが決まらなければ、医師需給の問題は解決されない。この問題の解決のためには、医療界を含めた医師の養成から配置に至るまでの全体計画の作成が必須である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201031012B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢社会の医療提供体制における必要医師数の推計に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部)
  • 清水 佐知子(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 吉川 徹(財団法人労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療提供体制が質的・量的に大きく変化する中で、必要医師数の把握を行うために、以下の課題を検討した。第一に、高齢化の進展の中での医師需給の再推計、第二に、各診療科の不足感の現状把握、第三に、地域の偏在、地域分布の現状把握、第四に、女性医師の問題やキャリアプランの問題の解決策を検証することである。
研究方法
医師需給の再推計、診療科・地域格差についての現状把握とシミュレーション、女性医師の労働実態把握、国際比較研究を行った。
結果と考察
1.医療需要(退院・外来・有病者・障害者・死亡)は、高齢者数がピークを迎える2030年頃が、退院や外来に関してはピークで、その後は減少する。2.診療科では、産科・小児科・外科で増加傾向にある。3.女性医師の就業率はM字型で、専門医取得の時期に出産・育児を経験する。平均労働時間は、女性は、男性の約8割であった。4.医師必要数について、需要に基づいて推計を行っているのは、米だけである。他の国は、供給の将来推計を行うか、地域毎に各診療科の定員を決めている。

医師需給の課題はマンパワーにとどまらず医療システム全体、特に供給体制や財源と大きく関連していることが今回の研究で明らかとなった。研究班としては供給推計モデルについては女性医師、若年医師の活動量を勘案し、さらにキャリアパスを想定するモデルを、一方、需要は超高齢社会に必要な5つのケアに分けて、それぞれの医師の役割を想定した、需要モデルを構築した。また地域については、地方中小都市での突然の減少がめだち、供給体制と共にシステムの再編が必要であることが判明した。
診療科については、小児科・麻酔科・産科ではむしろ増加しており、不足感と実態とは乖離している。医師需給は世界中の政策課題となっているが、政策決定のための需給モデル等のフォーマットはないようである。
結論
日本は世界一の高齢国として、これからの社会と医療の在り方のモデルを世界に提示する役割を担っている。今回の研究ではこの課題につき、政策議論の出発点となる基本概念や基本的なデータ分析のもとに、医師の必要数を算出する考え方について、一定の整理がついたと思われるが、その方法によって医師の適正数を推計しても、超高齢社会における必要な医療、医師とは何かを明らかにして、医師の養成から配置に至るまでの全体計画を作成し実行しない限り、本当の解決にはならないだろう。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201031012C

収支報告書

文献番号
201031012Z