C型肝炎ウイルスの非構造蛋白5Aを標的とした新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201030047A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスの非構造蛋白5Aを標的とした新規治療法の開発に関する研究
課題番号
H22-肝炎・若手-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
政木 隆博(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HCVの非構造蛋白であるNS5A蛋白はリン酸化蛋白であり、NS5A蛋白のリン酸化はウイルスゲノム複製や感染性ウイルス粒子の形成に重要な役割を担うことが報告されている。しかしながら、酵素としての機能が明確なNS3、NS5B蛋白に比べ、NS5A蛋白を標的とした阻害薬の開発は遅れている。そこで、本研究では、NS5A蛋白を標的とした新規治療法の開発を目的とする。具体的には、(1) NS5A蛋白のリン酸化に着目し、リン酸化に関与する責任プロテインキナーゼの同定と創薬標的としての妥当性の検証、(2) HCVゲノム複製、粒子形成を制御するNS5A蛋白結合ペプチドの開発・取得、並びに、創薬への応用可能性の検証、を行う。
研究方法
 研究目的(1)に関しては、まず、NS5A蛋白と強く相互作用するプロテインキナーゼの探索をAlphaScreen解析により行った。次に、強い相互作用が認められたプロテインキナーゼのうち、NS5A蛋白に対するリン酸化能が高いものを抽出するためにin vitroリン酸化アッセイを行った。最後に、抽出されたプロテインキナーゼがHCVゲノム複製、粒子形成に与える影響を培養細胞を用いて解析した。研究目的(2)に関しては、東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究で既に取得しているNS5A蛋白結合ペプチドをHCVサブゲノミックレプリコン細胞に導入し、HCVゲノム複製に及ぼす影響を解析した。
結果と考察
 (1)に関しては、404種類のプロテインキナーゼを包括する蛋白ライブラリーから、AlphaScreen解析及びin vitroリン酸化アッセイによりNS5A蛋白を効率良くリン酸化する9種類のプロテインキナーゼを同定した。さらに、siRNAを用いたノックダウン実験により、これらの中から感染性HCV産生を制御する2種類の新規プロテインキナーゼ(CK1α、CK1ε)を見出した。CK1αのノックダウンはNS5A蛋白の高リン酸化を著しく抑制しており、CK1αのHCV産生への作用はNS5A蛋白の高リン酸化制御を介している可能性が考えられた。(2)に関しては、11種類のNS5A蛋白結合ペプチドを取得した。サブゲノミックレプリコン細胞を用いた解析から、これらのペプチドのうち9種類においてHCVゲノム複製の有意な抑制効果を認めた。
結論
 本研究は、新たな創薬標的の同定や創薬開発に道を拓く可能性を有する。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030047Z