小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除

文献情報

文献番号
201030046A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除
課題番号
H22-肝炎・若手-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 恵一(地方独立行政法人 宮城県立病院機構 宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅村 和夫(地方独立行政法人 宮城県立病院機構 宮城県立がんセンター(研究所) 発がん制御研究部)
  • 田中 伸幸(地方独立行政法人 宮城県立病院機構 宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)C型肝炎ウイルスのライフサイクルを明らかにすることで、新たな治療ターゲットを模索する
(2)HCVは小胞輸送経路をもって輸送されることが示唆されており、この経路とHCVの結合を阻害することでHCV感染の抑制を図る。
研究方法
1. ヒト肝癌細胞株Huh7における、shRNAを用いたESCRT経路阻害によるHCV動態の解析
2. HCV構造タンパクとESCRT分子との会合の検証
3. ヒト肝細胞に置換された「ヒト化マウス」を用いたESCRT経路とHCV感染の関係解明
結果と考察
ESCRT分子のHCVにおける役割を検討するために、まず、HCVが含まれるとされるエクソゾーム
とHrsの関連性を検討した。Hrsノックアウト樹状細胞においては、エクソゾームの放出量が抑制
されており、ovalbuminによって刺激を行い、そのエクソゾームを回収したところ、OT-Iトランス
ジェニックマウスのT細胞に対する抗原提示能も減少していた。以上のことからHrsはエクソゾー
ム放出に必須の分子であり、エクソゾームを介した抗原提示能にも関わっている可能性が示唆され
た。(BBRC, 2010)
次に、我々はHrsがHCV放出に関係するかどうかを検討した。HrsノックダウンHuh7細胞にHC
V株JFH1を感染させると、上清中に放出されるHCV-RNAは有意に減少した。細胞内HCV-RNA
やコアタンパク発現量には変化がなかったが、細胞内の感染性HCV粒子はHrsノックダウン細胞に
おいて減少していた。以上のことから、HrsはHCVアセンブリに関与している可能性が示唆された。
更に我々は、HCVとエクソゾームの関連性を検討した。HCV感染細胞の上清を精製し、ショ糖
密度勾配遠心にて分画すると、HCVコアタンパクとエクソゾームマーカーであるCD63はほぼ同じ
分画に存在した。共焦点顕微鏡を用いて観察すると、multivesicular bodyとHCVコアタンパクは
部分的に共局在しており、免疫電顕をおこなうと、HCVコアタンパクおよびエンベロープタンパ
クはmultivesicular body内のintraluminal vesicleにも存在していた。
結論
HCVはHrs依存性エクソゾーム経路を利用している可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030046Z