アデノウイルスベクターを利用したC型肝炎治療薬創製基盤技術の開発

文献情報

文献番号
201030044A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノウイルスベクターを利用したC型肝炎治療薬創製基盤技術の開発
課題番号
H22-肝炎・若手-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 文教(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡利 彰浩(大阪大学大学院薬学研究科 生体機能分子化学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス (HCV)は、約9.6kbのプラス鎖RNAをゲノムに持つRNAウイルスである。HCVのキャリアは、全世界で2億人、国内では200万人にものぼり、HCV感染患者は高い割合で慢性肝炎を引き起こし、肝硬変、肝癌へと進展する。現在、HCV に対する主な治療法は、ウイルスの複製を阻害するペグインターフェロン・リバビリン(ヌクレオチドアナログ)の併用療法が用いられているが、遺伝子型1bの高ウイルス量症例では奏効率が50%にとどまっており、C型肝炎克服に向けて新たな作用点をもつC型肝炎治療薬の創製が必要不可欠となっている。そこで本研究では、既存の遺伝子導入ベクターのなかで最も遺伝子導入効率に優れるアデノウイルスベクターを利用して、新規作用点を有する抗HCV薬を開発するとともに、HCV治療薬の評価系構築に向けた基盤技術を開発する。
研究方法
1.HCVの複製に重要であることが近年報告された肝臓特異的microRNAであるmiR-122aを阻害することを目的に、microRNAを阻害可能なタフデコイRNAを発現するアデノウイルス(Ad)ベクターを作製し、miR-122a阻害活性を検討した。
2.HCVの感染阻害を目的に、HCV感染受容体をRNA干渉によりノックダウンすることを試みた。それに先立ち、RNA干渉関連タンパク質であるArgonaute 2(Ago2)やExportin-5をshort-hairpin RNA (shRNA)とともに発現させることで、高効率にRNA干渉を誘導可能なAdベクターを開発し、そのノックダウン効率を検討した。
3.HCVレプリコンゲノムを発現するAdベクターを開発することを目的に、RNA pol I系の最適化を行った。さらにHCVレプリコンゲノムの発現カセットを作製し、Adベクターに搭載して、HCVサブゲノム発現Adベクターの開発を試みた。
結果と考察
1.miR-122aに対するタフデコイRNAを発現させることで、効率よくmiR-122aを抑制することに成功した。
2.shRNAとともにAgo2を過剰発現させることで、高効率に標的遺伝子をノックダウンすることに成功した。
3.発現制御型RNA polI系を利用することにより、HCVレプリコンゲノム発現Adベクターを開発することに成功した。
結論
上記Adベクターは、新たな作用点を有する抗HCV薬創製に向けて、また抗HCV薬評価系の構築に向けて優れた基盤技術になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030044Z