B型肝炎ジェノタイプA型感染の慢性化など本邦における実態とその予防に関する研究

文献情報

文献番号
201030014A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ジェノタイプA型感染の慢性化など本邦における実態とその予防に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 狩野 吉康(JA北海道厚生連札幌厚生病院)
  • 正木 尚彦(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 荒瀬 康司(虎の門病院健康管理センター・画像センター)
  • 今関 文夫(千葉大学大学院医学研究科)
  • 四柳 宏(東京大学医学部)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 梅村 武司(信州大学医学部)
  • 豊田 秀徳(大垣市民病院)
  • 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター)
  • 山本 和秀(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター)
  • 内田 茂治(日本赤十字社血液事業本部 中央血液研究所)
  • 田沼 順子(国立国際医療研究センター病院)
  • 多田 有希(国立感染症研究所)
  • 水落 利明(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
41,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1) B型急性肝炎の現状を把握し、届出率を明らかにすることにより予防対策や届出状況の改善に寄与する。
2) Genotype Aの感染状況および感染ルートを明らかにすることで感染対策を策定する上での有用な情報を収集する。
3) Genotype Aによる慢性化率および慢性化要因を明らかにし、それらの要因を指標とした有効な慢性化阻止法を確立する。
4) Genotype AとHIVとの共感染率および臨床的特徴を明らかにし、予防法と治療法を確立する。
研究方法
1)多施設共同研究による全国のB型急性肝炎(genotypeA)の発生状況解析 
2)DPCデータベースを用いたB型急性肝炎の発生数推定 
3)献血者及びHIV陽性者におけるgenotypeAの感染率調査 
4)前向き研究による慢性化率、核酸アナログの有効性調査
結果と考察
B型急性肝炎の感染症法に基づく届出率は低率であり、毎年10%以下であると判明した。今後は、届出率が低率にとどまっている阻害要因に関して検討し、対策を講じる必要がある。
 年間のB型急性肝炎の発生数としては、入院患者数2,175?2,391人、不顕性感染者数8,409人と推定された。10歳代の献血者においては、genotype Aの占める比率が急増しており、Universal Vaccinationを含めた新たな対策を検討する必要が考えられた。
 Genotype Aにおいてはnon-A genotypeと比較して、肝炎の程度が軽度な症例が多く、HBsAg消失までの時期が長期にわたり、慢性化に関与する可能性が示唆された。特に、HIVとの共感染例でHBsAgの消失までの期間が長期であった。Genotype Aは慢性化率が高いという結果であったが、発症後6カ月から12カ月の期間にHBsAgが消失する症例も多く、これらの症例をどのように定義するかを検討する必要があると考えられた。
結論
B型急性肝炎の届出率は10%以下と低率であり、年間発生数は不顕性感染も含めて、10,000人程度であると推定された。Genotype Aは首都圏だけでなく、地方部でも急速に増加しており、すでに大部分の症例が国内感染であった。B型急性肝炎の慢性化症例ではgenotype Aの割合が高く、肝炎の程度が軽い症例が多かった。HIVとの共感染例においてはgenotype Aの比率が高く、共感染例は慢性化に関与すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030014Z