C型肝炎ウイルスキャリア成立の分子基盤と新規治療薬開発のための基盤的研究

文献情報

文献番号
201030011A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスキャリア成立の分子基盤と新規治療薬開発のための基盤的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部医学科感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(千葉工業大学 附属総合研究センター)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部)
  • 小原 道法(東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 鐘ヶ江 裕美(東京大学 医科学研究所)
  • 澤崎 達也(愛媛大学 無細胞生命科学工学研究センター)
  • 掛谷 秀昭(京都大学 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
135,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVの生活環、病態、持続感染の分子機構を解明することにより治療薬開発のための新たな標的を見出す。阻害剤スクリーニングを行い創薬候補化合物を同定する。得られる知見を基に発症予防などHCVキャリア対策に資する提案を行う。
研究方法
培養細胞系でのHCV実験は主にJFH-1株とHuh7細胞により行った。本研究班で樹立したLi23細胞も併せて使用した。
結果と考察
1)HCVコアに対する細胞内抗体を作出しHCV産生阻害作用を示した。2) 感染性HCVとApoEの会合の意義を明らかにした。3)miR-122導入による顕著なHCV産生亢進を示した。4)高感染能を持つHCV適応変異株を分離した。5)HCV複製に起因する糖代謝異常、グルコース産生亢進を示した。6)コアによる脂質代謝異常誘発の機構を示した。7)NS3/4Aプロテアーゼによって細胞内で切断されHCV複製上昇に働く宿主リン酸化酵素を見出した。8)樹状細胞のTICAM-1 経路が主要な細胞性免疫起動経路であることを見出した。9)Li23由来及びHuh7由来アッセイ系による抗HCV剤解析から、細胞間の感受性の差異を明らかにした。10)治療用遺伝子とshRNAを併せ持つアデノウイルスベクター作製が可能になった。11)HCV感染依存に脂肪酸合成経路が活性化すること、脂肪酸合成酵素阻害剤がウイルス複製を阻害することを見出した。12)既存薬ライブラリー、試薬ライブラリーの約2000化合物を評価し、抗HCV治療薬候補を得た。13) ヒット化合物を基に合成展開し、構造活性相関に関し細胞障害性と抗HCV活性を分離可能であることを示唆する知見を得た。
結論
HCV感染、翻訳、粒子形成過程の制御機構に関する新たな知見を得た。HCV関連の脂質代謝異常、糖代謝異常の分子機構、またウイルスプロテアーゼの宿主蛋白リン酸化酵素活性への介入の解析を通じてC型肝炎の病態を明らかにするための成果を得た。脂肪酸合成、チロシンキナーゼ、蛋白輸送系など宿主側を標的とした候補阻害剤を見出した。HCVコアを標的とした抗HCV戦略を初めて示した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201030011B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎ウイルスキャリア成立の分子基盤と新規治療薬開発のための基盤的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部医学科感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(千葉工業大学 附属総合研究センター)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部)
  • 小原 道法(東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 鐘ヶ江 裕美(東京大学 医科学研究所)
  • 澤崎 達也(愛媛大学 無細胞生命科学工学研究センター)
  • 掛谷 秀昭(京都大学 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVの生活環、病態、持続感染の分子機構を解明することにより治療薬開発のための新たな標的を見出す。阻害剤スクリーニングを行い創薬候補化合物を同定する。得られる知見を基に発症予防などHCVキャリア対策に資する提案を行う。
研究方法
培養細胞系でのHCV実験は主にJFH-1株とHuh7細胞により行った。本研究班で樹立したLi23細胞も併せて使用した。
結果と考察
1)CKBのNS4A結合とHCVゲノム複製制御、2)VAP-C、hB-ind1によるHCVゲノム複製阻害、3)miRNA-122によるHCV翻訳亢進、4)粒子形成におけるNS蛋白の役割、5)HCV-VLDL複合体形成及びHCV-ApoE会合の重要性、6)VimentinによるCore蛋白翻訳後修飾とウイルス産生制御、7)HCVコアに対する細胞内抗体の作出とHCV産生阻害、8)感染性HCV粒子の性状、9)高感染能を持つHCV適応変異株の分離、10)感染過程におけるclaudinの重要性、11)HCV複製に起因する糖代謝関連遺伝子発現変化、糖新生亢進とその分子機構、12)Coreによる脂質代謝異常の誘導機構、13)Coreによる酸化ストレス亢進及び抗酸化系阻害、14)HCVプロテアーゼの宿主側基質蛋白の同定、15)Core-DDX3結合を介したIFN誘導の阻害、16)樹状細胞のTICAM-1 経路を介した細胞性免疫起動機構、17)Li23細胞を用いた新規HCV増殖モデルの確立、18)リバビリンの抗HCV活性の作用機序、19)Li23由来及びHuH7由来アッセイ系による抗HCV剤の感受性の相違、20)治療用遺伝子とshRNAを併せ持つアデノウイルスベクターの作製、21)リポソーム製剤による抗ウイルス活性、22)HCV感染依存的な脂肪酸合成経路の活性化及び脂肪酸合成酵素阻害剤によるHCV複製阻害、23)約4000化合物の評価と抗HCV治療薬候補(チロシンキナーゼ阻害剤、非ステロイド系抗炎症剤、エストロゲン受容体調節物質等)の取得、24)構造活性相関解析に基づいた細胞障害性と抗HCV活性の分離。
結論
今後の展開、課題:HCV生活環、病原性発現、持続感染の機構解析を発展させ新たな創薬標的を提示する。ヒット化合物の高次評価を実施し創薬シーズの同定、特許取得を進め、製薬企業との連携を強化する。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HCV生活環のうち、感染侵入、翻訳、ゲノム複製、粒子形成の分子機構について新たな知見を得、新たな創薬標的を示した。HCV感染に伴う糖及び脂質の代謝異常の分子機構を明らかにした。HCVによる新たなインターフェロン誘導阻害機序を見出した。新たなHCV培養細胞実験系を確立し、阻害剤探索、阻害剤の作用機序研究への有用性を示した。ウイルス因子、宿主因子をそれぞれ標的とする種々の新規HCV阻害剤を見出した。
臨床的観点からの成果
リバビリンの抗HCV作用機序は長らく不明であったが、本研究で解明された。これにより、薬剤の使用方法の改善や関連薬剤の開発が可能となる。取得した創薬シーズの実用化を進めることにより、C型肝炎発症予防対策、新たな治療法の開発へ寄与する。インターフェロン不応のC型肝炎患者での病態を改善させ肝癌発生を減らし、保健、医療、福祉の向上、高齢者医療費の低減に貢献することが期待される。
ガイドライン等の開発
「厚生労働科学研究のあらまし」(平成20年度)に紹介された。
その他行政的観点からの成果
C型肝炎の進行を抑制するため、血糖管理、栄養療法の重要性が提言されているが、本研究(HCV感染による脂質、糖代謝異常誘発の分子基盤解析)によりその科学的根拠を示すことができた。
その他のインパクト
21年度、22年度の両日本ウイルス学会学術集会のシンポジウムでC型肝炎ウイルス研究が取り上げられ、本研究班の主任研究者、分担研究者がシンポジストとして成果発表、討論を行った。21年度の同シンポジウムについてはMedical Tribune誌に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
220件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
174件
学会発表(国際学会等)
122件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計12件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Masaki T, Suzuki R, Suzuki T, et al.
Production of infectious hepatitis C virus by using RNA polymerase I-mediated transcription
Journal of Virology , 84 , 5824-5835  (2010)
原著論文2
Hara H, Aizaki H, Suzuki T, et al.
Involvement of creatine kinase B in hepatitis C virus genome replication through interaction with the viral NS4A protein
Journal of Virology , 83 , 5137-5147  (2009)
原著論文3
Suzuki R, Moriishi K, Suzuki T et al.
Proteasomal turnover of hepatitis C virus core protein is regulated by two distinct mechanisms: ubiquitin-dependent and ubiquitin-independent but PA28gamma-dependent.
Journal of Virology , 83 , 2389-2392  (2009)
原著論文4
Masaki T, Suzuki R, Suzuki T, et al.
Interaction of hepatitis C virus nonstructural protein 5A with core protein is critical for the production of infectious virus production.
Journal of Virology , 82 , 7964-7976  (2008)
原著論文5
Taguwa S, Kambara H, Matsuura Y, et al.
Co-chaperone activity of human butyrate-induced transcript 1 facilitates hepatitis C virus replication through an Hsp90-dependent pathway.
Journal of Virology , 83 , 10427-10436  (2009)
原著論文6
Moriishi K, Shoji I, Matsuura Y. et al.
Involvement of PA28gamma in the propagation of hepatitis C virus.
Hepatology , 252 , 411-420  (2010)
原著論文7
Hishiki T, Shimizu Y, Shimotohno K. et al.
Infectivity of hepatitis C virus is influenced by association with apolipoprotein E isoforms.
Journal of Virology , 84 , 12048-12057  (2010)
原著論文8
Shimizu Y, Hishiki T, Shimotohno K.. et al.
Lipoprotein lipase and hepatic triglyceride lipase reduce the infectivity of hepatitis C virus (HCV) through their catalytic activities on HCV-associated lipoproteins.
Virology , 407 , 152-159  (2010)
原著論文9
Deng L, Adachi T, Hotta H. et al.
Hepatitis C virus infection induces apoptosis through a Bax-triggered, mitochondria-mediated, caspase-3-dependent pathway.
Journal of Virology , 82 , 10375-10385  (2008)
原著論文10
Oshiumi, H., Miyashita M, Seya T, et al.
Essential role of Riplet in RIG-I-dependent antiviral innate immune responses.
Cell Host and Microbe , 16 , 496-509  (2010)
原著論文11
Ebihara, T., Shingai, M. Seya T, et al.
Hepatitis C virus (HCV)-infected apoptotic cells extrinsically modulate dendritic cell function to activate T cells and NK cells.
Hepatology , 48 , 48-56  (2008)
原著論文12
Amako Y, Tsukiyama-Kohara K, Kohara M. et al.
Pathogenesis of hepatitis C virus infection in Tupaia belangeri
Journal of Virology , 84 , 303-311  (2010)
原著論文13
Machida K, Tsukiyama-Kohara K, Kohara M, et al.
Disruption of IFN Signaling and HCV Synergistically Enhance Lymphoproliferation through Type II CD95 and Interleukins.
Gastroenterology , 137 , 285-296  (2009)
原著論文14
Tsutsumi T, Matsuda M, Koike K, et al.
Proteomics analysis of mitochondrial proteins reveals overexpression of a mitochondrial protein chaperone, prohibitin, in cells expressing hepatitis C virus core protein.
Hepatology , 50 , 378-386  (2009)
原著論文15
Kato N, Mori K, Abe K, et al.
Efficient replication systems for hepatitis C virus using a new human hepatoma cell line.
Virus Research , 146 , 41-50  (2009)
原著論文16
Ariumi Y, Kuroki M, Kato N, et al.
The DNA damage sensors Ataxia-Telangiectasia mutated kinase and checkpoint kinase 2 are required for hepatitis C virus RNA replication.
Journal of Virology , 82 , 9639-9646  (2008)
原著論文17
Nitahara-Kasahara Y, Fukasawa M, Shinkai-Ouchi F, et al.
Cellular vimentin content regulates the protein level of Hepatitis C virus core protein and the Hepatitis C virus production in cultured cells.
Virology , 383 , 319-327  (2008)
原著論文18
Murakami Y, Noguchi K, Fukasawa H, et al.
Identification of bisindolylmaleimides and indolocarbazoles as inhibitors of HCV replication by tube-capture-RT-PCR.
Antiviral Research , 83 , 112-117  (2009)
原著論文19
Kondo, S., Takata, Y.,Kanegae, Y, et al.
Activities of various FLP recombinases expressed by adenovirus vectors in mammalian cells,
Journal of Molecular Biology , 390 , 221-230  (2009)
原著論文20
Takai K, Sawasaki T, Endo Y.
Practical cell-free protein synthesis system using purified wheat embryos.
Nature Protocol , 5 , 227-238  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030011Z