HIV侵入の動的超分子機構を標的とするケミカルバイオロジー創薬研究

文献情報

文献番号
201029042A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV侵入の動的超分子機構を標的とするケミカルバイオロジー創薬研究
課題番号
H22-エイズ・若手-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鳴海 哲夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多剤併用療法やAIDSワクチン研究が抱える課題の解決には、HIVの侵入から出芽に至る生命現象をこれまでとは異なる角度から改めて解析し、既存の情報を再構築する必要がある。本研究課題では、HIVの細胞侵入過程である動的超分子機構を標的として、これまでほとんど行われてこなかった有機合成化学に基づいたケミカルバイオロジー研究を行うことで、HIVの細胞侵入時のHIV外被タンパク質と宿主側タンパク質との相互作用様式に関して、有機化学的手法による解析を行い、その知見を基づいた合理的分子設計により新規HIV侵入阻害剤の創製を目指す。
研究方法
平成22年度はHIVの細胞侵入の第一段階であるgp120とCD4の相互作用様式の解析を目的として、gp120の構造変化を誘起するCD4ミミック誘導体の設計・合成を行った。申請者らが独自に見出した低分子CD4ミミックを三つのフラグメント (芳香環部位、オキサミド部位、ピペリジン部位) に分割し、それぞれ化学修飾したCD4ミミック誘導体を合成し、それら化合物の生物活性 (gp120に与える構造変化、細胞毒性および抗HIV活性) を評価した。
結果と考察
芳香環部位の構造活性相関により、多環性複素環を導入した誘導体においては、生物活性が消失または減弱した。これにより、CD4ミミックが相互作用するgp120のPhe 43 cavityは、多環性複素環のように大きな置換基は適していないことが示唆された。また、ピペリジン環部位の構造活性相関により、ピペリジン環の窒素原子が毒性に大きく寄与していることが示唆された。窒素原子のアルファ位に嵩高い疎水性官能基であるシクロヘキサン環を二つ導入した誘導体では、顕著な生物活性を有していたことから、CD4ミミックはPhe 43 cavity近傍と疎水性相互作用することが示唆された。
結論
HIVの細胞侵入の第一段階であるgp120とCD4の相互作用様式の解析を目的として、gp120の構造変化を誘起するCD4ミミック誘導体の設計・合成を行い、低毒性かつ顕著な抗HIV活性を有するHAR-171を見出した。これらの結果は今後のHIV侵入阻害剤の開発研究において、重要な基礎的知見を与えるものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029042Z