HIV-1ゲノム産物の翻訳後修飾とその機能に関する研究

文献情報

文献番号
201029040A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1ゲノム産物の翻訳後修飾とその機能に関する研究
課題番号
H21-エイズ・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高宗 暢暁(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HIV薬に対する薬剤耐性ウイルスの出現は、HIV感染症治療の長期療養が与える最大の課題の一つであり、この主要な原因はHIV-1の易変異原性の形質である。薬剤耐性ウイルス出現を出来るだけ回避しうる新しい作用機序に基づくHIV-1制御法開発は急務である。本研究では、翻訳後修飾という観点でHIVゲノム産物に着目し、HIV-1複製に必須の翻訳後修飾を探索し、その翻訳後修飾に関わる宿主因子を標的とした、薬剤耐性出現を回避しうる新しい治療戦略を開拓することを目的とする。
研究方法
ウイルス性タンパク質の翻訳後修飾の解析方法の主な流れとして、HIV-1由来タンパク質発現細胞及び感染性HIV-1粒子からウイルス性タンパク質を分離し各種方法で翻訳後修飾解析等を行う。同定した翻訳後修飾のHIV-1複製における意義を明らかにするために、翻訳後修飾部位に各種変異を導入したHIV-1発現ベクターを構築し、野生株と変異株間の表現系の比較を行う。また関連する宿主因子に関する解析を行う。
結果と考察
1)Nefには低発現性を示すvariantが存在し、それは少なくともタンパク質のプロテアソームを介した易分解性によることが明らかになった。またその特性はHIV-1感染性増強と関連する可能性が示唆された。
2)HIV-1複製に必須の翻訳後修飾であるミリストイル化を担うNMTの機能を阻害するにあたり、HIV-1に対する特異性向上の観点からHIV-1複製と関連すると考えられるリボゾーム局在型NMTを限定的に標的とすることは重要であると考えられた。
3)ウイルスコアを形成するCAのSer16のリン酸化は、脱殻のステップに重要であることが明らかになった。宿主因子peptidyl prolyl isomerase Pin1はリン酸化Ser16-Pro17 motifを認識し、ウイルスコアの脱殻過程に寄与していることが明らかとなった。
結論
1) タンパク質の易分解性によるNefの低発現性の特徴はウイルス感染性増強作用と関連する可能性がある。
2) リボゾーム局在型NMTはミリストイル化を介してHIV複製と関連する可能性がある。
3) ウイルスコアを形成するCAのSer16リン酸化は脱殻のステップに重要である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029040Z