高感度薬剤耐性HIV検出法を用いた微少集族薬剤耐性HIVの動態とHAART治療効果との相関についての研究

文献情報

文献番号
201029039A
報告書区分
総括
研究課題名
高感度薬剤耐性HIV検出法を用いた微少集族薬剤耐性HIVの動態とHAART治療効果との相関についての研究
課題番号
H21-エイズ・若手-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 亙(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター、感染免疫部、ウイルス学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVは増殖過程で多様性を獲得し、一部は微少集族の薬剤耐性HIVとして血中に存在することが知られている。微少集族薬剤耐性HIVが抗HIV治療に影響することが報告されているが、通常薬剤耐性検査で使用するダイレクトシーケンス法(従来法)では20%以下の比率で存在する微少集族薬剤耐性HIVを検出することは難しい。そこで定量PCRを応用した高感度薬剤耐性検査法(高感度法)を開発し、治療中患者血中の微少集族薬剤耐性変異について解析した。
研究方法
微少集族薬剤耐性変異の経時的な動態を詳細に解析するため、採血ポイントが20点以上、各採血ポイントの間隔がほぼ半年以内、治療途中で薬剤の変更が1回以上、の3条件を満たした3症例を選択した。これらの経時的に採血された検体を高感度法で解析し、微少集族薬剤耐性変異の動態を調べた。
結果と考察
3症例を高感度法で解析した結果、2症例から従来法では検出できなかった微少集族薬剤耐性変異を検出した。2症例ともEFV投与後にK103Nが従来法で速やかに検出されたが、高感度法ではその1年?3年前の検体から微少集族K103Nを検出した。またARTレジメ変更後にT215Iが従来法で検出された1症例について、高感度法で得られた微少集族T215I ampliconの塩基配列と従来法によって経時的に得られたRT領域の塩基配列を系統樹解析によって比較した。その結果T215IはARTレジメ変更前から微少集族薬剤耐性変異として既に患者血中に存在しており、ARTレジメ変更後にMajorな耐性変異になったことを示した。これらの結果から高感度法による薬剤耐性検査によって効果的なARTを選択できる可能性がある事が示された。平成21年度に解析した症例のうち1症例について解析した結果、T215Yと連鎖しない耐性変異の存在を示唆するデータを得た。逆転写酵素阻害剤耐性変異に加え、プロテアーゼ阻害剤(PI)耐性変異L90MとM46Iの検出系の確立を行った。その結果CDCで開発されたL90M検出系は日本の患者検体の微少集族L90Mを検出可能だったが、L46IはCDCで開発された系の感度が不十分だったため、新たにプライマーを設計し系の確立を行った。
結論
高感度法による解析で、治療中の3症例中2症例に微少集族薬剤耐性変異を検出した。NNRTIの耐性変異であるK103NがEFV投与前から患者血中に存在し、ARTに悪影響を及ぼした可能性が示された。高感度法によって得られたT215Y ampliconの解析からT215Yに連鎖しない耐性変異の存在が示唆された。PI耐性変異のL90MとM46Iの系の確立を行った。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029039Z