標準的治療法の確立を目指した急性HIV感染症の病態解析

文献情報

文献番号
201029037A
報告書区分
総括
研究課題名
標準的治療法の確立を目指した急性HIV感染症の病態解析
課題番号
H20-エイズ・若手-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター・エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 総括診療部 感染症内科)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科・臨床研究センター)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 免疫感染症科・遺伝子検査室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症の新規治療法の開発のために、標準的な治療指法が確立されていない急性感染に注目した。
研究方法
急性HIV感染症の実態調査のために、3ブロック拠点病院(大阪・名古屋・九州)と2中核拠点病院(東京・大阪)から急性HIV感染症と診断された症例を収集し、その解析を行った。急性HIV感染症と診断された症例を対象に、血清サイトカイン値の測定を行った。昨年度に改良を行った測定系を用いて、感染早期に抗HIV療法を導入した症例の残存プロウイルス量を測定した。
結果と考察
急性HIV感染症の入院99症例について検討を行い、約1/4が急性期入院中に治療が開始されていた。他のウイルスに対するIgM抗体が1/3の症例で上昇し、B型急性肝炎の合併を5例に認めた。IFN-γ高値持続群と陰性群に分けられ、陰性群においては血清IL-18とCD4数との間に、血清IL-6・sICAM-1・ケモカインと血中ウイルス量の間に相関関係を認めた。残存プロウイルス量に関しては、感染早期に治療を開始した7症例は慢性期に治療を開始した25症例と比較して有意に残存プロウイルス量の低下を認めたが、中央値から推定すると数倍の低下であった。
結論
急性HIV感染症は多彩な症状・病態を呈しており、さらなる解析が必要であった。急性期に関わるサイトカインとして、IFN-γとIL-18、CD4数の関連を明らかとした。感染早期に治療が開始された症例の残存プロウイルス量は低レベルに抑えられていた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029037B
報告書区分
総合
研究課題名
標準的治療法の確立を目指した急性HIV感染症の病態解析
課題番号
H20-エイズ・若手-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター・エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 総括診療部 感染症内科)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科・臨床研究センター)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 免疫感染症科・遺伝子検査室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症の新規治療法の開発のために、標準的な治療指法が確立されていない急性感染に注目した。急性HIV感染症と診断が困難であり、その多くが見逃されていると考えられている。本研究では実態調査による臨床的特徴の解明、血清サイトカインの測定、急性期治療例における残存プロウイルス量の解析の3つの柱で研究を行った。
研究方法
HIV感染症の実態調査のために、3ブロック拠点病院(大阪・名古屋・九州)と2中核拠点病院(東京・大阪)から急性HIV感染症と診断された症例を収集し、その解析を行った。急性HIV感染症と診断された症例を対象に、血清サイトカイン値の測定を行った。感染早期に抗HIV療法を導入した症例の残存プロウイルス量を測定した。以上を3年計画で行った。
結果と考察
急性HIV感染症の入院99症例について検討を行い、約1/4が急性期入院中に治療が開始されていた。他のウイルスに対するIgM抗体が1/3の症例で上昇し、B型急性肝炎の合併を5例に認めた。CD4数が200以上であってもAIDSを発症する症例を認めた。IFN-γ高値持続群と陰性群に分けられ、陰性群においては血清IL-18とCD4数との間に、血清IL-6・sICAM-1・ケモカインと血中ウイルス量の間に相関関係を認めた。残存プロウイルス量に関しては、感染早期に治療を開始した7症例は慢性期に治療を開始した25症例と比較して有意に残存プロウイルス量の低下を認めたが、中央値から推定すると数倍の低下であった。
結論
急性HIV感染症は多彩な症状・病態を呈しており、さらなる解析が必要であった。急性期に関わるサイトカインとして、IFN-γとIL-18、CD4数の関連を明らかとした。感染早期に治療が開始された症例の残存プロウイルス量は低レベルに抑えられていた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
急性HIV感染症は診断が困難であり、多くの症例がたとえ医療機関を受診したとして正しく診断されずに見逃されている。そのため、症例数が確保できず、国内のみならず国外においても十分に臨床研究は行われていない。我々は、急性期に治療を行った症例に注目した。急性期に抗HIV療法を導入した症例においては、末梢血CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量が低レベルに抑えられていることを明らかとし、この成果は国際雑誌に掲載され、highly accessedとしてランクされた。
臨床的観点からの成果
急性HIV感染症の治療指針は確立されておらず、また国内における実態すら調査されていない。本研究班で行った5施設の多施設共同調査は、国内で初の急性感染に関する多施設調査であった。この調査によって、早期に抗HIV療法が導入された症例の特徴が明らかとなり、また、経過観察で無症候性キャリアとなった症例においても比較的短期間で抗HIV療法が導入されていたことを示した。このような調査結果は、経験数の少ない診療施設にとって重要な情報を提供している。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
多施設共同による実態調査によって、急性HIV感染症とB型急性肝炎が同時に出現している症例が存在したこと、そしてHIVとB型肝炎の両者が比較的短期間のうちに感染していると考えられた症例が存在していたことを明らかとした。急性感染は現在感染拡大が起こっていることを意味しており、すなわちHIVとB型肝炎の感染の起源は近いことを示している。このことは、HIVとB型肝炎の感染拡大対策は同時に行うべきであることを提案している。
その他のインパクト
本研究の成果は原著論文として発表するとともに、日本エイズ学会総会・学術集会にて発表を行った。また、国立病院機構や大阪医療センターが行う研修会に加え、エイズ治療拠点病院(他の地域のブロック拠点病院・近畿地区の中核拠点病院など)や無料匿名検査場の研修会においても、急性HIV感染症の講義を行い、本研究の成果についても発表を行った。今後も急性HIV感染症を見逃さないようにする啓発活動を続けていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe D, Ibe S, Uehira T, et al.
Cellular HIV-1 DNA levels in patients receiving antiretroviral therapy strongly correlate with therapy initiation timing but not with therapy duration
BMC infectious diseases , 11 (1) , 146-  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03

収支報告書

文献番号
201029037Z