HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析

文献情報

文献番号
201029036A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析
課題番号
H20-エイズ・若手-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 義則(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染に対する免疫応答および病態の解析が困難である理由の1つとして、小動物を用いたHIV感染実験系が確立されていない点が挙げられる。そこでヒト化マウスを用いたHIV感染実験系の構築を目指し、我々が新たに作製した高度免疫不全マウス(NOD/SCID/Jak3ノックアウトマウス(NOKマウス))を用いて、1.HLAが発現したNOKマウス(NOK/B51Tg)の樹立とヒト化NOK/B51Tgの作製、2.ヒト化NOK/B51Tgを用いたHIV感染モデルマウスの構築とその解析を行った。
研究方法
NOKマウスにHLA-B*51:01遺伝子を組み込んだNOK/B51Tgマウスは、NOKマウスにHLA-B51Tgマウスを掛け合わせて樹立した。ヒト化NOK/B51Tgマウスは、磁気ビーズを用いて臍帯血単核球より臍帯血幹細胞(CD34+細胞)を分離し、NOK/B51Tgマウスの新生仔の肝臓へ移植、その10週間後にヒトT細胞の再構築を確認して作製した。ヒト化マウスで再構築されたヒトCD4+T/CD8+T細胞の割合は、フローサイトメーターを用いて解析した。HIV-1実験株であるNL43株は、ヒト化NOK/B51Tgマウスに腹腔内投与で感染させた。血漿中のHIV-RNAはRT-PCRを用いて検出し、さらにHIV-RNAの塩基配列を解析した。
結果と考察
ヒト化NOK/B51Tgマウスは、ヒトCD34+細胞を移植10週目後からヒトCD4+、CD8+T細胞の再構築が確認できた。HIV-1を感染させたヒト化NOK/B51Tgマウスでは、ヒトCD4+T細胞の割合が感染2週間目以降から非感染郡に比べ徐々に減少した。血漿中のHIV-RNAは、感染14-28日目から検出された。感染42日目の血漿中のHIV-RNAのゲノム全塩基配列の解析では、NOK/B51Tgマウスの7匹中4匹からゲノム塩基配列に遺伝子変異が見つかり、その変異はpol, vpu, env遺伝子領域内で見つかった。以上の結果から、我々が作成したヒト化NOK/B51TgマウスではHIV感染者に見られるようなHIVゲノム塩基配列の遺伝子変異が見つかり、ヒト化NOK/B51Tgマウス内で再構成された細胞傷害性T細胞の免疫圧による逃避変異ウイルスの選択が起きた可能性が考えられる。
結論
本研究で樹立したHLAが発現したヒト化NOKマウスでは、HIV感染に対するヒトT細胞免疫応答の解析とHIVのウイルス動態について小動物を用いた検討が可能となることが期待でき、新規エイズ治療法の開発に大きく貢献することができると考えている。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029036B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析
課題番号
H20-エイズ・若手-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 義則(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト化マウスを用いたHIV感染実験系の構築を目指し、1.我々が新たに作製した高度免疫不全マウス(NOD/SCID/Jak3ノックアウトマウス(NOKマウス))を用いて、HIV感染細胞の排除に重要となるヒトCD8+T細胞の分化・機能の解析、2.HLAが発現したNOKマウス(NOK/B51Tg)の樹立とHLA発現ヒト化NOKマウス(ヒト化NOK/B51Tg)の作製、3.ヒト化NOK/B51Tgを用いたHIV感染モデルマウスの構築とその解析を行った。
研究方法
ヒト化マウスは、臍帯血単核球より分離した臍帯血幹細胞(CD34+細胞)をNOKマウスの新生仔の肝臓へ移植し、10週間後にヒトT細胞の再構築を確認して作製した。NOKマウスにHLA-B*51:01遺伝子を組み込んだNOK/B51Tgマウスは、NOKマウスにHLA-B51Tgマウスを掛け合わせ樹立した。ヒト化マウスで再構築されたヒトCD4+、CD8+T細胞の分化・機能はフローサイトメーターを用いて解析した。HIV-1実験株であるNL43株は、ヒト化NOK/B51Tgマウスに腹腔内投与で感染させた。血漿中のHIV-RNAはRT-PCRを用いて検出し、さらにHIV-RNAの塩基配列を解析した。
結果と考察
1.ヒト化NOKマウスは、ヒトCD34+細胞を移植後10週目からヒトCD4+、CD8+T細胞の再構築が確認できた。そのヒトCD8+T細胞は、細胞傷害活性を示すエフェクター表現型の集団がほとんど含まれず、パーフォリンの発現がヒトPBMC中に含まれるヒトCD8T細胞に比べ低く、さらに抗原特異的な反応が誘導できないことを明らかにした。2.ヒト化NOK/B51Tgマウスは、ヒトCD34+細胞を移植後10週目からヒトCD4+、CD8+T細胞の再構築が確認できた。3.HIV-1を感染させたヒト化NOK/B51Tgマウスでは、血漿中のHIV-RNAが感染14-28日目から検出された。感染42日目の血漿中のHIV-RNAのゲノム全塩基配列の解析では、NOK/B51Tgマウスの7匹中4匹からゲノム塩基配列に遺伝子変異が見つかった。以上の結果から、ヒト化NOKマウスでは誘導できなかった抗原特異的免疫応答が、ヒト化NOK/B51TgマウスではHIV-1に対し誘導できた可能性が考えられる。
結論
本研究で樹立したHLA発現ヒト化NOKマウスは、これまで樹立されたヒト化マウスと比べHIV感染に対するヒトT細胞免疫応答の解析とHIVのウイルス動態について解析が可能となることが期待でき、新規エイズ治療法の開発に大きく貢献することができると考えている。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV感染における免疫応答とウイルス動態の機序を明らかにするための動物モデル構築のため、ヒト化マウスを用いたHIV感染モデルを確立し解析した。本研究で樹立したHLA発現ヒト化マウスを用いたHIV-1感染実験では、HIV感染者で見られるようなHIV-1の遺伝子変異を確認することができた。この結果から、in vivoでのHIV特異的免疫応答の解析やエイズワクチン、免疫細胞治療法などの効果について解析する研究に我々のヒト化マウスが有用であると考えている。
臨床的観点からの成果
HIV感染における免疫応答および病態の解析が困難である理由として、ヒト検体を用いる際の倫理的問題や採取される試料に限りがあること、HIV感染症を解析するための動物を用いたHIV感染実験系が確立されていないことが挙げられる。本研究で樹立したHLA発現ヒト化マウスを用いたHIV-1感染実験では、HIV感染者で見られるHIV-1の遺伝子変異を確認することができたことから、ヒトの免疫系を反映するマウスモデルが構築できたと考える。このことは新規エイズ治療法の開発に大きく貢献することができると考えている。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
第39回日本免疫学会総会・学術集会、2009(口頭発表), 10th Kumamoto AIDS Seminar -GCOE Joint International Symposium, 2009(ポスター発表), 11th Kumamoto AIDS Seminar -GCOE Joint International Symposium, 2010(ポスター発表)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato Y, Takata H, Kobayashi N, et al.
Failure of effector function of human CD8+ T cells in NOD/SCID/JAK3-/- immunodeficient mice transplanted with human CD34+ hematopoietic stem cells.
PLoS ONE , 5 , 13109-  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029036Z