HIVの構造、増殖、変異に関する研究

文献情報

文献番号
201029027A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの構造、増殖、変異に関する研究
課題番号
H22-エイズ・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梁 明秀(横浜市立大学 医学部微生物学)
  • 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 塩田 達雄(大阪大学微生物病研究所 感染機構研究部門)
  • 増田 貴夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 間 陽子(理化学研究所 分子ウイルス学特別研究ユニット)
  • 岡本 尚(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 岩谷 靖雅(国立病院機構名古屋医療センター 感染・免疫研究部)
  • 本村 和嗣(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター )
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
56,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVの構造、増殖、変異の知見は、エイズの基礎から診断・治療、創薬・ワクチン開発、疫学の研究に幅広く不可欠なウイルス学的基盤情報となる。本研究では、ウイルス学の専門家10名が連携し、HIVの構造、増殖、変異に関わる基礎研究を組織的に実施し、HIVの新しいウイルス学研究基盤を構築する。研究成果を専門誌等で広く公表し、国内外のエイズ対策研究の推進に役立てる。
研究方法
実験とコンピュータによるシミュレーション、並びにHIV感染サルモデルと臨床試料の解析手法など、多様な解析アプローチを組み合わせて研究する。これにより、HIVの構造、増殖、変異に関わる原子・分子・細胞・個体レベルの情報を包括的に収集する。HIVの分子構造の解析には、主としてコンピュータによるシミュレーション技術(ホモロジーモデリング法、分子動力学法など)を用いる。特に重要な分子については、X線結晶構造解析、核磁気共鳴法等の実験的手法を用いる。HIVの増殖機構の解析には、主として分子生物学、生化学、細胞生物学の解析技術を用いる。HIVの変異の解析には、主として動物モデルや臨床試料のHIVの包括的遺伝子解析の手法を用いる。
結果と考察
平成22年度は、研究の柱として以下の2本を設定して研究を進めた。
① HIVの構造、増殖、変異に関わるウイルス学的基盤研究の推進:HIV-1の構造蛋白質(エンベロープGp120、カプシド)、酵素(インテグラーゼ、逆転写酵素、プロテアーゼ)、アクセサリー蛋白質(Vpr)、並びに細胞の抗HIV蛋白質(APOBEC3、テザリン)について、ウイルスの増殖と進化を司る領域の立体構造や機能の情報を得た(佐藤、塩田、岩谷、増田、間)。ウイルス複製を抑制するウイルス由来ペプチドや細胞蛋白質を見つけた(村上、岡本、梁)。
② HIVの構造、増殖、変異に関わる新しい解析技術基盤の構築と拡充:新型シーケンサーを用いて血液試料中のHIV準種を包括的に解析する系を作り、MaravirocやT20耐性関連変異を持つHIV-1が治療前に存在しうることを示した(本村)。カニクイザルでSIVと同等に効率良く増殖するHIV-1を得た(足立)。コムギ無細胞タンパク質合成系とアルファスクリーン技術を組み合わせたハイスループットで高感度の検出系を用い、HIV-1 Vpu蛋白質のリン酸化と抗HIV作用に関与する宿主プロテインキナーゼSCYL2を同定した(梁)。
結論
初年度計画の約80-90%を達成した。主要な研究成果は、適宜、ウイルス学、薬剤治療、疫学、酵素学などの専門誌に公表し、国内外のエイズ対策研究の推進に役立てた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029027Z