個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究

文献情報

文献番号
201029024A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榎本 てる子(関西学院大学 神学部)
  • 野坂 祐子(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
  • 青山 薫(神戸大学 国際文化学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,276,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
4つの課題別目的は以下の通りである。1.SWとの協働による予防介入プログラムの開発に向けて、当該層への現実的な予防介入にとって何が必要か仮説を立てること、2.国内におけるTGSWのHIV/STIsに対する感染脆弱性と予防対策および支援ニーズを把握すること、3.関西圏の外国人(特にSW)のHIV感染予防として、日本に暮らす外国籍住民が医療にアクセスできる環境整備を検討すること、4.虐待等の生活環境や性非行等の問題行動を理由に児童自立支援施設への入所に至った児童の性の健康を支援するツールとプログラムを開発すること。
研究方法
課題1:首都圏および関西圏における外国人SWに対する日本人SW当事者・支援者団体によるアウトリーチ活動および関係者への聞き取り調査。課題2:自記式質問紙調査(N=43)と半構造化面接調査(N=37)。課題3:パイロット・プロジェクトの実施と成果の検討。課題4:開発した支援ツールので試行と評価。
結果と考察
課題1:不法性・触法性の高い外国人SWの接近困難性は短期プロジェクトで克服できるものではなく、予防介入の前提として対象者との接触を求め、人間関係の構築をはかると同時に相談機関としての信頼を得る長期的な視野に立ったアウトリーチが不可欠であり、関係者への聞き取り調査による質的データの蓄積が必要である。課題2:多様な当事者像、肛門性交における高いコンドーム使用率に対して、口唇性交においてほとんどコンドームが使用されていない実態、HIV抗体検査に関する保健所の需要の低さとその理由などが示唆された。課題3:10団体が協力し、195人が来場したパイロット・プロジェクトにより、関係組織が継続的に連携していく可能性が示唆された。課題4:施設入所児童の性の健康を促進するには、虐待や性暴力の被害からの回復の支援と包括的な性教育の実施が必要である。
結論
本研究を実施するにあたって経験される様々な困難は、禁止政策や法律によって生み出されているという意味では、国際社会で指摘される状況と一致しているが、個別施策層でありながら、ミクロ・メゾ・マクロすべてのレベルにおける関係者の間で性風俗産業におけるHIV感染への危機感が希薄であるという点が、特に国内における阻害要因として指摘することができる。人権に配慮する点でも、また固有かつ有効な取り組みという意味でも、当事者コミュニティを中心とする異職種間・学際的協働によるタスクフォースによる取り組みの重要性が再認識された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029024Z