HIV感染病態に関わる宿主因子および免疫応答の解明

文献情報

文献番号
201029016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染病態に関わる宿主因子および免疫応答の解明
課題番号
H21-エイズ・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
横田 恭子(国立感染症研究所 免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 勇悦(琉球大学大学院医学研究科)
  • 宮澤 正顯(近畿大学医学部)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 有吉 紅也(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 石坂 幸人(国立国際医療センター研究所 難治性疾患研究部)
  • 徳永 研三(国立感染症研究所 免疫部)
  • 立川 愛(東京大学医科学研究所)
  • 小柳 義夫(京都大学ウイルス研究所)
  • 上野 貴将(熊本大学エイズ学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
39,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス制御に関わる宿主因子の作用機構およびHIV感染後の病態形成に重要な役割を果たす多様な抗HIV免疫応答を解明し、これらを利用したウイルス増殖制御と感染拡大・潜伏化の阻止をめざす。
研究方法
VpuとTetherinの相互作用を画像解析し、サブタイプC VifのAPOBEC3結合能とG→A変異、ヒト化マウスに感染したVif+HIVのG→A変異、人工的DNA損傷後のHIV-1挿入部位の配列とVpr結合タンパクを解析した。Rac2発現下流のエフェクター機能をsiRNAで抑制した。蛍光の異なるR5型とX4型HIV-1同時感染時のin vitroやヒト化マウスでの感染進行と感染細胞分布、血中ウイルス高値慢性 HIV感染者の活性化PBMCのサイトカイン産生や遺伝子発現はFACSや定量PCRで解析した。活性化PBMCの OX40/OX40L補助刺激によるHIV-1殖抑制効果を解析した。北タイHIV感染者コホートにおいてHLAとgag/pol遺伝子配列およびCTL活性と臨床経過について統計解析した。HIV感染者CTLクローンを樹立してそのT細胞レセプター遺伝子を再構築した。
結果と考察
宿主因子: VpuとTetherinの細胞膜での会合、サブタイプC Vifの高い抗APOBEC3活性と感染PBMCでの低いG→A 変異が示され、実験動物モデルにおいてもVifの存在下にAPOBEC3がHIV-1複製を制御することが示された。人工的DSB誘導後のIntegrase非依存的ゲノム挿入機構、Vpr機能と結合する新規細胞タンパクが同定された。抗HIV免疫応答:慢性HIV-1感染者でbetaケモカインの産生低下が病態進行に関わることや、Rac2高発現がCCR5の発現低下とbetaケモカインの発現増加を誘導してHIV-1感染抵抗性を賦与することが示され、ヒト化マウスを用いたR5型優位増殖機構の解明やOX40系のシグナルを介するbetaケモカインの産生増強は新たな治療法の開発につながる。また、アジア人種特有のHLAやCTLの多様性と病態に関する基本的理解は今後のワクチン開発に有用である。
結論
Vpu、Vif、Vprと相互作用する宿主因子の機能、VifのAPOBEC3活性とそれによる生体内での感染防御効果が明らかとなった。HIV-1感染抵抗性を担うRac2高発現や慢性感染者の抗HIV免疫応答の解析によりCCR5発現やbetaケモカイン産生の免疫病態形成への関与が示唆されており、R5型優位な感染機構のためのヒト化マウスモデルは重要である。アジア人HLA拘束CTLエピトープと病態に関する情報も蓄積された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029016Z