安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立

文献情報

文献番号
201029010A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立
課題番号
H21-エイズ・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学 教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液科)
  • 加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部 )
  • 兼子 智(東京歯科大学 市川病院 )
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学 医学部 )
  • 八幡 哲郎(新潟大学 教育研究院医歯学系)
  • 高桑 好一(新潟大学医歯学総合病院 総合周産期母子医療センター)
  • 宇都宮 龍馬(旭化成クラレメディカル株式会社 アフェレシス事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年HIV感染は漸増しており、HIV陽性男性陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が増加している。これらの夫婦により安全な生殖補助技術を提供することを目的とし、基礎的,臨床的研究を継続している。
研究方法
1) HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する体外受精‐胚移植により出生した児の発育に関する検討を、質問票を郵送し実施した。2)中空糸膜ウイルス除去カラムによる、より効率的な精液中HIV除去方法の開発の検討を行った。3) ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究として、超急速凍結法の確立を試みた。4)HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のため、対象症例を増やすとともにホームページの作成により情報の公開を推進した。
結果と考察
1) HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する体外受精‐胚移植により出生した児の発達に異常は認められないことが確認された。2) 中空糸膜ウイルス除去カラムを使用した検討では、精子回収率は、10回のカラム洗浄までほぼ100%の回収が得られ、以降は低下し20回洗浄では約10%まで低下した。HIV感染男性の精液を用いた除去効率に対する検討では、感染モデル精液の場合と同様に、6回以上の洗浄ではHIV RNAは認められなかった。3) ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究では超急速凍結保存法は、緩速法に比して融解時の蘇生率は高かったが、最終的な保護剤除去の過程で運動性保持が困難であり、総合的には緩速法が有用であると考えられた。4) HIV陽性男性陰性女性夫婦に対する体外受精-胚移植の臨床応用については、これまでに80例が出産に至り、出生児数は95名(複産あり)であった。いずれの女性も児もHIVに感染していない。HIV陽性男性陽性女性夫婦に対しても妻のsuperinfectionを防ぐ目的で、慎重を期しつつ体外受精‐胚移植を開始した。本研究班のホームページを作成し本治療の実施概要、治療成果などを公表し情報公開に努めた。これまでの研究により,妻が安全に妊娠に至り,出産した症例を多数経験している。このことは,女性の二次感染者の減少と共に、HIV感染者のQOLを向上させるだけでなく社会参加による心理的負担の解消と治療費の抑制,社会の労働力増加など多大な利益に繋がるものと判断している。
結論
安全な生殖補助医療を行うため精液からのHIV分離法を確立し、HIV陽性患者夫婦の生殖補助医療を実施することは、社会的、医療経済的に多大な効果をもたらすものであり、今後も推進していく必要があるものと判断される。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029010Z