HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究

文献情報

文献番号
201029007A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
服部 健司(群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 牧男(ネットワーク医療と人権)
  • 長谷川 博史(日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)
  • 佐藤 由美(群馬大学 医学部保健学科)
  • 大北 全俊(大阪大学 文学研究科)
  • 宮城 昌子(群馬大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HIV疫学先行研究の多くは大都市圏をフィールドにしており、その成果がそのまま、ゲイタウンやNGOが存在せずMSMが孤立化・不可視化しやすい地方に適用されうるとは限らない。そこで(大都市圏でなく)地方で、(NGOではなく)拠点病院や保健所を基点とし、(MSM一般ではなく)陽性者の声を直接聴くという、先行研究とは相補的な切り口から、HIV予防情報へのアクセスを向上させるための基礎を探ることが本研究の目的である。
研究方法
 地方在住HIV陽性者のライフストーリー研究を継続した。また全国29の地方拠点病院の協力のもとに陽性者の視点からみた望ましい予防情報の発信形式と内容の検討を行った。これまでの研究成果の蓄積をもとにして介入困難群向けの包括的予防情報資材の開発を行った。この資材に関して、資材の提供側である全国510保健所の担当者と受領側である地方の一般住民に意見調査を実施し、資材の活用可能性を検討した。これらと並行して、HIV感染予防介入の政治哲学・公衆衛生倫理学の研究を行った。
結果と考察
 感染の有無を生き方に変更を迫る程のものとは位置づけないMSMもいた。予防施策の前提として個々人が予防を意味あるものと認識している必要がある。性行動の相手は男性のみだが、当人の生き方に影響を与える人はMSMに限定されていなかった。よって、コミュニティに限定されない施策の必要性が示唆された。地方在住陽性者調査では、抗体検査受検前に、陽性者の生活の実際、治療費などの経済的負担の実際が知りたかったという声が大きかった。大都市圏のNGOとその啓発資材の認知度はいずれも低かった(2%未満)。情報発信のスタイルに関して、MSM群の多数が、男性の写真を表紙にするなどのゲイ向きのデザインは好ましくない(76%)、女性の写真やイラストが載っていてもかまわない(71%)、刺激的な写真やカットは好ましくない(68%)と答えた。これらは先行するMSM対策研究とは正反対の結果であった。これらの結果に基づき、地方でも活用可能な包括的、全方位的な教育資材を開発制作した。この資材を手にした全国地方部の保健師の79%、関東北部の一県の一般住民の68%から肯定的評価を得た。
結論
 地方の、あるいは多様な価値観や生活様式をもつMSMに向けて予防保健情報を届けるためには、逆説的ではあるが、狭くコミュニティに限局せずに、包括的資材を用いて、全方位的な発信を多焦点的に行うことが有用である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029007B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
服部 健司(群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 牧男(ネットワーク医療と人権)
  • 長谷川 博史(日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)
  • 大北 全俊(大阪大学 大学院文学研究科)
  • 佐藤 由美(群馬大学 医学部保健学科 )
  • 宮城 昌子(群馬大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 個別施策層、とりわけ介入困難群と称される人々からの予防情報や検査・相談などの保健サービスへのアクセスを高める介入手法を開発することが目的である。
研究方法
 初年度は、ゲイ向け商業施設経営者、MSM予防啓発・支援団体に対するグループ・インタビューを行い、保健介入対象としてのMSMの細分化を試みた。2年目は、地方在住のHIV陽性者のライフストーリー調査、全国保健所・NGOにおける予防情報発信実態調査を行った。最終年度は、陽性者ライフストーリー調査を継続するとともに、全国地方在住陽性者による予防情報アクセスの実態・意識調査を行い、これらをふまえ、地方での介入困難群向けの予防情報資材の開発、ならびにこの資材が地方の保健師および一般市民にどのように受け止められるかに関する調査を行った。
結果と考察
 前世紀末まで予防保健情報提供の基本戦略は、ユニバーサル・プリコーションの発想の下、全方位的なものだった。しかし疫学上の動向から、この10年は施策上の第一の対象としてMSMに集中的に研究と保健介入が行われてきた。こうしたMSMをいわば囲い込むような大都市圏での直截的な介入手法は、一定の成果をあげつつも、しかし同時に、かえってこれを忌避する介入困難群を生むもととなった。研究班を立ち上げた当初は、介入困難群をその心理的・行動的特性から細分化し、それぞれの群のニーズにあった情報提供をきめこまかに工夫することで問題の解決が図れるとの見方に立っていたが、これには大きな限界があることがわかった。
結論
 地方の、あるいは多様な価値観や生活様式をもつMSMに向けて予防保健情報を届けるためには、逆説的ではあるが、狭くコミュニティに限局せずに、包括的資材を用いて、全方位的な発信を多焦点的に行うことが有用である。この手法を、従来の限定的で集中的な手法に重ね、相補的に組み合わせることが、死角を減らし、個別施策層からの予防情報へのアクセスを改善する上で効果的な方策になりうると思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大都市圏ゲイコミュニティ中心型・大手NGO基点型のMSM囲い込みスタイルの先行研究とは一線を画し、相補的な視点から先行研究の問題点をつく研究成果をあげることができた。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床とは直接的な関連がない。
ガイドライン等の開発
現時点では成果が取り上げられるのを待っている状態である。
その他行政的観点からの成果
現時点では成果が取り上げられるのを待っている状態である。
その他のインパクト
平成22年度厚生労働省科学研究(エイズ対策研究推進事業)研究成果等普及啓発事業を受けて、2011年2月21日に前橋市にて公開セミナー「HIV予防保健情報を地方でどう届けるか」(主催:エイズ予防財団、後援:群馬県、前橋市)、同月24日に新潟市にて公開セミナー「HIV感染予防のための保健情報を地方でどう届けるか-HIV感染予防個別施策層に対する効果的な働きかけ」(主催:エイズ予防財団、関東甲信越ブロック拠点病院、新潟県)を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201029007Z