地域におけるHIV陽性者等支援のための研究

文献情報

文献番号
201029005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるHIV陽性者等支援のための研究
課題番号
H20-エイズ・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
研究分担者(所属機関)
  • 牧原 信也(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 若林 チヒロ(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 大木 幸子(杏林大学 保健学部)
  • 青木 理恵子(特定非営利活動法人チャーム 移住者の健康と権利の実現を支援する会 事務局)
  • 山本 博之(東京福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV陽性者の長期社会参加と自立的な生活のため、(1)HIV陽性者の生活の実態把握、(2)地域の支援の実態把握、(3)支援モデルの提示、(4)地域支援者の準備性の向上のためのプログラム開発を行う。
研究方法
(1)初年度に行ったHIV陽性者対象の調査結果を要約した資材作成。
(2)拠点病院MSW調査:2010年10-12月に、エイズブロック・中核拠点病院63ヵ所に相識機関、MSW個人向けの調査紙を郵送。
保健所保健師調査:2009年10月-翌年2月に、全国の都道府県・政令市保健所、政令指定都市保健センターのエイズ担当者に質問紙(各2部)を郵送。
(3)地域における陽性者支援の実践例のまとめ。
(4)地域支援者を対象に研修DVDを制作し、その効果を検証、及び地域の準備性の概念整理。
研究計画はぷれいす東京倫理委員会及び、一部は研究者の所属機関の倫理委員会の承認を受けた。
結果と考察
(1)「職場とHIV/エイズ」を制作。
(2)拠点病院MSW調査:MSW対象の調査は、受診前相談の実施状況では19.5%(n=28)が支援経験ありと回答(n=143)。過去3年以内の相談依頼の経路は、4.5%が地域開業医、22.7%が地域検査機関スタッフが拠点病院MSWへ相談依頼をしていた(n=44)。受診前相談の結果、75%(n=33)が医療機関受診につながった。
保健所保健師調査:回答者のうち保健師(n=701)の陽性者支援の自己効力感の関連要因について多重ロジスティック回帰分析を行い、その結果、特に医療・セクシュアリティの知識、専門医療機関への連携で影響が大きかった。
(3)ぷれいす東京での地域の陽性者の個別相談、新陽性者のためのグループ・プログラム、関西の陽性者を対象とした電話相談のマニュアルを作成。
(4)研究成果を集約した地域支援者の準備性向上のためのDVDを制作し、その視聴の効果を検証した。また、地域の準備性に関する概念整理をおこない、その成果を冊子にまとめた。
地域の連携により支援に至るものが多かったが、一般医療機関で陽性告知がされている現状を踏まえると、支援への連携をどう強化するかという課題が見られた。また、支援者の自己効力感を高めるために、医療・セクシュアリティへの理解と、専門医療機関との連携の重要性が確認された。
結論
HIV陽性告知直後に支援ニーズが多く発生するが、様々なサービスが地域に存在し、連携することが、陽性告知を受けた本人の専門医療機関への受療行動につながることが示唆された。支援の準備性向上のための研修プログラムや支援ツールをより活用することで、連携のしやすい地域環境整備が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029005B
報告書区分
総合
研究課題名
地域におけるHIV陽性者等支援のための研究
課題番号
H20-エイズ・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
研究分担者(所属機関)
  • 牧原 信也(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 若林 チヒロ(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 大木 幸子(杏林大学 保健学部)
  • 青木 理恵子(特定非営利活動法人チャーム 移住者の健康と権利の実現を支援する会 事務局)
  • 山本 博之(東京福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV陽性者の社会参加と自立的な生活を支えるため調査研究を実施。
1)HIV陽性者の生活の実態把握、2)地域の支援の実態把握、3)支援モデルの提示、4)地域支援者の準備性向上のためのプログラム開発
研究方法
1)HIV陽性者の生活と社会参加に関する研究
全国33エイズ拠点病院外来で自記式調査紙を配布、郵送回収。対象1831名、回収1203票(66.4%)。
2-1)地域の相談機関におけるHIV陽性者の相談対応に関する調査
都内の行政・民間窓口を対象に陽性者相談対応の質問紙調査。対象957カ所、回収494カ所(51.6%)。
2-2)保健所におけるHIV陽性者への相談・支援機能に関する研究
全国727保健所のエイズ担当者に質問紙調査。回答397施設(53.7%)、保健師回収714部。
2-3)エイズブロック・中核拠点病院医療ソーシャルワーカーによるHIV陽性者等支援に関する研究
全国63拠点病院のMSWに質問紙調査。回答43施設(68.2%)、MSW回収143通。
3)HIV陽性者に対する相談・支援機関の機能に関する研究
ぷれいす東京相談員に集団インタビュー、新陽性者グループ・プログラムの効果評価。関西で新設の陽性者向け電話相談関係者の集団インタビュー。
4)地域の支援者のための、HIV陽性者への対応の準備性を高めるための研修プログラム
東京障害者職業センター職員研修を開催、効果を評価。研修DVDを制作し効果評価。
結果と考察
1)非就労は告知時7.9%から調査時21.1%と増加。40.3%が告知後に離転職。表面的な適応、プライバシー不安、病名を隠すストレスが同時に存在と示唆。
2-1)相談機関の3割弱が陽性者相談を経験(障害窓口は9割弱、生活保護は6割強)。7割弱がHIV研修希望。
2-2)陽性者支援の経験者は2割強。支援の自己効力感の関連要因の多重ロジスティック回帰分析の結果、特に医療・セクシュアリティの知識、専門医療機関への連携の関連が大きい。
2-3)医療機関「受診前相談」提供は2割弱が有。約7割のMSWが受診前相談は妥当と回答。また相談の結果、約7割が受診。
3)ぷれいす東京の個別相談を実践例として提示。新陽性者グループ・プログラム、陽性者向け電話相談立ち上げのマニュアル作成。
4)DVD研修の効果評価から、HIV知識、プライバシー配慮、セクシュアリティの身近感や対応が陽性者への対応自信感を高め、支援者の準備性向上に重要と示唆。
結論
個人、組織で地域支援者の準備性向上のためのプログラム及び当班制作DVDを活用した研修導入により、地域のHIV陽性者への対応の準備性が高まると期待される。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV陽性者の生活実態の全国調査を実施し、また、個別事例などを収集した。また同時に、東京都内の相談窓口担当者を対象にした調査、全国の保健所・保健センターを対象とした調査、エイズ治療拠点病院の医療ソーシャルワーカーを対象にした調査を実施し、各地域・機関におけるHIV陽性者支援の実態が明らかになった。とりわけ日本の陽性者の生活実態を明らかにした調査は学術的にも国際的にも価値が高い。これらの研究成果をもとに、支援の準備性を高めるための研修プログラムも開発し、有効性を検証した。
臨床的観点からの成果
エイズ治療拠点病院外来看護師へのインタビュー調査、および医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施した。現場での支援の困難要因の抽出や、医療ソーシャルワーカーによる地域でHIV陽性と告知されたHIV陽性者への支援(受診前相談)の実態把握を行った。また、医療ソーシャルワーカーの支援の実態把握を目的に質問紙調査を実施したが、これは地域におけるHIV検査で陽性と気づいた者の専門治療に至るアクセスを改善するために重要であり、HIV受検行動をより容易にすることが期待される。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
都内の相談窓口担当者対象の調査は、関係行政担当者らと連絡をとり実施した。研究成果の冊子やDVDは、実践的な研修教材として行政機関等で活用されている。保健所でHIV陽性者の継続的支援に携わる職員の陽性者支援に関する自己効力感に影響する要因を明らかにできたが、それらは今後の陽性者支援に対する保健行政の課題や方策を検討する基礎資料として貴重である。地域の支援者のHIV相談対応への準備性を向上させる取り組みは、市民の相談・支援へのアクセスを容易にし、日本のエイズ対策全体の向上に資するものである。
その他のインパクト
公開シンポジウム「HIV検査からHIV診療の間にある支援ニーズとその課題」「HIV陽性者と社会生活」「HIV/エイズとともに生きる人々の仕事・くらし・社会」「HIV陽性者をめぐる地域支援の連続性」、および支援者向けの研修会「地域におけるHIV陽性者等支援のための研修会」(2回)を実施した。また、NHK教育テレビ「ハートをつなごう」(5回)、NHK国際テレビ「Japan7Days」、日本テレビ「news every.」、読売新聞にてHIV陽性者の生活と社会参加に関する調査結果の一部が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
29件
日本エイズ学会22件、日本公衆衛生学会4件、日本職業リハビリテーション学会2件、日本社会福祉学会1件
学会発表(国際学会等)
4件
国際エイズ会議3件、アジア太平洋地域エイズ国際会議1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究推進事業研究成果等普及啓発事業として東京・大阪・名古屋でシンポジウムを計5回実施、冊子10点とDVD教材1点とWebサイトを制作

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
生島嗣
HIV陽性者や周囲の人への支援をめぐって
現代性教育研究月報 , 27 (1) , 6-9  (2009)
原著論文2
大木幸子
HIV陽性者への相談・支援機能の強化のために
保健師ジャーナル , 65 (11) , 917-922  (2009)
原著論文3
生島嗣、若林チヒロ
HIV陽性者の生活と社会参加に関する全国実態調査報告―HIV陽性者1200人の声―
Confronting HIV 2010 ,  (37) , 10-11  (2010)
原著論文4
生島嗣
地域におけるHIV陽性者の支援をより充実するために
家族と健康 ,  (679)  (2010)
原著論文5
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術1
保健師ジャーナル , 66 (1) , 66-71  (2010)
原著論文6
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術2
保健師ジャーナル , 66 (2) , 146-151  (2010)
原著論文7
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術3
保健師ジャーナル , 66 (3) , 266-271  (2010)
原著論文8
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術4
保健師ジャーナル , 66 (4) , 376-380  (2010)
原著論文9
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術5
保健師ジャーナル , 66 (5) , 474-479  (2010)
原著論文10
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術6
保健師ジャーナル , 66 (6) , 570-575  (2010)
原著論文11
大木幸子
コミュニティエンパワメントのための援助技術7
保健師ジャーナル , 66 (7) , 660-664  (2010)
原著論文12
生島嗣
HIV陽性と就労1「免疫機能障害を知っていますか?」
働く広場 ,  (404) , 26-27  (2011)
原著論文13
生島嗣
HIV陽性と就労2「職場とHIVによる免疫機能障害」
働く広場 ,  (405) , 12-13  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03

収支報告書

文献番号
201029005Z