抗HIV薬の適正使用と効果・毒性に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
201029002A
報告書区分
総括
研究課題名
抗HIV薬の適正使用と効果・毒性に関する基礎的研究
課題番号
H20-エイズ・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
潟永 博之((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 亙((独)国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 太田 康男(帝京大学 医学部)
  • 児玉 栄一(東北大学病院 内科・感染症科)
  • 吉村 和久(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 鈴木 康弘(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 横幕 能行((独)国立病院機構名古屋医療センタ― エイズ診療科)
  • 川村 龍吉(山梨大学医学部附属病院 皮膚科)
  • 塚田 訓久((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
  • 本田 元人((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV薬の適正な使用をガイドするために、臨床と基礎の両面から新薬による治療指針のもとになるデータを提供することを目指す(柱1:新規薬剤の適正使用に関する基礎的研究)。また、治療に伴う毒性や他剤との相互作用を解析し、有害事象を回避するための治療法を探索する(柱2:抗HIV薬の効果と毒性に関する研究)。
研究方法
柱1では、多剤耐性患者から得られた臨床分離株や継代培養で選択された薬剤耐性HIVに対する新規薬剤の効果を解析した。また、表皮水疱蓋を用いたex vivo HIV感染モデルを用いて、新規薬剤の感染予防効果を解析した。柱2では、臨床症例より新規薬剤および既存薬による有害事象の程度・頻度を明らかにし、そのメカニズムを解析した。また、安全な他剤との併用を検討した。
結果と考察
柱1においては、①「etravirine (ETR) の耐性HIV-1への効果」、②「raltegravir(RAL)耐性変異の影響」、③「maraviroc(MVC)に対する耐性誘導」、④「MVCによるHIV感染予防効果の解析」を課題として研究した。柱2においては、⑤「tenofovir (TDF) 腎障害の解析」、⑥「プロテアーゼ阻害薬(PI)による脂質異常」、⑦「PIによる代謝異常のメカニズム解析」を課題として研究した。特に、①「etravirine (ETR) の耐性HIV-1への効果」では、ETRのflexibleな構造が耐性HIV-1への効果をもたらす重要なファクターであることを示した。また、⑤「tenofovir (TDF) 腎障害の解析」では、腎障害によるTDFの中止率は日本人でほぼ5%であり、欧米の報告よりも多く、低体重がリスク因子の一つである可能性を明らかにした。抗HIV薬の効果と毒性に関して、いくつかの重要な知見が得られた。特に、欧米人よりも日本人・アジア人特有と思われる問題も見いだされており、欧米のガイドラインを適用する際に留意すべき注意点を示すことができた。
結論
抗HIV薬の適正な使用をガイドするため、薬剤耐性のメカニズムと日本人における治療に伴う毒性の解析に取り組み、臨床現場で活用可能な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029002B
報告書区分
総合
研究課題名
抗HIV薬の適正使用と効果・毒性に関する基礎的研究
課題番号
H20-エイズ・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
潟永 博之((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 亙((独)国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 太田 康男(帝京大学医学部)
  • 児玉 栄一(東北大学病院 内科・感染症科)
  • 吉村 和久(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 鈴木 康弘(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 横幕 能行((独)国立病院機構名古屋医療センタ― エイズ診療科)
  • 川村 龍吉(山梨大学医学部附属病院 皮膚科)
  • 塚田 訓久((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
  • 本田 元人((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
  • こう 康博(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 蜂谷 敦子((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV薬の適正な使用をガイドするために、臨床と基礎の両面から新薬による治療指針のもとになるデータを提供することを目指す(柱1:新規薬剤の適正使用に関する基礎的研究)。また、治療に伴う毒性や他剤との相互作用を解析し、有害事象を回避するための治療法を探索する(柱2:抗HIV薬の効果と毒性に関する研究)。
研究方法
柱1では、多剤耐性患者から得られた臨床分離株や継代培養で選択された薬剤耐性HIVに対する新規薬剤の効果を解析した。また、表皮水疱蓋を用いたex vivo HIV感染モデルを用いて、新規薬剤の感染予防効果を解析した。柱2では、臨床症例より新規薬剤および既存薬による有害事象の程度・頻度を明らかにし、そのメカニズムを解析した。また、安全な他剤との併用を検討した。
結果と考察
柱1においては、①「etravirine (ETR) の耐性HIV-1への効果」、②「CTL逃避変異の薬剤耐性への影響」、③「raltegravir(RAL)耐性変異の影響」、④「maraviroc(MVC)に対する耐性誘導」、⑤「MVCによるHIV感染予防効果の解析」を課題として研究した。柱2においては、⑥「tenofovir (TDF) 腎障害の解析」、⑦「プロテアーゼ阻害薬(PI)による脂質異常」、⑧「PIによる代謝異常のメカニズム解析」、⑨「抗HIV療法時のワーファリン併用」、⑩「RALの有害事象」を課題として研究した。特に、②「CTL逃避変異の薬剤耐性への影響」では、日本人に広がっているHLA-B*51拘束性CTLの逃避変異が、新規の薬剤耐性変異の出現パターンに影響することを示した。また、⑥「tenofovir (TDF) 腎障害の解析」では、腎障害によるTDFの中止率は日本人でほぼ5%であり、欧米の報告よりも多く、低体重がリスク因子の一つである可能性を明らかにした。抗HIV薬の効果と毒性に関して、いくつかの重要な知見が得られた。特に、欧米人よりも日本人・アジア人特有と思われる問題も見いだされており、欧米のガイドラインを適用する際に留意すべき注意点を示すことができた。
結論
抗HIV薬の適正な使用をガイドするため、薬剤耐性のメカニズムと日本人における治療に伴う毒性の解析に取り組み、臨床現場で活用可能な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIVに対して、抗HIV薬と細胞障害性免疫(CTL)は、通常、独立した別の選択圧であるが、関連し得るかどうかをHIV逆転写酵素領域に主要なepitopeを持つHLA-B*51拘束性CTLの影響について調べた。HLA-B*51拘束性CTLのepitopeに逃避変異を持つHIVから非核酸系逆転写酵素阻害薬による耐性HIVを誘導したところ、新規の耐性変異パターンが現れた。特殊な場合においては、CTLが抗HIV薬に対する薬剤耐性を獲得する際に影響し得ることを示すことができた。
臨床的観点からの成果
HLA-B*51は日本人に比較的多いHLAであり、逆転写酵素領域に位置するHLA-B*51拘束性CTLのepitopeに逃避変異を持つHIVは、HLA-B*51陰性の感染者にも広がっており、特にその割合は日本で著しく高い。従って、日本では特に、この逃避変異の影響を受けた薬剤耐性変異パターンが出現する可能性が高い。更にこの変異パターンは、次世代型の非核酸系逆転写酵素阻害薬に対しても耐性をいもたらす可能性が高く、臨床医に対して重要な情報を提供することができた。
ガイドライン等の開発
HIV診療の知見は、その多くを海外の臨床試験の結果に依存しているが、体格の大きい欧米人での臨床知見をそのまま小柄な日本人に当てはめると問題が生じる可能性がある。本研究では、特に、欧米のガイドラインで治療に不可欠な第一選択薬とされるtenofovirが、日本人に投与された場合、欧米人よりも高頻度で腎障害を生じ、また、低体重がリスク因子の一つであることが示された。日本人向けの治療ガイドラインの作成時には、極めて重要なデータを提供することができた。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省エイズ対策研究事業「HIV感染症およびその合併症の課題を克服する研究班」の「抗HIV治療ガイドライン」において、米国のガイドラインとは異なり、第一選択薬にtenofovirのみではなくabacavirを残した根拠となるデータを提供することができた。他の研究班との連携により、HIV診療に実践的かつ効率的に貢献できた。また、感染者の高齢化に伴い今後その重要性を増してくると思われる、抗HIV薬と循環器病薬との併用についても、実践的データを提供した。
その他のインパクト
日本人における抗HIV療法について、日本に広がっているCTL逃避変異の薬剤耐性への影響について明らかにし、日本人で頻度が高いと思われる有害事象について解析した。また、重要な循環器薬との併用の際に注意すべき事項についても明らかにした。臨床現場へのフィードバックが確実に可能な成果を提供しており、HIV診療における貢献度は高い。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
95件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
125件
学会発表(国際学会等)
66件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Gatanaga H, Honda H, and Oka S.
Pharmacogenetic information derived from analysis of HLA alleles.
Pharmacogenomics (review) , 9 , 207-214  (2008)
原著論文2
Kodama E, Orita M, Masuda N, Yamamoto O et al.
Binding modes of the novel non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors, YM-215389 and YM-228855, to HIV-1 reverse transcriptase.
Antivir Chem Chemother , 19 , 133-141  (2008)
原著論文3
Ibe S, Shigemi U, Sawaki K et al.
Analysis of near full-length genomic sequences of drug-resistant HIV-1 spreading among therapy-na a-individuals in Nagoya, Japan: amino acid mutations associated with viral replication activity.
AIDS Res Hum Retroviruses , 24 (8) , 1121-1125  (2008)
原著論文4
Ogawa Y, Kawamura T, Kimura T et al.
Gram-positive bacteria enhance HIV-1 susceptibility in Langerhans cells,but not in dendritic cells, via Toll-like receptor activation.
Blood , 113 , 5157-5166  (2009)
原著論文5
Yanagimoto S, Tatsuno K, Okugawa S et al.
A single Amino Acid of Toll-like Receptor 4 That Is Pivotal for Its Single Transduction and Subcellular Localization.
J Biol Chem , 284 , 3513-3520  (2009)
原著論文6
Yoshimura K, Harada S, Shibata J, Hatada M et al.
Enhanced exposure of human immunodeficiency virus type 1 primary isolate neutralization epitopes through binding of CD4 mimetic compounds.
J Virol , 87 , 7558-7568  (2010)
原著論文7
Hattori J, Shiino T, Gatanaga H et al.
Trends in transmitted drug-resistant HIv-1 and demographic characteristics of newly deiagnosed patients: nationwide surveillance from 2003 to 2008 in Japan.
Antiviral Res , 88 (1) , 72-79  (2010)
原著論文8
Imamura J, Suzuki Y, Gonda K et al.
Single particle tracking confirms that multivalent Tat protein transduction domain-induced heparan sulfate proteoglycan cross-linkage activates Rac1 for internalization.
J Biol Chem , 286 (12) , 10581-10592  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03

収支報告書

文献番号
201029002Z