コクサッキーA16型ウイルス特異的受容体の同定と機能解析

文献情報

文献番号
201028057A
報告書区分
総括
研究課題名
コクサッキーA16型ウイルス特異的受容体の同定と機能解析
課題番号
H22-新興・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西村 順裕(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コクサッキーA16型ウイルス(CVA16)およびエンテロウイルス71(EV71)は手足口病の主要な原因ウイルスである。CVA16とEV71はウイルス学的に近縁であるが、EV71はヒトでの中枢神経疾患への関与がCVA16より明らかに強いことから、両者のウイルス学的比較は重要である。我々はCVA16およびEV71の受容体のひとつとして、P-selectin glycoprotein ligand-1 (PSGL-1)を同定した。EV71とPSGL-1の結合には、PSGL-1アミノ末端領域の硫酸化チロシンが重要であり、硫酸化阻害剤sodium chlorateはEV71(PSGL-1結合株)のJurkat細胞への感染を阻害する。一方、CVA16は、PSGL-1陽性Jurkat細胞において、PSGL-1非依存的経路により増殖することが示唆されている。本研究の目的は、Jurkat細胞上にあるCVA16受容体を同定し、受容体の違いからCVA16とEV71の病原性の違いを考察することである。本年度は、PSGL-1陽性白血球細胞株におけるCVA16の増殖について解析した。
研究方法
CVA16プロトタイプ株であるG-10株を用いた。PSGL-1陽性白血球細胞株として、Jurkat、U937、MOLT-4細胞を用いた。sodium chlorate存在下で培養したJurkat細胞を用い、CVA16 (G-10株)増殖における硫酸化の関与を検討した。
結果と考察
G-10株はJurkat細胞で増殖したが、U937およびMOLT-4細胞ではほとんど増殖しなかった。Jurkat細胞におけるG-10株の増殖は、抗PSGL-1抗体(PSGL-1アミノ末端領域に結合し、EV71感染を阻害する抗体)では顕著に阻害されず、sodium chlorateにより阻害された。PSGL-1陽性白血球細胞株において、G-10株のPSGL-1依存的増殖は認められなかった。Jurkat細胞におけるG-10株の増殖は、PSGL-1非依存的経路によると考えられ、PSGL-1以外の宿主因子における硫酸化が、Jurkat細胞へのCVA16の感染に関与する可能性が示唆された。
結論
Jurkat細胞におけるCVA16受容体は、PSGL-1以外の硫酸化を受ける分子であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028057Z