抗菌剤治療により寛解する難治性炎症性腸疾患患者の網羅的細菌叢解析と病因・増悪因子細菌群の解明

文献情報

文献番号
201028056A
報告書区分
総括
研究課題名
抗菌剤治療により寛解する難治性炎症性腸疾患患者の網羅的細菌叢解析と病因・増悪因子細菌群の解明
課題番号
H22-新興・若手-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎(UC)は、個有の遺伝的背景と腸内細菌叢が密接に関連して発症する事が示唆されている。三種の抗菌剤(アモキシシリン/テトラサイクリン/メトロニダゾール)を二週間投薬するだけで、その疾患が1年以上緩解することが明らかとなってきた。本研究は、UC発症の環境要因となる細菌叢を抗菌剤治療前後で網羅的且つ定量的に解析を行い、本疾患と密接に関連する細菌の探索を行い、本疾患の発症機序を環境要因の側から理解することを目的とする。
研究方法
 腸内細菌叢の網羅解析法を開発するために、より多くの細菌種に分別できる16S rDNAの可変領域を情報解析にて選別した。糞便検体の16S rDNA可変領域のPCR増幅断片およびメタゲノムDNAライブラリーをillumina GAIIを用いて網羅配列解読し、細菌種鑑別に有効な配列対象を検討した。
配列検索に使用したデータベースは、RDP10 (Ribosomal Database project release 10)とNCBI non-redundant ntデータベースを用いた。
結果と考察
多様な細菌種を鑑別・分別できる16S rDNAの可変領域を情報解析にて選別し、最もバリエーションに富む可変領域V3を軸にしてPCR増幅し、イルミナ網羅解読用のライブラリーを作成した。
 16S-rDNAライブラリーおよびメタゲノム・ライブラリーの両方をイルミナGAIIで78 mer 解読した。得られた解読リードを100%相同性を指標にして細菌種の鑑別を行った。16S-rDNAを対象とした場合、55%以上の解読リードの細菌種を分別できたのに対し、メタゲノム解読法では25%程度にとどまっていた。全ての腸内細菌種のゲノム配列が明らかにされていない現状では、100%相同性による厳しい閾値だと明確な鑑別ができないものと推察された。
 従来の16S-rDNAを元にした細菌フローラ解析法では、10^11菌/g の菌数を有する腸内細菌フローラの氷山の一角しか検討されてこなかった。本研究課題により、10^4菌/g の検出感度まで深く解析・同定できる方法を開発した。
結論
難治性疾患であるUCは、コッホの4原則に当てはまらない感染症の可能性が強く示唆されるため、感染症と難治性疾患との関係をより詳細に理解する為の研究が必要不可欠となる。本研究課題で開発した細菌叢の網羅鑑別法は、近年発症患者数が増加の一途を辿るUCの発症機序を細菌叢側から理解する事が可能であり、本疾患発症に重要な、新たな細菌の特定が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028056Z