有効かつ安全なインフルエンザ粘膜ワクチンの確立を目指した新規アジュバントシステムの開発

文献情報

文献番号
201028053A
報告書区分
総括
研究課題名
有効かつ安全なインフルエンザ粘膜ワクチンの確立を目指した新規アジュバントシステムの開発
課題番号
H20-新興・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉岡靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、新型インフルエンザ等の新興・再興感染症に対する有効かつ安全な粘膜ワクチンの確立を目的に、独自の機能性サイトカイン創製技術を駆使することにより“宿主の粘膜面及び全身に抗原特異的な体液性・細胞性免疫を惹起できる機能性サイトカインアジュバントの創出”を図るものである。
研究方法
本研究では、有効な粘膜ワクチンを開発するための基盤技術開発を目的に、各種サイトカインの粘膜ワクチンアジュバントとしての有用性を評価し有望な粘膜アジュバントを絞り込むこと、それらサイトカインによる粘膜免疫制御メカニズムを解析すること、そして、サイトカインアジュバントによるインフルエンザ感染阻害効果をin vivoで評価することを目指し各種実験を実施した。
結果と考察
これまでに経鼻粘膜ワクチンアジュバントとして有効なサイトカインの選択を目的に、インフルエンザHAを抗原とし、インターロイキンファミリーサイトカインを用いて粘膜アジュバント効果に基づいたスクリーニングを行っところ、IL-1α, IL-18, IL-33等のIL-1ファミリーサイトカインの投与により、全身および粘膜面に顕著な免疫応答が誘導できることを見出してきた。そこでこれら知見をもとに、インフルエンザウイルス(PR8株)感染阻害効果を検討したところ、IL-1ファミリーサイトカインをアジュバントとすることで、インフルエンザウイルス感染を抑制 できることを確認できた。また、粘膜局所に傷害性等の副作用は認められなかった。
結論
粘膜投与型ワクチンは従来の注射によるワクチンと異なり、非侵襲的な方法で人体に病原体に対するバリアー機能を構築できるという圧倒的利点を有しており、次世代のワクチンシステムとして大きく期待されるる。本研究成果は、IL-1ファミリーサイトカインが有効かつ安全な粘膜アジュバントとして有用であることを示しており、新型インフルエンザ等に対する粘膜ワクチン開発への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201028053B
報告書区分
総合
研究課題名
有効かつ安全なインフルエンザ粘膜ワクチンの確立を目指した新規アジュバントシステムの開発
課題番号
H20-新興・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、新型インフルエンザ等の新興・再興感染症に対する有効かつ安全な粘膜ワクチンの確立を目的に、独自の機能性サイトカイン創製技術を駆使することにより“宿主の粘膜面及び全身に抗原特異的な体液性・細胞性免疫を惹起できる機能性サイトカインアジュバントの創出”を図るものである。
研究方法
本研究では、有効な粘膜ワクチンを開発するための基盤技術開発を目的に、各種サイトカインの粘膜ワクチンアジュバントとしての有用性評価およびメカニズム解析、サイトカインアジュバントを用いた粘膜ワクチンのインフルエンザ感染・増殖の阻害効果の評価、アジュバントに有用なサイトカイン機能改変技術の確立、ワクチン送達キャリアに関する検討を行った。
結果と考察
経鼻粘膜ワクチンアジュバントとして有効なサイトカインの選択を目的に、インフルエンザHAを抗原とし、TNFファミリー、およびインターロイキンファミリーサイトカインを用いて粘膜アジュバント効果に基づいたスクリーニングを行った。その結果、TNF-α, APRIL, TL1A、あるいはIL-1α, IL-18, IL-33等のIL-1ファミリーサイトカインの投与により、全身および粘膜面に顕著な免疫応答が誘導された。またその粘膜免疫誘導特性の解析を行ったところ、TNFはTh2型応答を、IL-1ファミリーはTh2およびTh1型応答を示すこと、さらに、IL-18, IL-33によるアジュバント効果には、肥満細胞が関与することを世界に先駆けて見出した。これら知見をもとに、上記サイトカインの作用機序解析、インフルエンザウイルス感染阻害効果を検討したところ、IL-1ファミリーサイトカインをアジュバントとすることで、インフルエンザウイルス感染を抑制 できることを確認できた。
結論
本研究では、TNF-α, APRIL, TL1A、あるいはIL-1α, IL-18, IL-33等のIL-1ファミリーサイトカインが、有効かつ安全な粘膜ワクチンアジュバントになりうることが明らかとした。。本成果は新興再興感染症に対する有効な予防法の開発に寄与することで厚生労働行政に貢献するとともに、未だ不明な点が多い粘膜免疫システムに関する有用な知見を提供できるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028053C

成果

専門的・学術的観点からの成果
粘膜ワクチン実用化のため、有効で安全なアジュバントの開発が期待されている。我々はサイトカインに着目し、30種類以上のサイトカインのスクリーニングにより、粘膜アジュバント活性を有するサイトカインを見出した。また、これらサイトカインの粘膜免疫活性化メカニズムの一部を明らかとした。これら成果は、粘膜免疫調節メカニズムの解明や粘膜ワクチン実用化にも有用な知見である、
臨床的観点からの成果
感染症に対する粘膜ワクチンの実用化にのためには、臨床応用に適うアジュバントの開発が必須である。生体内分子であり、作用標的も明確なサイトカインがin vivo実験で粘膜アジュバント効果を発揮したことは、臨床応用への可能性が期待される有望な成果である。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Abe Y, Yoshikawa T, Kamada H, et al.
Simple and highly sensitive assay system for TNFR2-mediated soluble- and transmembrane-TNF activity
J. Immunol. Methods. , 335 , 71-78  (2008)
原著論文2
Kayamuro H, Yoshioka Y, Abe Y, et al.
TNF superfamily member, TL1A, is a potential mucosal vaccine adjuvant
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 384 (3) , 296-300  (2009)
原著論文3
Kayamuro H, Yoshioka Y, Abe Y, et al.
Interleukin-1 family cytokines as mucosal vaccine adjuvants for induction of protective immunity against influenza virus
J. Virol. , 84 (24) , 12703-12712  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028053Z