早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究

文献情報

文献番号
201028044A
報告書区分
総括
研究課題名
早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 誠(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 駒瀬勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第三部 )
  • 森嘉生(国立感染症研究所 ウイルス第三部 )
  • 木村博一(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 小沢邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 調恒明(山口県環境保健センター)
  • 柳雄介(九州大学 大学院医学研究院)
  • 前仲勝実(北海道大学 大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
39,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
麻疹は、伝染力と病原性が非常に強い急性ウイルス感染症である。効果的なワクチンがあるにも拘らず、世界の5歳未満の小児の全死亡のうち4%が麻疹による(2005年)。世界保健機関が中心となって、ワクチン接種を徹底することにより地球規模で麻疹を排除する計画が進められている。我が国でも平成19年12月「麻しんに関する特定感染症予防指針」が告示され、平成24年度までに麻しんを排除し、その後排除状態を維持する目標が出された。日本の麻疹対策は他の先進国と比較して大きく遅れていたが、指針後の取り組みにより、劇的に患者数が減少した。本研究班では、排除を達成するために解決すべき、科学的、技術的、そして政策的な問題点を明らかにし、解決を図る。

研究方法
本年度取り上げた主な研究課題は、(1) 臨床検体の効果的な輸送法、輸送連携システムの開発研究、(2) 診断技術の向上(感度の向上、偽陽性や偽陰性の回避等)、(3)流行ルートの効果的な解析法の開発研究、(4)抗原性変化の解析、及びワクチン効果を維持するための研究である。
結果と考察
全国の地方衛生研究所では、麻疹の実験室診断検査(RT-PCR)を行うに充分な技術レベルを達成し、平成22年から23年にかけての輸入症例やワクチンの副反応例を的確に捉えるという成果に現れた。加えて、主に民間の検査センターで実施される麻疹IgM ELISA検査において、相当数の偽陽性例が混じり込んでいるであろうことを証明した。このことからも、IgM ELISA検査と併せて、RT-PCR検査をより積極的に推進し、実験室診断精度を上げる必要性が明らかになった。しかしながら、現在、検体を地方衛生研究所へ輸送するための行政的なシステムは、充分には備わっていないことが顕在化した。麻疹排除計画は、現行のワクチンが今後も非常に長期に渡ってすべての流行株に対して有効であろうという予測が前提となっている。しかし、その科学的根拠ははっきりとは示されていない。初年度の活動によって流行株の変遷が明らかになるとともに、麻疹ウイルスの抗原性を理解する上で極めて重要となる顕著な成果を挙げることができた。来年度以降、麻疹ウイルスの抗原性がいかにして決定され、また、どのように変化するかについて明らかにし、ワクチン施策に大きく貢献する計画である。
結論
検査技術は大幅に向上し、全国的に充分なレベルに達している。しかし、病原体を効率的かつ恒常的に収集・検出できる機構を盛り込んだ新たなシステムを構築することが、わが国の麻しん対策、加えて国際貢献の上で、現在、最も重要かつ困難な課題であると考えられた。 

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028044Z