重症呼吸器ウイルス感染症のサーベイランス・病態解明及び制御に関する研究

文献情報

文献番号
201028043A
報告書区分
総括
研究課題名
重症呼吸器ウイルス感染症のサーベイランス・病態解明及び制御に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木村 博一(国立感染症研究所 感染症情報センター第6室)
研究分担者(所属機関)
  • 小沢邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 梁明秀(横浜市立大学大学院医学研究科分子生体防御学)
  • 竹田誠(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 野田雅博(国立感染症研究所 ウイルス第3部第4室)
  • 黒田誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析センター)
  • 水谷哲也(国立感染症研究所 ウイルス1部第1室)
  • 調恒明(山口県環境保健センター)
  • 松山州徳(国立感染症研究所 ウイルス第3部第4室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
34,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ほとんどの呼吸器ウイルスは、気管支炎や肺炎などの重症感染症を引き起こすが、本邦においては、重症呼吸器ウイルス感染症(svARI)の実態及び病態はよくわかっていない。また、これらのウイルスに対するワクチン開発もほとんどなされていない。本研究は、svARIにおける包括的なウイルスサーベイランス、重症化の病態解明及びワクチン開発に資する研究を行うことを目的とする。
研究方法
・多種類の培養細胞を用い、svARI患者由来検体から、ウイルス分離あるいはPCR法にて病原ウイルス遺伝子の検出及び検出株の病原性に関与する遺伝子解析を実施した。
・svARI患者の総括的な疫学情報に関する実態調査を行った。
・呼吸器ウイルスのRT-PCRを主体とした遺伝子検査法の開発・標準化を行った。
・培養細胞系を用い、svARIのサイトカインストームに関する研究を行った。
・svARIを引き起こす肺炎発症に関与する宿主側のプロテアーゼ解析を行った。
・細胞膜貫通型プロテアーゼとレセプター及びS蛋白の相互作用・蛋白の構造解析を行った。
・コムギ無細胞タンパク質合成系を用いたワクチン抗原タンパク質の大量合成系を構築した。
・遺伝子工学的手法を用い、呼吸器ウイルス培養に有用な不死化細胞を確立した。
結果と考察
・分子疫学解析結果から、svARIに関与したウイルスは遺伝学的多様性を有することがわかった。
・実態調査から重症化には多彩なウイルスが関与することがわかった。
・各々のウイルスの遺伝子検査法には改良が必要であることが示唆された。
・HPIV-3感染細胞によるサイトカイン産生異常はサイトカインストームを引き起こす可能性が示唆された。
・膜貫通型セリンプロテアーゼがCVのS蛋白を活性化し、細胞侵入を促進させることが示唆された 。
・HPIV-1には、増殖にトリプシン要求型の株と、非要求型の株が存在することが示唆された。
・コムギ無細胞タンパク質合成系を用い、抗原となるPIV-3-HN全長タンパク質合成系が確立された。
・hTERTを定常的に発現するヒト肺繊維芽細胞(MRC-5細胞)に、ヒトパピローマウイルスE7を導入することで細胞が不死化した。

結論
・遺伝学的多様性を有する種々のウイルスがsvARIに関与していることが明らかになった。
・HPIV及びCVの感染は、ある種のプロテアーゼの作用により促進されることがわかった。
・HPIVワクチンの抗原の大量合成が可能になった。
・呼吸器ウイルス培養に有用なMRC-5細胞の不死化に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028043Z