新規住血吸虫症の免疫血清学的診断システムの開発とその標準化

文献情報

文献番号
199700846A
報告書区分
総括
研究課題名
新規住血吸虫症の免疫血清学的診断システムの開発とその標準化
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 広(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
住血吸虫症の健康被害は大きく、的確・迅速な診断に基づいて早急に治療することが必要であるが、典型的症状・排卵を示さぬ症例も多い。診断を補うべき免疫血清検査では、抗原確保のための生活環維持が必須であるが、実験室では不可能な種もあり、可能な種でも相当の手間と経費を要する。本研究は、今後増加が危惧される新規の住血吸虫症を確実・迅速に鑑別診断できる免疫血清学的診断システムの開発と標準化を目的として実施した。
研究方法
住血吸虫の遺伝子ライブラリーから感染血清と安定して反応するcDNAクローンをスクリーニングした。これを基にリコンビナント蛋白質を大腸菌で産生させた。リコンビナント蛋白質に対する抗血清を作製、その性状をWB及び免疫組織化学法により解析した。リコンビナント蛋白質を抗原としたELISAシステムを構築した。維持・入手が困難な住血吸虫の蛋白質分子についても、免疫血清学的診断システムの構築を目的とした検討に取り組んだ。
結果と考察
日本住血吸虫感染ウサギ血清と安定して反応するcDNAクローンが、カテプシンをコードすることを明らかにした。リコンビナント・カテプシンを大腸菌で産生させた。抗リコンビナント・カテプシン血清を作製して検討し、虫体のカテプシンは分子量が約32,000で成虫の腸管に局在すること、抗血清が虫体由来のカテプシンと反応することを明らかにした。リコンビナント・カテプシンを抗原として日本住血吸虫感染ハムスターの抗体検出をELISAで試み、抗血清を用いてリコンビナント・カテプシンを固相化するシステムで血中抗体が検出できることを明らかにした。このシステムが、マンソン住血吸虫或いはメコン住血吸虫感染ハムスターの抗体検出に応用できることを明らかにした。マンソン住血吸虫のカテプシンcDNAを得た。動物住血吸虫のカテプシン遺伝子をPCRで増幅中である。以上の結果から、住血吸虫のカテプシンはリコンビナントであっても診断用抗原として好適であることが示された。交差反応を利用して診断が出来ることも明らかとなった。更に感度及び特異性の高い免疫血清学的診断システムを構築するには、感染虫体と同一種の虫体由来の抗原の使用が望まれる。この目的を達成するためには、従来はターゲットとなる住血吸虫の抗原を常備する必要があった。しかしながら今後は、データベースから得られた塩基配列を基にリコンビナント・カテプシンを産生、抗原として用いれば良いことが示唆された。維持・入手が困難な住血吸虫の免疫血清学的診断システムの開発とその標準化に活路が見出された。
結論
リコンビナント・カテプシンを抗原としたELISAで日本住血吸虫感染ハムスターの血中抗体を検出できることを明らかにした。他種住血吸虫感染ハムスターの血中抗体も検出できた。患者の血中抗体が検出できるかについて現在検討中であるが、可能性は高い。維持・入手が困難な住血吸虫についても、免疫血清学的診断システムの開発と標準化を目的とした検討に取り組み、活路が見出された。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)