新型インフルエンザH1N1のウイルスの病原性等の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201028033A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザH1N1のウイルスの病原性等の解析に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
信澤 枝里(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 中内 美名(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 田中 成典(神戸大学大学院 工学研究科計算生物学)
  • 松嵜 葉子(山形大学医学部感染症学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、新型インフルエンザ2009の病原性、抗原性に関する網羅的な解析を行い、得られた結果を治療や予防に役立て、国民の健康被害を最小限に抑えることを目的とする。新型インフルエンザ2009は、喘息の既往歴のある患者での重症化が報告されているが、その病因、病態は明らかではない。本研究では、気管支喘息モデル動物に新型インフルエンザウイルス2009 (新型ウイルス)を感染し、喘息患者で生じる重傷化の病態を解明することを目的とした。一方、新型ウイルス2009は、今後季節性インフルエンザウイルスとしてヒトの間で感染を繰り返し、抗原変異を起こすと考えられるが、ウイルス抗原の抗原構造やヒトの中和抗体が認識する抗原構造の詳細は明らかではない。本研究では、これらの抗原構造およびヒトの免疫応答を明らかにすることを目的とした。
研究方法
病原性の解析: BALB/c および気管支喘息モデルマウスNC/NgaにPR8株及びマウスに馴化した新型ウイルスA/Narita/1/2009を感染させ、新型ウイルス感染による症状の増悪化を検討した。抗原性の解析:新型ウイルスA/Narit/1/2009HAに対するマウス単クローン抗体エスケープ変異株の解析、ワクチン接種者の記憶B細胞から抗体遺伝子のクローニング、培養細胞上の抗体蛋白の発現、新型ウイルスワクチン接種者のぺア血清のHI試験やHAに対する結合反応の測定、さらに高速高精度の計算機シミュレーションによるHA蛋白質内の全アミノ酸の相互作用に関する網羅的・系統的な解析を行った。
結果と考察
◎OVA-Alumを用いた気管支喘息モデルにおける気管支周囲の好酸球浸潤に比べると新型ウイルス感染による好酸球浸潤はごく軽度であった。◎エスケープ変異株の解析の結果、抗原領域は既知のSa, Sb, Ca2領域にあり、Sa, Sb領域が1つの領域を形成していること、ワクチン接種者の陽転率は約80%でその多くがSa領域を認識する一方、ワクチン、感染のいずれでも陽転しにくい集団の存在も確認された。計算機実験によりHA-受容体複合体中のアミノ酸残基の重要性の定量化を行った。
結論
◎アレルギー素因を有するNC/Ngaマウスを用いた感染実験から、新型ウイルス感染のみでは気管支喘息は惹起されにくいことが示唆された。◎マウス単クローン抗体の大半はSa, Sb領域を認識し、ワクチン接種後血清の大半もSa領域を認識した。今後の解析のためヒトの単クローン抗体作製系を確立した。免疫応答の低い集団の存在が明らかになった。高精度計算機実験によりHAに関わる分子間相互作用の定量的解析が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028033Z