食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究

文献情報

文献番号
201028021A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 俊一(北海道立衛生研究所)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター)
  • 堀川 和美(福岡県保健環境研究所)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 三瀬 敬治(札幌医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
48,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因病原体となるウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、原因解明のために解析結果を共有して当該感染症の予防や制御に資する情報ネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベースをオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) BioNumerics(BN)及びBN serverを利用した菌株解析情報データベースのオンラインシステムの構築とアクセスの検証を行う。サーバ利用による情報共有として掲示板等の機能を充実させる。PFGEによるデータベース構築及び腸管出血性大腸菌(EHEC) O157に対するMLVAやIS法等による解析手法の検討を継続する。
2) 近年流行したノロウイルス(NoV)株の全塩基配列を決定し、ゲノム全長に渡る塩基配列を蓄積する。ウイルスゲノム情報と疫学を連結させて解析するためのカリシウェブを整備・更新する。NoVの病原性発現機序におけるORF1及びORF2,3の役割について調べる。NoV及びサポウイルス(SaV)の組換えウイルス様粒子の作成から抗体作成を行う。抗体を利用した迅速診断方法としてイムノクロマト(IC)キットの開発を継続する。
結果と考察
食品由来感染症を惹起する病原体の解析情報データベースとして、ウイルスではカリシウェブ、細菌ではパルスネットの構築が進んでおり、これらが有効に機能するためには、正確な病原体解析情報を蓄積することが必須である。実際の解析では、継続的に使用しているPFGEの他に、EHEC O157で、IS法及びMLVAが事例解析に有効なことを明らかにした。NoVでは、全長塩基配列が未決定の標準株解析から、病原性における構造タンパク質の役割やORF1のgenotypeにおける貢献度を明らかにし、SaVでは、従来とは異なる遺伝的クラスターのウイルス株について構造タンパク質全長領域の塩基配列を決定してカリシウェブへ登録した。カリシウェブのデザインとURLを更新し、ウェブ内データベースの自動情報更新速度を高速化した。SaV迅速診断系のICでは、継続的な改良が必要であった。
結論
食品由来感染症を惹起する病原体の解析情報データベースとして、ウイルスではカリシウェブ、細菌ではパルスネットの構築が継続されている。いずれのデータベースも、オンライン上での正確な病原体解析情報を蓄積することが、システムが有効に機能するためには必須である。分子遺伝学的手法に基づいた詳細な病原体解析手法の評価と開発が、有用なデータベース構築に必要だと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028021Z