COPD等における難治性感染症の病態把握等に関する研究

文献情報

文献番号
201028012A
報告書区分
総括
研究課題名
COPD等における難治性感染症の病態把握等に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
  • 二木 芳人(昭和大学医学部 臨床感染症学講座)
  • 小川 賢二(国立病院機構東名古屋病院 臨床研究部)
  • 安藤 常浩(日本赤十字社医療センター)
  • 山越 智(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 泉川 公一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
  • 亀井 克彦(千葉大学真菌医学研究センター 病原真菌研究部門真菌感染分野)
  • 渡邊 浩(久留米大学医学部 感染医学講座 臨床感染医学部門)
  • 大野 秀明(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,505,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COPD等に合併しやすい慢性肺アスペルギルス症(CPA)の診断基準を策定し、的確な診断法と有効性の高い治療法の開発を促進する。また、本年度はクリプトコックス・ガッティ(C. gattii)感染症の実態把握も開始した。
研究方法
<臨床小班>①患者背景:a)臨床背景、b)遺伝子背景、②症状、③検査法:a)画像所見とb)血清検査
<基礎小班>④病理学的解析、⑤新規診断法の開発、⑥難治化因子の研究
<C.gattii班>⑦クリプトコックス属真菌株の収集と血清型判別
結果と考察
①患者背景
a)基礎疾患として、COPD等の慢性肺疾患、および肺結核症を主とする肺抗酸菌感染症の後遺症が重要であることが示唆された。
b)遺伝子背景としては、本邦のCPAに特異的な遺伝子多型が存在する可能性が示唆された。
②症状:気道出血症状は、肺炎との鑑別点となりうることが判明した。
③検査法
a)一時点の画像のみによる診断は困難であり、経過やその他の臨床所見を考慮する必要がある。
b)高頻度に使用される血清診断法であるβ-グルカンについて、測定法の違いによる結果の乖離は少ないことが示された。また、GMに関する検討で、GMのみでは、本疾患を区別することは困難であることが示された。
④CPAの病理像は、菌と好中球反応が関与した組織障害と慢性炎症が関与した器質化が同時に進行する病態を反映していると考えられた。
⑤新規診断法の開発においては、SST-REX法で見出された標的蛋白質に対するサンドイッチELISA法が、診断に応用可能となる可能性が示唆され、新規の診断系を構築する足掛かりが得られた。また、SST-REX法で同定された分泌蛋白質のうちY-1蛋白質は、病原性との関連性が示唆され、新たな治療法への応用の可能性も示された。
また、昨年度、臨床プロテオミクスにより、新規抗原として同定したアスペルギルス由来ユビキチン様蛋白質については、残念ながら特異性に問題が見つかったが、方法を改良することにより新たな新規抗原の発掘は可能であると考えられた。
⑥難治化因子としてFetuinを見出し、診断や治療への応用が期待される結果となった。
⑦今回収集した株にはC. gattiiはなかった。
結論
臨床小班では、治療が必要なCPAの診断における必須項目の検証が行われた。
基礎小班では、CPAの病理像、新規診断法、病原因子、および難治化因子に関する良好な結果が得られた。
C.gattii班では、今回収集した株にC.gattiiを認めなかったが、今後も継続した検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201028012B
報告書区分
総合
研究課題名
COPD等における難治性感染症の病態把握等に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
  • 二木 芳人(昭和大学医学部 臨床感染症学講座)
  • 小川 賢二(国立病院機構東名古屋病院 臨床研究部)
  • 安藤 常浩(日本赤十字社医療センター)
  • 山越 智(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 泉川 公一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
  • 亀井 克彦(千葉大学真菌医学研究センター 病原真菌研究部門真菌感染分野)
  • 渡邊 浩(久留米大学医学部 感染医学講座 臨床感染医学部門)
  • 掛屋 弘(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
  • 大野 秀明(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COPD等に合併しやすい慢性肺アスペルギルス症(CPA)の診断基準を策定し、的確な診断法と有効性の高い治療法の開発を促進する。また、H22年度よりクリプトコックス・ガッティ(C. gattii)感染症の実態把握も開始した。
研究方法
<臨床小班>①患者背景:a)臨床背景、b)遺伝子背景、②症状、③検査法:a)画像所見とb)血清検査
<基礎小班>④病理学的解析、⑤侵襲性真菌症(IFI)の疫学、⑥新規診断法の開発、⑦難治化因子の研究
<C.gattii班>⑧クリプトコックス属真菌株の収集と血清型判別
結果と考察
①患者背景
a)基礎疾患として、COPD等の慢性肺疾患、および肺結核症を主とする肺抗酸菌感染症の後遺症が重要であることが示唆された。
b)遺伝子背景としては、本邦のCPAに特異的な遺伝子多型が存在する可能性が示唆された。
③症状:気道出血症状は、肺炎との鑑別点となりうることが判明した。
③検査法
a)一時点の画像のみによる診断は困難であり、経過やその他の臨床所見を考慮する必要がある。
b)高頻度に使用される血清診断法であるβ-グルカンについて、測定法の違いによる結果の乖離は少ないことが示された。また、GMに関する検討で、GMのみでは、本疾患を区別することは困難であることが示された。
④CPAの病理像は、菌と好中球反応が関与した組織障害と慢性炎症が関与した器質化が同時に進行する病態を反映していると考えられた。
⑤IFI罹患率は漸増傾向を呈し、近年では糸状菌が主要な病原菌となっていた。
⑥新規診断法の開発において、SST-REX法や臨床プロテオミクスによって、新規抗原を見出した。その一部は、今後も応用可能と推察され、診断系の確立を目指す。
⑦難治化因子としてFetuinを見出し、診断や治療への応用が期待される結果となった。
⑧今回収集した株にはC. gattiiはなかった。
結論
臨床小班では、治療が必要なCPAの診断における必須項目の検証が行われた。
基礎小班では、CPAの病理像、IFIの疫学、新規診断法、病原因子、および難治化因子に関する良好な結果が得られた。
C.gattii班では、今回集積した株にはC.gattiiを認めなかったが、今後も継続した検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
COPD等に合併しやすい慢性肺アスペルギルス症(CPA)は、明確な診断指針がなく、また、長期予後が不良であるため、診断基準策定と診断・治療法の確立が望まれている。上記の背景をもとに研究を行い、本邦における本疾患に特有の基礎疾患・遺伝子多型の存在を見出した。また、診断の手掛かりとなる症状・画像所見・検査所見に関する知見が得られた。さらに、これまでに真菌で用いられたことのなかったSST-REX法を用いることで、未知の標的抗原が探索可能となり、診断・治療への有用性が期待される結果となった。
臨床的観点からの成果
本疾患を特定するために必要な基礎疾患・臨床症状・画像所見が明確となり、今後、ガイドラインの作成に反映する予定となっている。また、SST-REX法を用いた標的抗原の探索によって得られた成果は、今後、ELISA法やイムノクロマト法を用いた簡便・迅速な診断法の開発に有用となることが予想される。また、同法によって発見された標的抗原は、治療標的となりうることも予想される。このように、CPAの診断基準策定、有効性の高い診断・治療法の開発促進、といった本研究の目的は達成されつつある。
ガイドライン等の開発
臨床経過と微生物の関与、また、病理組織学的な病態評価を行い、従来の慢性壊死性肺アスペルギルス症や慢性線維性肺アスペルギルス症、アスペルギローマなどを包含し慢性肺アスペルギルス症として、疾患群名と臨床診断指針を提言した。画像所見、臨床症状、真菌学的検査所見からなるが、本指針が診断治療のガイドラインに反映される見込みであり、本指針を用いた臨床研究も計画されている。
その他行政的観点からの成果
診断基準が曖昧なままに、診断され抗真菌薬の長期にわたる投与が行われている現状があるが、診断指針の提言により適正な診断と治療が実践されることが期待できる。患者数が多い割に、疾患概念と診断法が曖昧なため不利益を被る可能性のある患者に対して、直接的な利益がある。また、薬剤の有効性が臨床試験により評価可能となることから抗真菌薬の適正使用につながり医療経済学的にも有益である。
その他のインパクト
慢性肺アスペルギルス症は年余に渡る経過をとる予後不良の疾患であるが、患者集団構造や医療経済による理由から患者が把握され研究されているのは主に英国と日本である。わが国では500万人とも推定される、喫煙によるCOPDが本疾患の基礎疾患になることから、一般国民の保健衛生に与える影響は大きく、わが国の研究者が疾患を明らかにし診断治療法の開発に繋げる意義は大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kohno S, Izumikawa K, Kakeya H, Miyazaki Y et al.
Clinical efficacy and safety of micafungin in Japanese patients with chronic pulmonary aspergillosis: a prospective observational study
Med Mycol  (2011)
原著論文2
Tashiro T, Izumikawa K, Tashiro M, Takazono T et al.
Diagnostic significance of Aspergillus species isolated from respiratory samples in an adult pneumology ward
Med Mycol  (2011)
原著論文3
Kohno S, Izumikawa K, Ogawa K, Kurashima A et al.
Intravenous micafungin versus voriconazole for chronic pulmonary aspergillosis: a multicenter trial in Japan
J Infecion , 61 (5) , 410-418  (2010)
原著論文4
Miyazaki T, Izumikawa K, Yamauchi S, Inamine T et al.
The glycosylphosphatidylinositol-linked aspartyl protease Yps1 is transcriptionally regulated by the calcineurin-Crz1 and Slt2 MAPK pathways in Candida glabrata
FEMS Yeast Res  (2011)
原著論文5
Miyazaki T, Inamine T, Yamauchi S, Nagayoshi Y et al.
Role of the Slt2 mitogen-activated protein kinase pathway in cell wall integrity and virulence in Candida glabrata
FEMS Yeast Res , 10 (3) , 343-352  (2010)
原著論文6
Kaneko Y, Ohno H, Fukazawa H, Murakami Y et al.
Anti-Candida-biofilm activity of micafungin is attenuated by voriconazole but restored by pharmacological inhibition of Hsp90 related stress responses
Med Myocol , 48 (5) , 606-612  (2010)
原著論文7
Kaneko Y, Ohno H, Kohno S, Miyazaki Y.
Micafungin alters the expression of genes related to cell wall integrity in Candida albicans biofilms
Jpn J Infect Dis , 63 (5) , 355-357  (2010)
原著論文8
Kaneko Y, Ohno H, Imamura Y, Kohno S et al.
The effects of an hsp90 inhibitor on the paradoxical effect
Jpn J Infect Dis , 62 (5) , 392-393  (2009)
原著論文9
Miyazaki T, Yamauchi S, Inamine T, Nagayoshi Y et al.
Roles of calcineurin and Crz1 in antifungal susceptibility and virulence of Candida glabrata
Antimicrob Agents Chemother , 54 (4) , 1639-1643  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201028012Z