罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201028011A
報告書区分
総括
研究課題名
罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克((財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 御手洗 聡((財)結核予防会結核研究所)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 阿彦 忠之(山形県健康福祉部(兼)山形県衛生研究所)
  • 伊藤 邦彦((財)結核予防会結核研究所)
  • 重藤えり子(独立行政法人国立病院機構東広島医療センター)
  • 大森 正子((財)結核予防会結核研究所)
  • 吉山 崇(財団法人結核予防会複十字病院,第一診療部(兼)財団法人結核予防会結核研究所)
  • 加藤 誠也((財)結核予防会結核研究所)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所)
  • 下内 昭((財)結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国が今後迎える結核低まん延と特定層への結核罹患集中を考慮した場合、結核対策や医療の質維持はより困難となり、現結核対策は転換が迫られている。本研究の目的はこれからのあるべき効果的結核対策の構築と実施の方法を明らかにしその根拠を提供することである。具体的には病原体サーベイランス構築研究および、結核対策・結核医療供給体制のあり方の検討と提言づくりである。
研究方法
疫学ならびに分子疫学的検討・文献的考察・現地視察・アンケート調査・ワークショップ・方策の試行等により総合的に行った。
結果と考察
「菌バンク・病原体サーベイランス研究」では、菌バンクの様々な有用性を示し地方衛生研究所や民間検査センターを病原体サーベイランスに利用する可能性を示した。さらに病院ネットワークを基礎とした病原体サーベイランスの可能性を示し全国に広域に分布する菌株の存在を示した。「患者発見・予防対策研究」では、合併症を持つ高齢者の福祉施設入所中発症が多くまた高齢者の外来性感染も稀ではないことを示し高齢者発病での分子疫学調査の必要を示した。「適正医療確保の研究」では、感染症患者への法的強制力についての原則を示した。「医療のあり方研究」では、低まん延下結核医療モデルとして地域連携パスを開発・施行し有用性を示した。「疫学的サーイランス研究」では疫学情報の詳細な分析を行い現場への疫学情報還元モデルを構築した。「対策評価研究」では各自治体での結核対策レビューの手法を示した。「対策実施体制研究」では低まん延下での結核対策について諸外国の例の分析を元に考察した。「リスク集団対策研究」では、大阪市のホームレスに対する健診の有効性を証明した。「対策の質確保に関する研究」では、外部専門家による各自治体結核対策支援のモデルを示した。主任研究者は結核対策への当事者の参加の意義、DOTSによるエンパワメント効果を示し、3年間の総括として、国内専門家のワークショップを実施し、国の「感染症予防指針改定」に向けた提言をまとめた。また海外結核対策専門家による日本の結核対策の国際合同レビューを行った。
結論
3ヵ年の成果により今後の結核対策のあり方を示すデータや資料の蓄積を行い、それらの多くが結核に関する特定感染症予防指針の改訂の資料として用いられた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201028011B
報告書区分
総合
研究課題名
罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克((財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 御手洗 聡((財)結核予防会結核研究所 )
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 阿彦 忠之(山形県健康福祉部(兼)山形県衛生研究所)
  • 伊藤 邦彦((財)結核予防会結核研究所 )
  • 重藤えり子(独立行政法人国立病院機構東広島医療センター)
  • 大森 正子((財)結核予防会結核研究所 )
  • 吉山 崇((財)結核予防会複十字病院,第一診療部(兼)結核研究所)
  • 加藤 誠也((財)結核予防会結核研究所 )
  • 吉田英樹(大阪市保健所)
  • 下内 昭((財)結核予防会結核研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結核の低まん延化の進行、特定集団へ偏在傾向の中で、効果的な結核対策および医療提供体制の再構築が求められている。本研究は今後の結核対策・医療提供体制の再構築と実施の方法を明らかにし、諸方策の根拠を提供する行政研究である。研究は病原体サーベイランス分野と、結核対策・結核医療体制研究の二つの大分野で構成される。
研究方法
研究方法は、文献考察・先進諸外国の状況分析・アンケート調査・分子疫学的解析・現場の試行・ワークショップ・現地視察等によった。
結果と考察
「菌バンク・病原体サーベイランス研究」では、菌バンクの様々な有用性を示し、地方衛生研究所・民間検査センター・病院ネットワークを病原体サーベイランスに利用する可能性を示した。「患者発見・予防対策の研究」では、『接触者健診の手引き』の改定や低まん延下での高齢者結核対策のあり方を示した。「適正医療確保の研究」では医療の質・結核医療の一般医療への統合・治療非協力者への対処につき原則を示した。「医療のあり方研究」では結核医療機関の諸問題を明らかにし結核医療地域連携パスを開発し有用性を示した。「疫学的サーベイランス研究」では登録者情報の詳細な分析と対策評価および情報還元モデルを示した。「対策評価研究」では自治体の結核対策レビュー手法の開発確立を行った。「対策実施体制研究」では低まん延下諸外国の対策実施の現状視察を基礎に今後の日本の結核対策構築のための提言を行った。「リスク集団対策研究」では、大阪市のホームレスを例に低まん延下ハイリスク群の結核対策モデルを示した。「対策の質確保に関する研究」では結核対策維持向上のための、対策目標の設置その達成のためのモニタリングという基本サイクルを提言しその有用性を示した。主任研究者研究では、全国結核専門家ネットワークの構築を試みた。また当事者参加の意義、DOTSによるエンパワメント効果を示した。3年間の総括研究として海外結核対策専門家を招へいし、日本の結核対策国際合同レビューを行い、結核対策の世界的標準の視点から今後の結核対策への提言を得た。
結論
3年間の研究を通し、直近および5-10年後の結核対策のあり方に関する多くの知見が得られ、その多くは厚生科学審議会結核部会での結核に関する特定感染症の基本予防指針の改訂のための基礎資料として提供され、今後の国全体の結核対策の方向付けに大きく寄与したと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果により、今後予想される罹患構造の変化を伴う低まん延状態への移行に対応した、新たな結核対策の構築のための基礎的検討と資料・データを得た。研究は病原体サーベイランス構築の検討と、新たな結核対策・結核医療体制の構築の検討、の二つを大きな研究の柱として行ってきたが、これら両領域で今後の新たな結核対策構築のための国全体としての大きな道筋を示し得たと同時に、これを支えるさまざまなデータとエビデンスを蓄積し得た。
臨床的観点からの成果
低まん延下で各臨床医の結核診療経験が低下する中での、質の確保された結核医療の提供は大きな課題である。本研究では、結核医療の質確保策を検討するため、結核医療の現状・問題点を明らかにされさらにその解決策を提示するとともに、現在の結核病棟制度を将来的に一般臨床へ統合していく際の指針を示した。また低まん延下での質を確保した結核医療提供モデルとして、結核医療の地域連携パスが開発され、有用性が示された。
ガイドライン等の開発
結核患者に暴露され感染の危険性のある接触者への対処・診療に関する国のガイドラインである「接触者健診の手引き」については,全国の保健所等からの意見等を踏まえて内容の修正を検討し,その結果を2008年に「改訂第3版」,2010年に「改訂第4版」として公表するとともに、Q&A集をまとめた。また結核に限らず、感染症患者一般の人権制限に関する原則を米国の法学・判例を元にまとめ、論文として発表し、今後の強毒新型インフルエンザ対策の際にも基礎資料として機能し得るものとした。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会感染症分科会結核部会資料として多数提出された;第16回2010年3月12日:『我が国の結核対策の強化に向けて』。第19回2010年8月6日:『全国自治体に対するアンケート調査』等。第20回2010年11月5日:『結核病床の施設状況に関する全国サンプリング訪問調査結果』等。第21回2010年11月19日:『結核の治療を行う上での服薬確認の位置づけについて』等。その他第22回2010年12月20日、第23回2011年1月28日等でも資料提出
その他のインパクト
全国の臨床・公衆衛生両分野の全国結核専門家のネットワーク構築を試みた。また3年間の総括研究として海外結核対策専門家による本邦結核対策国際合同レビューを行い、結核対策の世界的標準の視点から、今後の本邦結核対策への提言を行った。

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
56件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
59件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
11件
その他成果(普及・啓発活動)
49件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayuki Wada, Sami Fujihara, Akira Shimouchi, et al.
High transmissibility of the modern Beijing Mycobacterium tuberculosis in homeless patients of Japan
Tuberculosis , 89 (4) , 252-255  (2009)
原著論文2
大森正子、吉山崇、石川信克
日本の結核まん延に関する将来予測
結核 , 84 (4) , 365-377  (2008)
原著論文3
長嶺路子、大森正子、永井惠、他
新宿区内の全結核患者に対するIS6110RFLP分析の実施と評価-接触者健診への応用の可能性について-
結核 , 83 (4) , 379-386  (2008)
原著論文4
神楽岡澄、大森正子、高尾良子、他
新宿区保健所における結核対策-DOTS事業の推進と成果-
結核 , 83 (9) , 611-620  (2008)
原著論文5
山田万里、大森正子、神楽岡澄、他
新宿区保健所におけるリスクアセスメント表を用いた服薬支援
結核 , 85 (2) , 69-78  (2010)
原著論文6
加藤誠也
低蔓延時代の結核対策の保健・医療組織と人材育成の課題
日本公衆衛生学会雑誌 , 56 (7) , 481-484  (2009)
原著論文7
加藤誠也
現場を支える結核対策指導者養成研修の現状と課題
公衆衛生 , 73 (2) , 180-183  (2009)
原著論文8
重藤えり子
結核治療におけるフルオロキノロン剤及びその他の保険適応外薬剤使用の現状-アンケート調査より-
結核 , 85 (10) , 757-760  (2010)
原著論文9
重藤えり子
感染症法の下での結核治療困難者への対応?アンケート調査から?
結核 , 86 (4) , 445-451  (2011)
原著論文10
下内 昭、甲田伸一、廣田 理et al.
大阪市の結核集団接触者健診の評価
結核 , 84 (6) , 491-497  (2009)
原著論文11
下内 昭
大阪市における都市結核問題への闘いと成果
結核 , 84 (11) , 727-735  (2009)
原著論文12
豊田恵美子、川辺 芳子、坂谷 光則 他
多剤および超多剤耐性結核の全国調査
結核 , 83 (12) , 773-777  (2008)
原著論文13
伊藤邦彦
他アンケート調査に基づく結核患者収容モデル病床の運営上の問題点
結核 , 83 (1) , 9-14  (2009)
原著論文14
伊藤邦彦
米国における結核医療の総合病院への統合
結核 , 85 (7) , 615-630  (2010)
原著論文15
伊藤邦彦
治療に非協力的な結核患者への法的強制力
結核 , 86 (4) , 459-471  (2011)
原著論文16
伊藤邦彦
結核モデル病床における感染モニターの現状
結核 , 84 (2) , 79-82  (2009)
原著論文17
伊藤邦彦
病院看護師に対する定期的QFT-2G検査の発病予防効率
結核 , 84 (11) , 709-711  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-06-04
更新日
2016-06-27

収支報告書

文献番号
201028011Z