新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究

文献情報

文献番号
201028007A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科)
  • 森兼 啓太(山形大学医学部付属病院検査部)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 神垣 太郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザ対策としてはワクチンや抗ウイルス薬が非常に有効であるが、これだけではなく公衆衛生対策を考える必要がある。本研究班ではこの公衆衛生対策を研究テーマに設定することで、パンデミック時の公衆衛生対策をどのように進めていくべきなのかに関する提言および知見の提供を目的として研究を進める。
研究方法
今年度の研究として、①高等学校における新型インフルエンザ対策に関する調査研究、②学校におけるインフルエンザの疫学研究、③海外における新型インフルエンザ対策の研究、④数理モデルを用いての学校の臨時休業の効果に関する検討、の4項目を実施した。
結果と考察
①高等学校における新型インフルエンザ対策に関する調査研究
学校保健委員会が多くの学校で設置されており、対応の相談先としては校医が最も多く、次いで保健所であった。インフルエンザ患者への対応および感染予防については90%近くが実施しており、対策の実行性という意味では非常に高いコンプライアンスがみられた。
②学校におけるインフルエンザの疫学研究
2010年10月から3月1週目までに2地域からデータ収集を行った。小学校での流行規模は同じ学区にある中学校よりも大きくなること、インフルエンザと診断されたものはほぼ全数が学校を欠席していること、その欠席日数は4-5日であること、家族内でのインフルエンザ罹患者数が最も多かったのは就労者での群であったが、各群での罹患者のしめる割合が最も大きいのは幼稚園・保育園児であった。
③海外における新型インフルエンザ対策の研究
ワクチン接種の優先順位、ワクチンの配布の方法、公衆衛生対応の実施の判断基準、サーベイランスの方法などが課題としてあげられたが、2国のどのレベルにおいても後ろ向きに検討しながら課題点とうまく対処できた点を整理している。
④数理モデルを用いての学校の臨時休業の効果に関する検討
パンデミック(H1N1)2009の発生以前に構築された感染症モデルを用いて休業措置の効果を検討した結果、ピーク時で約5%の罹患率を、最終的には約10%程度の罹患率の軽減を認めていた。
結論
学校におけるインフルエンザ対策の効果という観点から感染症モデル、高等学校におけるインフルエンザ対策および中学校区におけるインフルエンザの流行像について知見をまとめた。海外における情報収集でふれたように課題点とうまく対処できた点を明らかにしながら引き続き知見を集めることが重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201028007B
報告書区分
総合
研究課題名
新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学系研究科)
  • 森兼 啓太(山形大学医学部付属病院検査部)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 神垣 太郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 和田 耕治(北里大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年度に国の「新型インフルエンザ対策行動計画」が見直されて、ウイルスのコミュニティへの侵入を早期に探知してそれ以上の拡大を予防するという、いわゆる早期封じ込めが中心であったものからMitigation(社会的被害の軽減)にまで言及された内容となった。ワクチンの開発や抗ウイルス薬の備蓄とともに、多くの疫学モデルで示されているとおり、被害を最小限に食い止めるためには医薬品による対策以外にもさまざまな公衆衛生対策も同時に行うことが必要である。公衆衛生対策を効果的に実施するためには、具体的な対策の有効性と妥当性あるいは実際に対策が行われる地域における実現性についても調査研究を進めることが重要であると考えられる。
研究方法
研究班ではまず現在の新型インフルエンザ対策の現状を把握するとともに、これまでのインフルエンザの感染経路および学校の休業措置に関する文献調査を通してまとめをおこなった。また医療機関における診療継続計画の作成や停留やN95レスピレータの着用に関するガイドラインの作成を実施した。研究期間中にパンデミック(H1N1)2009を経験したために公衆衛生対応を実施する際の基本情報となり得る疫学的情報のまとめを積極的に発信した。この際に得られた知見も含めて本研究課題ではたんに公衆衛生対策を実施する際に問題となる点だけではなく、公衆衛生対策を実施する際の基礎情報となるインフルエンザサーベイランスの評価や、学校におけるインフルエンザ対策などを含めて研究を進めることを目的として研究をおこなった。
結果と考察
パンデミック(H1N1)2009が発生する前には、市町村における新型インフルエンザ対策委員会の設置は低い水準に留まっており、その設置および他市町村との連携の意義に関する啓発が必要であると考えられた。パンデミック(H1N1)2009の際には、季節性インフルエンザではみられなかった年齢階層ごとの非同期的な流行を明らかにするとともに学校の休業措置に関する提言をまとめた。中学校区におけるインフルエンザの流行をみた際に小学校でより流行が大きくなること、就労群、大学生から幼稚園・保育園児群における罹患率では幼稚園・保育園児が高く、これらの流行が地域の流行を牽引している可能性が示唆された。
結論
新型インフルエンザ対策を効果的に進めて行くには、継続的な対策が必要であること、その際に課題点の整理をきちんと行う必要があること、さらに今回のパンデミック(H1N1)2009で不明であった疑問点について重点的に知見をあつめていく必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型インフルエンザの発生によってもたらされるパンデミック時にその被害軽減を考慮することは公衆衛生として重要なことと考えられる。本研究班ではこれまでに知られている知見に関する文献調査を実施するとともに2009年に発生したパンデミック(H1N1)2009では、対策の意思決定に重要である流行の疫学特徴の把握を行い、年齢階層別の非同期的な流行の拡大などを明らかにした。
臨床的観点からの成果
臨床的な研究課題が直接的に含まれていたわけではないので、同観点からの成果は非常に限局されていると考えられる。しかし本研究班では、小児用マスク着用の現状についてまとめ、成人におけるN95マスクのフィットテストに関する教育ツールを開発するとともに医療機関における診療継続計画作成のためのマニュアルも開発しており、これらは直接的に臨床で有用であったと期待される。
ガイドライン等の開発
新型インフルエンザまん延期における診療継続計画作成のためのガイドラインを作成し、その内容について周知を行った。また2009年のパンデミック(H1N1)2009の際には、とくに学校の休業措置に関するこれまでの知見についてまとめ、「新型インフルエンザ流行時における学校閉鎖に関する基本的考え方」として報告された(厚生労働省事務連絡. 平成21年9月24日発)。また疫学的特徴について適宜まとめを国外の状況の把握とともにまとめ全国保健所長会ウェブサイトなどを通して発信した。
その他行政的観点からの成果
地域や高齢者福祉施設における新型インフルエンザ対策の現状と課題点について情報収集を行い、その知見について発信を行ってきた。また海外における新型インフルエンザ対策についても情報収集を行い、我が国との対比という観点からまとめを行っている。パンデミック(H1N1)2009では、学校閉鎖に関する知見をまとめて積極的学校閉鎖の効果と限界点について発信することができた。
その他のインパクト
学術誌のみならず商業誌などにも新型インフルエンザ対策の現状と課題について積極的に情報を発信してきた(参考:週刊医学界新聞 第2812号2009年1月1日発行)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishiura H, Oshitani H.
Household Transmission of Influenza (H1N1-2009) in Japan: Age Specificity and Reduction of Household Transmission Risk by Zanamivir Treatment.
J Int Med Res. , 619-628  (2011)
原著論文2
Nishiura H, Oshitani H.
Effects of vaccination against pandemic (H1N1) 2009 among Japanese children.
Emerg Infect Dis. , 17 (4) , 746-747  (2011)
10.3201/eid1704.100525
原著論文3
Kamigaki T, Oshitani H.
Epidemiological characteristics and low case fatality rate of pandemic (H1N1) 2009 in Japan.
PLoS Curr. 2009 Dec 20:RRN1139.  (2009)
10.1371/currents.RRN1139
原著論文4
河村真人, 神垣太郎, 押谷仁 他.
拡大サーベイランスに基づく長野県佐久地域の2008/09シーズンにおけるインフルエンザ様患者数に関する検討
感染症学雑誌 , 84 (5) , 575-582  (2010)
原著論文5
貫和奈央, 神垣太郎, 押谷仁 他
2008~2009シーズンの庄内地域におけるインフルエンザ外来患者からみた医療施設への負荷の検討 新型インフルエンザA(H1N1)を視野に入れて
感染症学雑誌 , 84 (1) , 52-58  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,300,000円
(2)補助金確定額
6,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-