本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策

文献情報

文献番号
201028004A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策
課題番号
H20-新興・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 恭暉(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 出雲 周二(鹿児島大学 医歯学総合研究科 難治ウイルス研)
  • 望月 學(東京医科歯科大学 視覚応答調節学)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 徳留 信寛(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 齋藤 滋(富山大学 医学部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
29,576,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、昨年度に引き続きATLの年間発症数や年齢別、男女別、地域別にみたHTLV-1キャリアからのATL発症率に関する研究を行った。また、定量PCR法を用いて、無症候性キャリアにおける欠損・変異を有するプロウイルスの動態などについて検討を行った。その一方で、定量PCR法を用いたHTLV-1プロウイルス量の測定は、各研究室独自の測定系で実施されており、相互の測定値の比較ができず、全国的なサーベイランスを行うには適切でないため、定量PCR法の標準化に向けた検討を開始した。さらに、HTLV-1キャリア指導の手引作成も目的とした。
研究方法
全国の年間ATL発症数を国立がんセンターの主要部位別年齢調整全国罹患率を基に推定した。これまでに本研究で得られた全国のHTLV-1キャリアと新規ATL患者の年齢分布より、キャリアからの年齢別や男女別の年間ATL発症率や平均寿命までの生涯発症率なども求めた。また、無症候性キャリア208名などについてプロウイルス量(PVL)を定量PCR法により測定した。定量PCR法に用いる標準品を選定するために、その候補品のPVLをまず3施設において測定することとした。さらに、本研究の研究分担者及び研究協力者の協力を得て、主にHTLV-1感染に馴染みの薄い医療者を対象としたキャリア指導の手引を作成した。
結果と考察
国立がんセンターの主要部位別年齢調整全国罹患率を基にATLの年間発症数を推定したところ、ATLは1年間に1,183 例が発症していると推定され、これまでの本研究の成果(1,146例)を裏付ける結果となった。また、定量PCR法を用いて、無症候性キャリアなどにおける欠損・変異を有するHTLV-1プロウイルスの動態に関するデータが得られた。定量PCR法の標準品候補については現在検討中である。さらに、HTLV-1キャリア指導の手引及びその簡易版を作成し、全国医療機関の関係部署に配布した。
結論
今回推定されたATLの年間発症数からも、ATLが高齢化したキャリアから持続的に発症していることが強く示唆され、今後ますます高齢者を対象にした治療法の開発や発症予防法の開発などが必要とされると考えられる。また本研究において、我が国におけるHTLV-1キャリアからの関連疾患発症の実態を把握することができた。今後は、速やかに感染予防のための教育・啓蒙活動や予防法・治療法の開発研究の推進など医療面及び行政面からの総合的な取り組みを実践し、継続していくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201028004B
報告書区分
総合
研究課題名
本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策
課題番号
H20-新興・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 恭暉(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 出雲 周二(鹿児島大学 医歯学総合研究科 難治ウイルス研)
  • 望月 學(東京医科歯科大学 視覚応答調節学)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 徳留 信寛(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 齋藤 滋(富山大学 医学部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に関する疫学調査は、1980年代に患者数等の全国調査が行われたが、2000年代に入ってからこの疾患やキャリア数の把握のための全国的な実態調査は行われていなかった。HTLV-1はATLの他にHTLV-1関連脊髄症(HAM)等を引き起こし、本邦では今でもその感染率が高いため、系統的な対策が必要である。そこで本邦のHTLV-1キャリア及びATL、HAMを含むHTLV-1関連疾患の現在の実態を把握し、本感染症が国民健康に与えている影響を評価し、キャリア及び患者に対する総合対策を提言、実行することを目的とした。
研究方法
HTLV-1キャリア数の全国調査を、抗体検査によりスクリーニングを行っている日本赤十字社の協力を得て、初回献血者のみを対象に行った。ATL及びHAMの患者数の全国調査は、アンケートを作成し代表的な病院へ協力を依頼した。その際、内部コントロールの他疾患も調査した。また、HTLV-1プロウイルス量の測定に用いられている定量PCR法が、現在各施設で独自に行われているため、全国的なサーベイランスを行う手段としての標準化に向けた検討を開始した。さらに、主にHTLV-1感染に馴染みの薄い医療者向けのHTLV-1キャリア指導の手引を作成した。
結果と考察
全国のHTLV-1キャリア数は約108万人と推定され、20年以上前に比べ減少しているものの、引き続き多くの感染者が存在することが分かった。また地域別割合の解析で、感染者が九州から全国へ拡散している可能性が見いだされ、全国的な対策が必要であることが示唆された。ATLの実態調査では本邦における年間発症数は1,146例と推測された。今後も持続的にATLは発症し、患者はますます高齢化すると考えられた。HAMの実態調査では、新規に発症し診断される患者が増加傾向にあり、九州以外の大都市でも多く見られることが分かった。さらに、定量PCR法の標準化の検討を行い、HTLV-1キャリア指導の手引を作成し全国医療機関の関係部署に配布した。
結論
本研究により、本邦におけるHTLV-1キャリアからの関連疾患発症の実態を把握することができた。この成果を今後の感染予防のための教育・啓蒙活動や予防法・治療法の開発研究の推進等の総合的な対策策定に役立てることが重要であり、医療面及び行政面からの総合的な取り組みを今後速やかに実践していくことが必要である。また今後、HTLV-1感染の診断等に有用なプロウイルス量の測定法(定量PCR法)についてその標準化を推し進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に関する疫学調査は、1980年代に患者数等の全国調査が行われたが、最近は行われていなかった。HTLV-1は難治性疾患であるATLの他に、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1関連ブドウ膜炎等を引き起こす。本邦のHTLV-1キャリア及びHTLV-1関連疾患の現在の実態を把握し、本感染症が国民健康に与えている影響を評価し、HTLV-1感染症に対する総合対策を提言、実行することを目的とした。
臨床的観点からの成果
全国のキャリア数は約108万人と推定され、20年以上前の約120万人に比べ、減少は見られるものの引き続き多くの感染者が存在していた。地域別では、感染者が九州から全国へ拡散しており、全国的な対策が必要であることが示唆された。ATLの年間発症数は1,146例と推測され、以前の700例と比較して、今後も持続的にATLは発症し、患者はますます高齢化すると考えられた。HAMの新規患者も増加傾向にあり、九州以外でも多く見られた。HTLV-1感染診断に有用であるプロウイルス測定法の標準化を検討した。
ガイドライン等の開発
本研究成果を基に、平成23年2月に医療従事者、行政担当者、血液事業担当者向けの「HTLV-1キャリア指導の手引」、感染者向けには「HTLV-1 キャリアのみなさんへ」の二通りのパンフレットをそれぞれ、5,000部、10万部作成し、全国に配布した。
その他行政的観点からの成果
本研究成果は平成22年9月に内閣総理大臣の指示のもとに発足した「HTLV-1特命チーム」の資料に供され、平成22年12月にまとめられたHTLV-1総合対策の提言に寄与した。
その他のインパクト
本研究成果は平成20年度からしばしば新聞(毎日新聞、朝日新聞、西日本新聞、日本経済新聞、多数の地方新聞など)、テレビ等で取り上げられた。平成23年2月19日には国立感染症研究所にて「HTLV-1撲滅に向けて」HTLV-1関連合同班会議を開催し、多くの研究班との密な情報交換及びメディアや一般市民を交えた活発な議論が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
55件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「HTLV-1特命チーム」への参考資料
その他成果(普及・啓発活動)
2件
HTLV-1キャリア指導の手引作成。「HTLV-1撲滅に向けて」HTLV-1関連合同班会議を開催。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2015-06-17

収支報告書

文献番号
201028004Z