インフルエンザ及び近年流行が問題となっている呼吸器感染症の分析疫学研究

文献情報

文献番号
201028002A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ及び近年流行が問題となっている呼吸器感染症の分析疫学研究
課題番号
H20-新興・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(公立大学法人 大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 満(札幌医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 星 淑玲(筑波大学 大学院人間総合科学科)
  • 伊藤 澄信(独立行政法人 国立病院機構本部総合研究センター)
  • 小島原 典子(東京女子医科大学 衛生学・公衆衛生学第2)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 鈴木 幹三(名古屋市緑保健所)
  • 中野貴司(川崎医科大学 小児科)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所 感染症対策担当課)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所 ウイルス課)
  • 中田 恵子(大阪府立公衆衛生研究所 ウイルス課)
  • 大藤 さとこ(大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 小笹 晃太郎(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 池松 秀之(原土井病院 臨床研究部)
  • 入江 伸(医療法人相生会 九州臨床薬理クリニック)
  • 岡田 賢司(国立病院機構福岡病院 小児科)
  • 徳永 章二(九州大学病院 医療情報部)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学 看護学部)
  • 伊藤 雄平(久留米大学医学部付属医療センター 小児科)
  • 原 めぐみ(佐賀大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
76,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)新型インフルエンザワクチンの有効性、免疫原性
2)季節性インフルエンザワクチンの有効性と免疫原性
3)百日咳ワクチンの有効性
4)高齢者肺炎に対する肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの有効性
5)インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの費用対効果
6)微生物学による裏付け
7)予防指針等の作成
研究方法
1)新型インフルエンザ
 維持透析患者、リウマチ性患者、0-3歳児などで調査
2)インフルエンザ
  神経筋疾患患者などのハイリスク集団で調査
3)百日咳
  多施設共同症例対照研究。大学集団発生事例調査
4)高齢者肺炎
  多施設共同症例対照研究。新型インフルエンザワクチン含む
5)費用対効果
  肺炎球菌ワクチンの調査
6)微生物検索・病原診断
 呼吸器ウイルスの鑑別検出法検討
7)指針等作成
 インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなどについて作成
結果と考察
1)維持透析患者:1回接種後のsero-protection rate(SP)は53%、2回接種後SPは56%。2回接種
による上昇なし。リウマチ性患者:2回接種後でも、SPは62歳以上で45%、インフリキシマブ投
与で48%。抗体応答が悪い。
2)神経筋疾患患者におけるワクチン接種のOR:インフルエンザ様疾患に対して0. 41、医療機関診
断インフルエンザに対して0.34。
3)DPT接種のORは0.26(P=0.32)、4回接種のORは0.27(P=0.33)。S大学集団発生事例におけるワクチ
ン4回接種のORは、コホート研究で0.45-0.68、症例対照研究で0.09-0.19。
4)季節性・新型両ワクチン接種のORは0.17。肺炎球菌ワクチンの有効性は認めるに到っていない。
5)63自治体で肺炎球菌ワクチン接種の実態調査。1救命年あたりの増分費用は、対象年齢を65歳以
上、自己負担額を0円としたプログラムが最も効率的。
6)ライノウイルス、RSウイルス等、呼吸器ウイルスを鑑別検出するためのRT-PCR法を試行。
7)呼吸器感染症の予防因子とリスク因子、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなどについ
て作成
結論
ハイリスク集団において、インフルエンザワクチンは2回接種が必要な集団と必要でない集団がある。
百日咳ワクチンは有効性を支持する結果。
肺炎球菌ワクチンの発病予防効果は検出しにくい。
インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンの接種政策は費用節約的である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201028002B
報告書区分
総合
研究課題名
インフルエンザ及び近年流行が問題となっている呼吸器感染症の分析疫学研究
課題番号
H20-新興・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(公立大学法人 大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 星 淑玲(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 伊藤 澄信(独立行政法人国立病院機構総合研究センター)
  • 小島原 典子(東京女子医科大学 衛生学・公衆衛生学第2)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 鈴木 幹三(名古屋市緑保健所)
  • 中野 貴司(川崎医科大学 小児科学)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所 感染症対策担当課)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所 ウイルス課)
  • 中田 恵子(大阪府立公衆衛生研究所 ウイルス課)
  • 大藤 さとこ(大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 小笹 晃太郎(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 池松 秀之(原土井病院 臨床研究部)
  • 入江 伸(医療法人相生会 九州臨床薬理クリニック)
  • 岡田 賢司(国立病院機構 福岡病院小児科)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学 看護学部)
  • 伊藤 雄平(久留米大学 医学部医療センター 小児科)
  • 原 めぐみ(佐賀大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)新型インフルエンザワクチンの免疫原性と有効性。
2)季節性インフルエンザワクチンの免疫原性と有効性。
3)百日咳ワクチンの有効性。
4)高齢者肺炎に対する肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの有効性。
5)予防接種の費用対効果
6)微生物学による裏付け
7)予防指針等の作成
研究方法
1)新型インフルエンザ
妊婦、中高生、透析患者など14集団で調査
2)インフルエンザ
透析患者、神経筋疾患などハイリスク集団で調査
3)百日咳
多施設共同症例対照研究。集団発生事例調査
4)高齢者肺炎
多施設共同症例対照研究。
5)費用対効果
自治体実態調査、モデル構築・解析
6)微生物検索・病原診断
呼吸器ウイルスの鑑別検出法検討
7)指針等作成
インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなどについて作成
結果と考察
1)妊婦:1回接種後のsero-conversion rate(SC)は91%、sero-protection rate(SP)は89%。中高
生:1回接種後で78%と91%。何れも2回接種による上昇なし。
2)透析患者における接種のOR:迅速診断陽性例に対して0.42。神経筋疾患患者における接種のOR:
医療機関診断インフルエンザに対して0.34。
3)多施設共同・症例対照研究でDPT接種のORは0.26(P=0.32)。K大学集団発生でワクチン有効率64
-81%。
4)季節性・新型両ワクチン接種のORは0.17。肺炎球菌ワクチンの有効性は認めるに到っていない。
5)肺炎球菌ワクチン接種による1救命年あたりの増分費用は、対象年齢を65歳以上、自己負担額を
0円としたプログラムが最も効率的。
6)呼吸器ウイルスを鑑別検出するためのRT-PCR法を試行。
7)接種政策の評価指針、呼吸器感染症の予防因子とリスク因子、などを作成。米国ACIP勧告を毎年
翻訳し(財)日本公衆衛生協会より出版。
結論
1)妊婦・中高生の接種回数は1回でよい。
2)生物学的製剤による免疫抑制療法中の患者では抗体応答が低い
3)百日咳ワクチンは有効性を支持する結果。
4)季節性・新型インフルエンザワクチンによる肺炎リスクの低下が示唆された。肺炎球菌ワクチン
の発病予防効果は検出しにくい。
5)インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンの接種政策は対象者などを限定したときに費用
節約的。
6)新型インフルエンザの確定診断におけるリアルタイムRT-PCRは迅速性に優れ、多数の症例を判
するのに有効


公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)新型インフルエンザワクチン調査(14集団、1,500人)。中高生:1回接種後のsero- conversion rate(SC)は78%、sero-protection rate(SP)は91%。妊婦:1回接種後のSCは91%、 SPは89%。慢性肝炎・肝硬変患者:1回接種後のSCは72%、SPは71%。施設入所高齢者:1回接 種後のSCは62%、SPは75%。筋ジス患者:1回接種後のSCは68%、SPは73%。
2)中高生における新型ワクチンの接種回数決定の根拠を提示した。
臨床的観点からの成果
1)新型ワクチン調査。2回接種後のSPは、血液悪性腫瘍患者で48%、生物学的製剤投与中のリウマチ患者で48%。これらの患者は2回接種必要。慢性肝炎・肝硬変患者では、高齢、罹病期間が長い、SNMC治療者、で抗体応答悪い。
2)季節性ワクチン調査。接種のORは、神経筋疾患患者で医療機関診断インフルエンザに対して0.34。維持透析患者で迅速診断陽性例に対して0.42。
3)種々のハイリスク集団におけるインフルエンザワクチンの妥当な接種回数、有効性の程度を提示することにより接種推進の根拠を示した。
ガイドライン等の開発
1) 接種政策評価指針、呼吸器感染症の予防因子とリスク因子、について作成。
2) 米国予防接種諮問委員会(ACIP)のインフルエンザ勧告3年分(2008-10)を翻訳し、各々 (財)日本公衆衛生協会から出版。
3) 肺炎球菌ワクチンについて、ACIP勧告とCochrane Libraryの総説を翻訳・解説。
4) ACIP勧告の訳本「インフルエンザの予防と対策」および「肺炎球菌による疾患の予防」は、厚生科学審議会予防接種部会にて配布資料として活用された(平成22年7月7日)
その他行政的観点からの成果
1) DPTの有効性、接種漏れの影響、更なるbooster doseの必要性の有無について根拠を提示でき る。
2) 高齢者に対するインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの有効性、同時接種の必要性の判断根拠を提供できる。
3) 本研究班で実施した多施設共同・症例対照研究は、今後予防接種法に位置づけられる可能性があるワクチンについて、有効性を継続的に評価する手法として活用できる。
その他のインパクト
1) 調査対象とした63自治体へ、肺炎球菌ワクチン接種による1救命年あたりの増分費用は、対象年齢を65歳以上、自己負担額を0円としたプログラムが最も効率的であることを公表。
2) 血液腫瘍患者、維持透析患者、免疫抑制療法中のリウマチ性疾患患者、などに対するインフルエンザワクチン接種法について、班員所在地の医師会にて啓発。
3) 肺炎球菌ワクチンについて、ACIP勧告とCochrane Libraryの総説を翻訳し、ホームページ上およびパンフレットとして公表・啓発。

発表件数

原著論文(和文)
32件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
66件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
86件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hoshi SL, Kondo M, Okubo I.
Cost-effective policy option in launching a community-based pneumococcal vaccination program among the elderly in Japan
Aging Reserch , 4 (e8) , 53-60  (2012)
原著論文2
Ohfuji S, Fukushima W, Sasaki Y, et al
Influenza A(H1N1)pdm09 vaccine effectiveness and other characteristics associated with hospitalization in chronic liver disease patients.
Liver Int , 34 (5) , 700-706  (2014)
原著論文3
Fukushima W, Ohfuji S, Deguchi M, et al
Effectiveness of an influenza A (H1N1) 2009 monovalent vaccine among Japanese pregnant women: a prospective observational study assessing antibody efficacy.
Vaccine , 30 (52) , 7630-7636  (2012)
原著論文4
Ohfuji S, Fukushima W, Tamori A, et al
Immunogenicity of influenza A(H1N1)pdm09 vaccine and the associated factors on lowered immune response in patients with hepatitis C.
Influenza Other Respi Viruses , 7 (3) , 456-465  (2013)
原著論文5
Kobayashi M, Ohfuji S, Fukushima W, et al
Immunogenicity and reactogenicity of a monovalent inactivated 2009 influenza A vaccine in adolescents: with special reference to pre-existing abtibody
The Journal of Pediatrics , 164 (4) , 632-637  (2012)
原著論文6
Hoshi SL, Kondo M, Okubo I
Economic evaluation of vaccination programme of 7-valent pneumococcal conjugate vaccine to the birth cohort in Japan
Vaccine , 30 (22) , 3320-3328  (2012)
原著論文7
Hara M, Hanaoka T, Mizushima T, et al
Diminished immunogenicity to pandemic H1N1 2009 influenza vaccine in subjects with severe motor and intellectual disability
Vaccine , 29 , 8323-8329  (2011)
原著論文8
Ohfuji S,Fukushima W, Deguchi M et al
Immunogenicity of a monovalent 2009 influenza A (H1N1) vaccine among pregnant women: lowered antibody response by prior seasonal vaccination.
J Infect Dis , 203 (9) , 1301-1308  (2011)
原著論文9
Yamaguchi S,Ohfuji S,Hirota Y
Influenza vaccine effectiveness in primary school children in Japan:a prospective cohort study using rapid diagnostic test result
J Infect Chemother , 16 (6) , 407-413  (2010)
原著論文10
Hara M,Tanaka K,Kase T, et al
Evaluation of seasonal influenza vaccination effectiveness based on antibody efficacy among the institutionalized elderly in Japan
Vaccine , 28 (35) , 5564-5568  (2010)
原著論文11
Hara M, Fukuoka M, Tashiro K, et al
Pertussis outbreak in university students and evaluation of acellular pertussis vaccine effectiveness in Japan.
BMC Infect Dis , 15 (1) , 45-  (2015)
原著論文12
Ochiai H, Fujieda M, Ohfuji S, et al
Inactivated influenza vaccine effectiveness against influenza-like illness among young children in Japan-With special reference to minimizing outcome misclassification.
Vaccine , 27 (50) , 7031-7035  (2009)
原著論文13
Kondo M, Hoshi SL, Okubo I.
Does subsidy work? Price elasticity of demand for influenza vaccination among the elderly in Japan.
Health Policy , 91 (3) , 269-276  (2009)
原著論文14
Okada K.
Effectiveness of an acellular pertussis vaccine in Japanese children during a non-epidemic period: a matched case-control study.
Epidemiol Infect , 137 , 124-130  (2009)
原著論文15
Hara M, Sakamoto T, Tanaka K
Influenza vaccine effectiveness among elderly persons living in the community during the 2003-2004 season.
Vaccine , 26 (50) , 6477-6480  (2008)
原著論文16
Fukushima W,Hayashi Y,Mizuno Y et al
Selection bias in evaluating of influenza vaccine effectiveness: A lesson from an observational study of elderly nursing home residents
Vaccine , 26 (50) , 6466-6469  (2008)
原著論文17
Mori M, Oura A, Ohnishi H et al
Confounding in evaluating the effectiveness of influenza vaccine
Vaccine , 26 (50) , 6459-6461  (2008)
原著論文18
Hirota Y, Fukushima W, Fujieda M, et al.
Essential tools for accessing influenza vaccine efficacy in improperly conducted studies: Japanese perspective.
Vaccine , 26 (50) , 6455-6458  (2008)
原著論文19
Fujieda M, Maeda A, Kondo K, et al.
Influenza vaccine effectiveness and confounding factors among young children.
Vaccine , 26 (50) , 6481-6485  (2008)
原著論文20
Ozasa K.
The effect of misclassification on evaluating the effectiveness of influenza vaccines.
Vaccine , 26 (50) , 6462-6465  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2016-06-27

収支報告書

文献番号
201028002Z