中枢神経症状を伴う筋疾患α-ジストログリカノパチーの分子病態と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201027122A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢神経症状を伴う筋疾患α-ジストログリカノパチーの分子病態と治療法開発に関する研究
課題番号
H22-神経・筋・若手-021
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
萬谷 博(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α-ジストログリカノパチーは先天性筋ジストロフィー症に中枢神経系障害を伴う疾患群である。本疾患群はジストロフィン糖蛋白質複合体構成分子であるα-ジストログリカンのO-マンノース型糖鎖不全を起因とする。本研究では、α-ジストログリカノパチーの原因遺伝子産物およびO-マンノース型糖鎖の機能を解明し、病態解明、診断・治療法への応用を目指している。ゼブラフィッシュは、遺伝子操作が容易で、表現型を解析しやすく、疾患モデルとして利用されている。そこで、筋ジストロフィー症モデルとしての可能性を検討した。また、哺乳類のO-マンノース型糖鎖はα-ジストログリカンなどの限られた蛋白質でしか検出されないことから、特定のアミノ酸配列などに特異的な修飾の可能性がある。そこで、POMGnT1の基質特異性からO-マンノシル化の標的蛋白質の探索を検討した。
研究方法
ゼブラフィッシュzPOMT1, 2遺伝子をクローニングし、組換え型蛋白質をして発現し酵素活性を確認した。両遺伝子に対するアンチセンスモルフォリノオリゴによりノックダウンし発生への影響を調べた。α-ジストログリカンのアミノ酸配列を基にMan-O-Thrを含むペプチドを有機科学的に合成し、POMGnT1に対する基質特異性を反応速度論的に解析した。
結果と考察
酵素活性の発現にzPOMT1-zPOMT2複合体の形成が必要であったことから、哺乳類のPOMTと同様のメカニズムがあることが分かった。ノックダウン解析からα-ジストログリカンの糖鎖異常と筋・眼の発生異常が観察されたことから、ゼブラフィッシュにおいても神経や筋の発生にO-マンノース型糖鎖が重要であることが示された。POMGnT1は Man単糖は基質として認識せず、基質に適したアミノ酸残基数は8個以上であった。合成ペプチドのアミノ酸組成を変えることにより基質とPOMGnT1の親和性が変化したことから、POMGnT1がアミノ酸配列をある程度認識する可能性が示された。
結論
ゼブラフィッシュのO-マンノース転移酵素zPOMT1、zPOMT2を同定し、複合体形成による活性発現機構が種を越えて保存されていることを明らかにした。α-ジストログリカノパチーの病態モデルとしてのゼブラフィッシュの有用性を明らかにした。POMGnT1がアミノ酸配列を認識している可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027122Z