自閉性障害における遺伝子変異がもたらすシナプス機能障害と小胞体ストレス誘導についての研究

文献情報

文献番号
201027121A
報告書区分
総括
研究課題名
自閉性障害における遺伝子変異がもたらすシナプス機能障害と小胞体ストレス誘導についての研究
課題番号
H22-精神・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神保 恵理子(自治医科大学・医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳発達障害である自閉性障害は、社会的な大きな問題であり、治療法の確立が緊急な課題である。しかしながら、分子病態が未だ十分に把握されていない。神経変性疾患において、少数ではあるが遺伝性家族性パーキンソン病、アルツハイマー病など分子病態の解明が疾患の病態解明に大いに役立ったように、自閉性障害患者群の一部ではあっても単一遺伝子の変異で説明できる遺伝子変異データの集積が自閉性障害の統一的病態解明の飛躍的理解につながるものと考えられる。本研究は自閉性障害に見出された遺伝子変異産物(神経接着蛋白CADM1)が誘導する小胞体ストレスシグナルによりUPRが引き起こすシナプス機能タンパクの膜輸送障害の関係を明らかにし、自閉性障害の統一的な病態解明を目的とする。
研究方法
①CADM1変異タンパクの機能障害についての解析:言語障害を伴う患者とその家族に発見されたCadm1のイムノグロブリン領域のN端から3番目に存在するH246N、Y251Sの変異を、培養細胞系および変異トランスジェニックマウスおよびラット初代神経細胞系に導入し、神経マーカーあるいは小胞体ストレスマーカーなどを用いた免疫染色を行い局在の違いを観察した。また、Cadm1変異モデルマウスの作製を試みた。
②Cadm1欠損マウスにおける行動解析:Cadm1欠損マウスを用いて、不安様行動、攻撃行動、社会性行動などの行動解析を行った。
結果と考察
CADM1の2つの変異を細胞に過剰発現させたところ、小胞体ストレスが誘導され、それと共にCHOPの発現増大が観察された。またCadm1変異を発現させた神経細胞は、デンドライトの伸長が抑制されており、Cadm1正常タンパクは、神経細胞のシナプス小胞などに局在するシナプトフィジンなどのシナプス機能タンパクと共局在する割合に対しCadm1変異タンパクが共局在する割合は顕著に低かった。このことからシナプス障害が起こっていることが示唆された。また、作製したCadm1変異モデルノックインマウスは、来年度解析可能な状態となった。Cadm1欠損マウスは、行動解析の結果、不安、攻撃性などの行動異常、社会的コミュニケーションの異常を示したものの、このマウスは自閉性障害の特徴的な症状(限定的な行動など)は観察されなかった。
結論
機能障害Loss-of-functionだけでなく、変異によるGain-of-functionが病態に関わっている可能性がきわめて高いと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027121Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-