MRIの補助に基づくFDG-PETによる局在関連性てんかん(部分てんかん)の術前焦点検索精度向上

文献情報

文献番号
201027119A
報告書区分
総括
研究課題名
MRIの補助に基づくFDG-PETによる局在関連性てんかん(部分てんかん)の術前焦点検索精度向上
課題番号
H21-こころ・若手-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高屋 成利(京都大学 放射性同位元素総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 理器(京都大学医学研究科臨床神経学)
  • 石津 浩一(京都大学医学研究科人間健康科学系専攻近未来システム・技術創造部門)
  • 三國 信啓(京都大学医学研究科脳神経外科学)
  • 福山 秀直(京都大学医学研究科付属脳機能総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の日本では、てんかん外科治療を受ける患者数は先進諸外国に比べて著明に少ない。近年の神経画像をはじめとする診断技術の飛躍的進歩と手術手技の改良により、てんかんに対する手術治療の成果が国際的に確固たるものとなるにつれて、日本でも徐々にてんかん外科の重要性が認識されるようになってきた。このような時期に、低侵襲で、既に難治性てんかん焦点検索に対して日本国内で保険適応になっているFDG-PETの検査精度を向上させることは、難治性てんかん患者が手術を受ける機会を増加させることにつながり、患者個々人の健康回復に資するばかりではなく、将来の日本の就労人口の確保にとっても有用である。この度の研究では、FDG-PETによる異常検出部位を客観的かつ詳細に描出するとともに、MRIを補助的に用いることで、感度を保ったまま、特異度を高めることを今回の研究の目的とする。
研究方法
神経画像法によるてんかん焦点検索精度向上のためには、てんかん焦点そのものの研究のみならず、てんかん性放電伝搬に関する病態生理の解明が不可欠である。このような観点から、MRIの補助下でFDG-PETによるてんかん原性領域の検出感度および特異度を高めることを目的に、異常部位検出の客観的判断をするとともに、てんかん放電の伝搬に関する病態生理解明とそれによるてんかん焦点検出感度および特異を上昇させるための研究を、今年度は中心に行った。
結果と考察
てんかん性活動が伝搬すると想定される神経線維連絡特異的に白質整合性低下が生じていることがあきらかになった。MRI拡散強調画像を用いたFDG-PETによるてんかん焦点検出精度向上に役立つ可能性が高いと期待される。また、部分容積補正については、少なくともてんかんの種類によってはFDG-PETのてんかん焦点検出精度を向上させうることが示された。
結論
てんかん性活動が伝搬すると想定される神経線維連絡特異的に白質整合性低下が生じていることがあきらかになった。MRI拡散強調画像を用いたFDG-PETによるてんかん焦点検出精度向上に役立つ可能性が高いと期待される。部分容積補正については、少なくともてんかんの種類によってはFDG-PETのてんかん焦点検出精度を向上させうることが示された。今後、この方法がより効果を発揮する症例選択の検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201027119B
報告書区分
総合
研究課題名
MRIの補助に基づくFDG-PETによる局在関連性てんかん(部分てんかん)の術前焦点検索精度向上
課題番号
H21-こころ・若手-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高屋 成利(京都大学 放射性同位元素総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 理器(京都大学医学研究科臨床神経学)
  • 石津 浩一(京都大学医学研究科人間健康科学系専攻近未来システム・技術創造部門)
  • 三國 信啓(京都大学医学研究科脳神経外科学)
  • 福山 秀直(京都大学医学研究科付属脳機能総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の日本では、てんかん外科治療を受ける患者数は先進諸外国に比べて著明に少ない。毎年少なくとも2000人がてんかん外科治療を必要とすると推定されているにもかかわらず、実際に手術を受けることができているのは年間500人前後である。これは、英国や韓国の半分程度である。近年の神経画像をはじめとする診断技術の飛躍的進歩と手術手技の改良により、てんかんに対する手術治療の成果が国際的に確固たるものとなるにつれて、日本でも徐々にてんかん外科の重要性が認識されるようになってきた。このような時期に、低侵襲で、既に難治性てんかん焦点検索に対して日本国内で保険適応になっているFDG-PETの検査精度を向上させることは、難治性てんかん患者が手術を受ける機会を増加させることにつながり、患者個々人の健康回復に資するばかりではなく、将来の日本の就労人口の確保にとっても有用である。今回の研究では、補助的にMRIを利用することでFDG-PETによるてんかん原性領域の検出精度を高めることを目的とした。
研究方法
以下の4つの研究を行った。1. てんかん活動の伝搬に伴う投射神経線維の状態変化の評価に関する研究。2. 難治性てんかんにおける投射神経線維の整合性の術後変化に関する研究。3. 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの形態学的および機能的特徴を明らかにする研究。4. 部分容積効果補正を行うことで、FDG-PETによるてんかん焦点検出精度向上を試みる研究。
結果と考察
1. てんかん活動が伝搬する投射神経線維においては白質の整合性が特異的に低下していることが示された。2. これらの白質整合性は、てんかん焦点の選択的切除によって改善することが示された。3. 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんでは、海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんとは異なる形態学的および機能的特徴を備えていることが示された。4. 部分容積効果補正を行うことによってFDG-PETによるてんかん焦点検出精度が向上する症例が存在することが示された。
結論
てんかん性活動が伝搬すると想定される神経線維連絡特異的に白質整合性低下が生じていることが明らかになった。MRI拡散強調画像を用いたFDG-PETによるてんかん焦点検出精度向上に役立つ可能性が高いと期待される。部分容積補正については、FDG-PETのてんかん焦点検出精度を向上させうることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027119C

成果

専門的・学術的観点からの成果
局在関連てんかんのてんかん性放電の伝搬経路における白質整合性の変化を明らかにして、更にはこれらの白質整合性がてんかん手術による焦点の選択的切除によって改善する可能性があることを示したことは、臨床神経科学的にみても重要な成果であると考えられる。
臨床的観点からの成果
現在の日本では、てんかん外科治療を受ける患者数は先進諸外国に比べて著明に少なく、英国や韓国の半分程度である。近年の神経画像をはじめとする診断技術の飛躍的進歩と手術手技の改良により、てんかんに対する手術治療の成果が国際的に確固たるものとなるにつれて、日本でも徐々にてんかん外科の重要性が認識されるようになっており、低侵襲の神経画像法によるてんかん焦点検出精度をあげることは、難治性てんかんを持つ患者が手術を受ける機会を増加させる可能性がある。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
低侵襲で、既に難治性てんかん焦点検索に対して日本国内で保険適応になっているFDG-PETの検査精度を向上させることに役立つことは、既存の医療資源の有効活用になる。また難治性てんかん患者が手術を受ける機会を増加させることにつながり、患者個々人の健康回復に資するばかりではなく、将来の日本の就労人口の確保にとっても有用である。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takaya S, Ikeda A, Mitsueda-Ono T,et al.
Temporal lobe epilepsy with amygdala enlargement: a morphologic and functional study
J Neuroimaging , 24 (1) , 54-62  (2014)
10.1111/j.1552-6569.2011.00694.x.
原著論文2
Suwa T, Namiki C, Takaya S, et al.
Corticolimbic balance shift of regional glucose metabolism in depressed patients treated with ECT
J Affect Disord , 136 (3) , 1039-1046  (2012)
10.1016/j.jad.2011.11.040.
原著論文3
Morimoto E, Okada T, Kanagaki M, et al.
Evaluation of focus laterality in tempora lobe epilepsy: A quantitative study comparing double inversion-recovery MR imaging at 3T with FDG-PET
Epilepsia , 54 (3) , 2174-2183  (2013)
10.1111/epi.12396

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027119Z