プロテオーム解析を用いた高齢認知症患者における大脳白質病変と抗血管内皮細胞抗体の関連性に関する研究

文献情報

文献番号
201027118A
報告書区分
総括
研究課題名
プロテオーム解析を用いた高齢認知症患者における大脳白質病変と抗血管内皮細胞抗体の関連性に関する研究
課題番号
H21-こころ・若手-022
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木村 暁夫(岐阜大学医学部附属病院 神経内科・老年学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者における認知機能障害や運動機能障害の原因となり得る大脳白質病変に密接に関連する抗血管内皮細胞抗体を同定し、その特異性と病的意義を検討することにより、認知症の診断に有用な新たなバイオマーカーの確立ならびに予防・治療法の開発に役立てる。
研究方法
43名の60歳以上の高齢者と18名の40歳未満の健常者の血清中に存在する抗血管内皮細胞抗体を、ヒト大脳微小血管内皮培養細胞を抗原とした二次元免疫ブロットにより、網羅的に検出した。次に検出した自己抗体のうち広範な大脳白質病変を合併する高齢者と大脳白質病変を合併しない高齢者に特異的な自己抗体を抽出しLC-MS/MSシステムを用いてその認識抗原蛋白を同定した。その後、同定した自己抗体につき、ELISAシステムを確立し、104名の60歳以上の高齢者を対象として、その血清中の抗体価と大脳白質病変の関連性につき検討した。
結果と考察
60歳以上の大脳白質病変合併高齢者に特異的な6つの抗血管内皮細胞抗体と60歳以上の大脳白質病変を合併しない高齢者に特異的な2つの自己抗体を同定した。このうち大脳白質病変合併高齢者に特異的な自己抗体の一つである抗Tropomyosin alpha-4 chain (TPM4)抗体は大脳深部白質の癒合性病変の出現と有意な相関性が認められた。また抗TPM4抗体はin vitroにおいてヒト大脳微小血管内皮培養細胞のviabilityを低下させた。抗TPM4抗体の産生機序に関する仮説として、トロポミオシンが有するα-helical coiled coil構造が自己抗体産生を誘導しやすく、A型溶連菌のM蛋白と共通のエピトープを有するなどの報告もあり分子相同性による機序、あるいは炎症や低酸素による大脳微小血管内皮細胞障害に伴う二次的な産生機序が可能性として考えられた。抗TPM4抗体の血管内皮細胞に対する病的意義に関しては、トロポミオシンは通常、細胞質に局在するが、増殖期血管内皮細胞においては細胞膜表面に発現し、angiogenesisに関与することが報告されている。さらに、Tropomyosinはangiogenesisの阻害分子が血管内皮細胞に作用する際のレセプターになるといった報告もある。これらの報告をふまえ抗TPM4抗体は、増殖期の大脳微小血管内皮細胞に対し、そのangiogenesisを抑制することにより大脳白質病変の進展に関与している可能性が考えられた。
結論
広範な大脳白質病変と関連することが予想される抗血管内皮細胞抗体が存在し、その中の抗TPM4抗体は、大脳深部白質の癒合性病変の出現に関連する独立した因子である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027118Z