新世代人工内耳に対応した内耳薬剤徐放技術の開発

文献情報

文献番号
201027114A
報告書区分
総括
研究課題名
新世代人工内耳に対応した内耳薬剤徐放技術の開発
課題番号
H22-感覚・若手-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 弥生(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 幸士(東京大学 医学部附属病院)
  • 狩野 章太郎(東京大学 医学部附属病院)
  • 松本 有(東京大学 医学部附属病院)
  • 樫尾 明憲(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,262,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 人工内耳治療においては、近年になり適応拡大・両耳装用、さらには海外での人工内耳と補聴器の併用(EAS)といった大きなパラダイム・シフトが起きている。これを実現するには、埋込術後の急性期の蝸牛障害を予防する技術の開発が必須である。本研究課題では、研究代表者らが有するバイオマテリアル技術および内耳アポトーシス予防技術を統合し、薬剤徐放機能付き人工内耳などの新たな内耳治療手技を開発することを目的とする。
研究方法
(1)人工内耳電極コート技術の開発:ハイドロゲルコート電極のプロトタイプを作成し、in vitro 徐放試験やIGF-1(インスリン様成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)を使ったモルモット動物実験により薬剤徐放機能・人工内耳挿入時損傷防止効果を測定する。シリコン電極の親水化コート方式としてはプラズマ放電を用いる。
(2)齧歯類モデルでの動物実験: PTD-FNK蛋白(アポトーシス抑制FNK蛋白に、HIV遺伝子産物のTat蛋白の一部であるPTDを付加したもの)を使用し、内耳投与実験を行う。内耳投与の担体としてはゼラチンスポンジを使用。
結果と考察
 ゼラチン・ハイドロゲルを用いた人工内耳電極ダミーを作成したところ、IGF-1およびHGF-ハイドロゲル製剤は、人工内耳挿入時の蝸牛障害を有意に軽減する効果を持つことが明らかになった。ただし電極挿入時にハイドロゲル層が剥離するという問題が生じた。PTD-FNK蛋白の騒音難聴動物に対する蝸牛局所投与では、一定の障害抑制効果を確認した。
結論
 本研究により、薬剤徐放型人工内耳の技術が人工内耳挿入時損傷防止に有効であることが明らかになった。今後はハイドロゲルについてUV照射やO3(オゾン)処理など新たな親水化・コート技法を検討し、徐放性能の最適化および臨床試験への準備を進めて行く。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027114Z