未熟終止コドンの抑制による筋ジストロフィー薬物治療の臨床応用基盤の確立

文献情報

文献番号
201027104A
報告書区分
総括
研究課題名
未熟終止コドンの抑制による筋ジストロフィー薬物治療の臨床応用基盤の確立
課題番号
H22-神経・筋・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 点変異であるナンセンス変異によって未熟終止コドンが生じると,リボソームは正常の翻訳終止点と同様に認識しタンパク質合成を終了する。本邦では19%を占めるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のナンセンス変異症例では全長ジストロフィンタンパク質が合成されず,筋変性を惹起させている。リードスルー療法は薬物により未熟終止コドンを読み越えて翻訳を進行させ,機能的タンパク質分子を作らせることで症状の改善を目指す治療法であり,現在知られている2,400種を超えるナンセンス変異型遺伝性疾患の包括的化学療法として注目されている。リードスルー薬物は未熟終止コドンの種類とその周辺配列に対する特異性や副作用が異なることが知られているため,より多くの候補物質を特定し,個々の患者様に適したものを見出すことが求められている。
研究方法
 リードスルー薬効評価系としてβ-GalactosidaseとLuciferaseの間に未熟終止コドンをもつ二重レポーター遺伝子導入マウス,機能回復評価系として疾患モデルのmdxマウス,安全性評価にICRマウス(SPF)を用い,薬効検証を行った。
結果と考察
 当該年度において,リードスルー誘起薬物候補の探索と薬効評価を行った結果,ネガマイシン類似物質#2は患者様由来細胞でも効果を確認し,#3と#4についてモデル動物で治療効果を確認したことから,誘導体化と溶解性の改善を行っている。更に早期に臨床の場に送り込める既承認アミノグリコシド抗菌薬に強いリードスルー活性があることを特定し,マクロライド系動物薬やネガマイシンの薬効分離に成功した誘導体からも薬物候補を選定した。
結論
 リードスルー薬物による治療は,ナンセンス変異型遺伝性筋疾患において筋細胞膜でのジストロフィンの機能を回復するための有効かつ迅速な選択肢である。本研究で特定したリードスルーを誘起する薬物候補は急性・亜急性毒性が見られず,疾患モデル動物や患者様由来培養細胞系での効果が認められたことから,臨床の場に送り込めるリードスルー薬物となることが期待され,臨床応用基盤の確立に向けた基礎的成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027104Z