完全型ジストロフィンを発現させるDuchenne型筋ジストロフィーの治療法の開発

文献情報

文献番号
201027103A
報告書区分
総括
研究課題名
完全型ジストロフィンを発現させるDuchenne型筋ジストロフィーの治療法の開発
課題番号
H22-神経・筋・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 八木 麻理子(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 粟野 宏之(神戸大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は男児3500人に1人が発症する最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法はなく、DMD患者は20歳台に長い闘病生活のはてに死亡する。
 申請者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてジストロフィン遺伝子のスプライシング時にエクソンのスキッピングを誘導し、ジストロフィンmRNAを修正して骨格筋にジストロフィンを発現させることに世界で初めて成功した。
 本研究は、これまでの成果を発展させスプライシング時にmRNAを修正して、完全型ジストロフィンの発現させるDMD治療の開発を世界に先駆けてはかるものである。
研究方法
1)完全型ジストロフィンの発現が期待される遺伝子の異常を探索し、2)その異常を対象としてスプライシングレポーター評価系を用いて化学物質を探索すると共に、3)その化学物質の有効性について患者由来筋細胞を用いて完全型ジストロフィンの発現を証明するものである。
結果と考察
1)完全型ジストロフィンの発現が期待される遺伝子異常の探索
 完全型ジストロフィンの発現が期待されるジストロフィン遺伝子の異常は、ジストロフィン遺伝子の79ヶのエクソン全てが正常で、イントロンの異常によりクリプチックエクソンが形成されたものである。そこで、DMD患者を対象としてMLPA法とジストロフィンcDNA解析法を用いた遺伝子診断を推進し、治療対象候補となる遺伝子の異常例を探索した。そして、クリプチックエクソンを形成するジストロフィン遺伝子のゲノムを新たに入手した。
2)スプライシングレポーター評価系を用いた化学物質スクリーニング
 イントロン内の点突然変異によりクリプチックエクソン形成異常例では、このクリプチックエクソンのスキッピングが誘導されれば、完全型ジストロフィンの発現が期待される。そこで、これらの遺伝子異常をモデルとして、クリプチックエクソンのスキッピングを誘導する化学物質の探索を行った。一部のクリプチックエクソンではそのスキッピングを誘導する候補化学物質の同定に成功した。
結論
 DMDにおいて完全型ジストロフィンの発現を可能とするクリプチックエクソンを形成する遺伝子異常を見出すと共にエクソンスキッピングを誘導する候補低分子化合物の同定に成功し、DMD治療の確立へ新しい世界を切り開きつつある。

公開日・更新日

公開日
2011-04-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027103Z