治療抵抗性統合失調症に対する治療戦略のためのデータベース構築に関する研究

文献情報

文献番号
201027098A
報告書区分
総括
研究課題名
治療抵抗性統合失調症に対する治療戦略のためのデータベース構築に関する研究
課題番号
H22-精神・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
三國 雅彦(国立大学法人 群馬大学 大学院医学系研究科 神経精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 神庭 重信(九州大学大学院医学研究院精神病態医学精神医学)
  • 寺尾 岳(大分大学医学部精神神経医学)
  • 大森 哲郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部精神医学分野)
  • 伊藤 千裕(東北大学大学院医学系研究科精神神経学)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 兼子 直(弘前大学大学院医学研究科神経精神医学)
  • 米田 博(大阪医科大学総合医学講座神経精神医学教室)
  • 石郷岡 純(東京女子医科大学医学部精神医学)
  • 車地 暁生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学)
  • 岡崎 祐士(東京都立松沢病院精神神経科学)
  • 三辺 義雄(金沢大学医薬保健研究域医学系脳情報病態学)
  • 染矢 俊幸(新潟大学教育研究院医歯学系)
  • 小山 司(北海道大学大学院医学研究科精神医学分野)
  • 清水 徹男(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学講座)
  • 塚田 和美(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院精神科)
  • 黒木 俊秀(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部)
  • 功刀 浩(国立精神・神経医療研究センター精神神経科学)
  • 須田 史朗(自治医科大学精神医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療抵抗性統合失調症に有効なクロザピンの有効性は60%以下と限定的であり重篤な副作用の頻度も高く、効果には民族差もあるため、わが国のデータに基づく治療法の確立が必須である。本研究は、クロザピン投与症例に関する臨床症状、認知機能をデータベース化し、遺伝子検索も含めた解析で治療反応性を反映する臨床特徴、生物学的マーカーを明らかにし、クロザピンの治療ガイドラインを作成する。併せて、脳磁図、fMRI、拡散テンソル画像などを駆使し、クロザピンによる脳形態・脳機能の回復の実態を解明することを目的としている。
研究方法
各研究機関の臨床研究倫理委員会での承認を得て、書面で同意の得られた症例について、クロザピンを使用する前と治療経過中に臨床精神病理学的評価や神経心理学的評価を実施し、これらの臨床データを各施設から基幹研究センターに移してデータベース化する。さらに同意の得られた症例について遺伝子を収集し、基幹研究センターにて解析する。
バイオマーカーの探索研究として、統合失調症者の音声音に対する脳磁気反応を脳磁図(MEG)で、社会認知の障害をfMRIで、脳の軸索回路網の微細構造をMRIの拡散テンソル画像で解析する。
結果と考察
クロザピン症例の臨床データを基幹研究センターにデータベース化する登録を開始できた。国内で最も多く、33症例にクロザピン療法を実施している国立国際医療センター国府台病院では副作用などでの脱落率24%、有効率55%、現在入院中が21%であり、使用実態が明確となりつつある。
 統合失調症には音声音に対する感覚フィルタリング機能障害があり、幻聴と相関することがMEG解析で明らかとなり、社会認知課題でのfMRI解析により上側頭溝、上側頭回領域の賦活が認められず、脳機能障害の実態の一部が明らかになった。
結論
本研究は、治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン投与症例に関する臨床症状、認知機能をデータベース化し、遺伝子検索も含めた治療反応性、生物学的マーカー等を明らかにし、重篤な副作用を有し、効果も限定的であるクロザピンの治療戦略に役立てることを目的としている。欧米では既に20年前から行われている研究であるが、民族差が知られており、わが国が独自に研究を進める意義は大きいといえる。今後、各分担研究者や研究協力者の施設からのクロザピン投与患者の臨床データ登録が進むことがブレークスルーに結びつくと期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027098Z