睡眠障害患者のQOLを改善するための科学的根拠に基づいた診断治療技術の開発

文献情報

文献番号
201027095A
報告書区分
総括
研究課題名
睡眠障害患者のQOLを改善するための科学的根拠に基づいた診断治療技術の開発
課題番号
H22-精神・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 雄一(財団法人神経研究所)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 神経医学講座)
  • 肥田 昌子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 守口 善也(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 本多 真(財団法人東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
睡眠障害の臨床転帰が向上しない主因であるQOL障害の臨床特徴と病態生理を解明し、診断精度の高い睡眠障害用QOL評価尺度を開発するとともに、現行の薬物療法の問題点を検証しQOL改善に資する効果的な不眠治療プログラムを作成する。
研究方法
本研究では以下の課題に着手した。課題1)睡眠障害患者におけるQOL低下の実態に関する多施設共同調査、2)不眠症に対する認知行動療法の有効性に関するランダム化比較試験、3)不眠・睡眠薬使用のQOLに及ぼす影響に関する調査、4)睡眠時間と主観的健康観及び精神神経免疫学的反応との関連性に関する研究、5)中枢性過眠症患者のQOL調査研究、6)睡眠障害患者のQOLを改善するための科学的根拠に基づいた診断治療技術の開発、7)不眠症のQOL評価に関する脳機能画像研究
結果と考察
課題1)および2)のフィールド調整、研究プロトコルの確定等研究実施に向けての作業を行い、一部研究に着手した。3)地域住民5528名を対象とした調査より不眠群における精神的および身体的健康度の低下の実態が明らかになった。4)大学生205名を対象とした調査の結果、睡眠時間9時間以上の長時間睡眠群および5時間以下の短時間睡眠群は心身の健康観が損なわれていることが示された。短時間睡眠群におけるNA神経活動亢進と免疫機能低下が示唆された。5)国際生活機能分類の睡眠障害版を中枢性過眠症患者に適用し、各評価項目に対応する日常生活行動の選定と判定の留意点を明らかにした。6)末梢白血球および体毛細胞内の時計遺伝子PER3が安定した概日リズム指標であり、概日リズム睡眠障害の診断・治療プログラムを策定する際のバイオマーカーとして有用であることが示唆された。7)慢性不眠症でのQOL低下を判定する指標として機能的磁気共鳴画像(fMRI)を応用していくことを目標に、1)情動反応、2)認知機能、3)覚醒機能に関わる課題を開発した。
結論
睡眠障害のQOL障害の病態生理の解明および診断システムの開発により睡眠医療の向上をめざす国内外初の試みであり、従来の治療戦略を補完するものである。本研究の成果は患者の社会機能レベルの改善とともに、睡眠薬の長期使用や常用量依存等の抑止にも資すると期待される。また、QOLをエンドポイントとした評価スキルを確立し臨床試験に導入することで、より実効性の高い治療ガイドラインの作成や新薬開発にも役立つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027095Z