炎症性Th17細胞を標的とする免疫性神経疾患の画期的診断・予防・治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201027087A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性Th17細胞を標的とする免疫性神経疾患の画期的診断・予防・治療法開発に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅幸子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 大木伸司(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 荒浪利昌(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 佐藤準一(明治薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
21,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Th17細胞は炎症性サイトカインIL-17を産生し、組織破壊的炎症を惹起する。本研究の目的は、免疫性神経疾患におけるTh17細胞の役割を明確にし、同細胞を標的とする診断・予防・治療法を開発することにある。
研究方法
1) 患者より血液および髄液を採取し、5カラーflow ctrometer解析によって、CD4陽性メモリーT細胞を四種のケモカイン受容体(CCR2, CCR5, CCR4, CCR6)の発現パターンによって分類し、それぞれが病態特異的な増減を示すかどうかを評価した。
2) NR4A2のTh17機能修飾機序の解析のため、NR4A2のconditional knockoutマウスを確立するとともに、アテロコラーゲン処理したNR4A2 siRNAを用いて、EAEおよびEAU(ブドウ膜炎)の治療実験を行い、NR4A2阻害の治療効果を確認した。
結果と考察
1)MS末梢血を用いたTh17細胞解析: 脳内病変浸潤細胞と類似した性質を有するTh17細胞(インターフェロンγを同時に産生するTh17細胞)が、末梢血ではCCR2+CCR5+のメモリーCD4+T細胞として同定できることを明らかにし、同細胞がマトリックスプロテナーゼ9やオステオポンチンを産生し、血液脳関門モデルにおいて脳表面の基底膜を通過する高い能力を有することを示した(投稿中)。
 2)Th17細胞機能修飾因子NR4A2の研究:前年度までに核内転写因子NR4A2がTh17細胞特異的な転写因子であることを明らかにしていた。本年度は、同分子がTh17細胞のIL-21産生、IL-23受容体、IL-17産生に必須であること、IL-21を補うことによって、NR4A2阻害効果は解除されることを明らかにした。また、NR4A2の持続的誘導は、Th17細胞が中枢神経系に浸潤して、中枢神経内の抗原提示細胞によって活性化される時においてのみ誘導されることを示した。さらにNR4A2を阻害するsiRNAを投与すると、MSの動物モデルEAEの発症が強く抑制されることを示した。現在Th17細胞の機能抑制をねらった治療薬開発の試みが盛んであるが、NR4A2はTh17細胞の標的臓器内部での活性化に伴って誘導される分子であり、NR4A2を特異的に阻害する薬剤は、Th17細胞の感染防御能を損なわずに、自己免疫性炎症のみを選択的に抑制する効果が期待できる。
結論
Th17細胞の性状の詳細な解析により、免疫性神経疾患の新たな治療標的や治療戦略が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027087Z