ニューロパチーの病態におけるプロテオグリカンの役割の解明と新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201027081A
報告書区分
総括
研究課題名
ニューロパチーの病態におけるプロテオグリカンの役割の解明と新規治療法の開発
課題番号
H21-こころ・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 門松健治(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 岡昌吾(京都大学大学院医学研究科)
  • 北川裕之(神戸薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プロテオグリカンはニューロパチーの病態や治療による回復過程に大きく影響すると考えられるが、ニューロパチーとプロテオグリカンについては従来ほとんど検討されてこなかった。本研究はニューロパチーの病態におけるプロテオグリカンのはたす役割を解明し、新たな治療ストラテジーを構築することを目的とする。
研究方法
1)ニューロパチー症例についてコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の合成に関与する糖転移酵素の一つであるコンドロイチンN-アセチルガラクトサミン転移酵素-1(ChGn-1)遺伝子の解析を行った。2)ミエリン蛋白であるP2を用いてラットでEANを作成し、ケラタン硫酸プロテオグリカン(KSPG)に特異的な抗体によるWestern blotや免疫組織染色、ミクログリアマーカーであるIba1、M1マクロファージ/ミクログリアマーカーED1およびM2マクロファージ/ミクログリアマーカーMMRなどによる免疫組織染色を施行した。3)HNK-1 糖鎖の構造的多様性を解析した。4)ChGn-1の、CS鎖の合成制御機構について解析した。
結果と考察
何らかのニューロパチー 148例中23例のChGn-1遺伝子にアミノ酸置換を伴う一塩基変異がみられ、うち14例は著明な酵素活性の低下がみられた。一方132例の疾患対照では10例にアミノ酸置換を伴う一塩基変異がみられ、6例では著明な酵素活性の低下がみられた。これらの変異のうち、2部位の変異はニューロパチーにのみ認められた。EANの解析では、EANに伴ってKS陰性のミクログリアが増加すること、増加するミクログリアの少なくとも一部はM2ミクログリアが含まれることがわかった。HNK-1糖鎖は、MAGではN型糖鎖上に、α-DGおよびPhosphacanではO型糖鎖上に存在することが確認された。CS鎖の本数の制御には、 ChGn-1のほかにコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素-2(C4ST-2)も関与していることがわかった。
結論
プロテオグリカンの糖鎖遺伝子の解析により、ニューロパチーの発症リスクを評価できる可能性がある。またプロテオグリカンの発現量制御が、ニューロパチーの新規治療につながる可能性が考えられた。免疫性ニューロパチーの標的抗原であるHNK-1糖鎖の構造的多様性が示された。さらにプロテオグリカンの糖鎖の制御機構についての新たな情報が得られた。以上の結果から、免疫性およびそれ以外のニューロパチーの病態にプロテオグリカンが深く関与していることが示唆され、今後されに詳細な検討が必要と考えられた

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027081Z